銀杏の落ち葉はいらない

会社の前に、銀杏の木がある。



通りに沿って、等間隔に並べられている。




このごろは寒くなって、黄色く色づいていた葉も散っていくようになった。

毎日歩道には、銀杏の葉が敷き詰められる。




毎日、竹箒でその銀杏の葉を集めている人がいる。

作業着を着て、黙々と仕事をこなしている。

僕はその人と毎日すれ違う。

そのとき、ふと思う。


どうして銀杏の葉なんて集めてるんだろう。




仕事だから。

銀杏の葉がずっと歩道に落ちているのは見苦しいから。


それは、当然の理由かもしれない。


でも、僕は気持ちの隅で思っている。



「本当はこんな仕事は必要ないのだ」





本当は毎日の清掃作業なんて必要ないのだ。


銀杏の葉が落ちるのは、葉の養分を根に行き渡らせるため。

その葉が、土の養分となり、その木だけでなく色んな生き物の養分になっていく。

やがて、銀杏は実をつくり、それがまた地面に落ちるだろう。

それは、新たな銀杏の種になり、他の生き物の食物になり、土の養分になっていく。





そんな小学生でも当たり前にわかっていることは、この町ではなりたたない。

他の銀杏の木なんて必要ない。

その区画には、銀杏の木が一本だけと決まっているから。


地面には石が敷き詰められているから、なかなか風化しない。

風化しても土には届かない。

黒ずんで、汚れたように見えるだけ。


だから、葉ははき集められて、どこかの焼却場に運ばれる。

木の養分は、肥料を撒けばいい。

木には専門家が手入れをする。

それは、枯れると困るから。

無作為に育つと困るから。

困るのは、人間だ。


この町だから、全ては必要なことなんだ。

でも、それは本当に必要?





僕がずっと心に抱えているおもいは、言葉にするとそのようなこと。

周りにはいえないけど、そのようなこと。

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