ミラノの繁華街で愛車が爆発炎上した話

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結論から言おう。乗っていた車が爆発した。ただそれだけの話しなんだが少し付き合ってくれ。

ぶっちゃけイタリアって不良品が多いからなのか、私以外でも燃えてる車を何度か見た。初めてみたのはローマのバチカン。サンピエトロ寺院の前で車が燃えてるから最初テロかと思ったね。観光客もバスから降りて荘厳なサンピエトロ寺院に感動する前に、みーんな燃えてる車の写真撮ってたもん。


多分信じて貰えないと思うけど、本当にあちこちでよく燃えてる。

ほら、パトカーも。





ミラノに住んでた2年間で私はトータル3台の車に乗り、そして3台とも廃車にした。そんな悲しくて切ないお話しをしたいと思う。

イタリアっていったら基本的に道路交通法ってナンデスカソレ美味しいの?っていうぐらいに運転モラルが超低レベルなのはイタリア旅行した事がある方であればご存知の通りだと思う。


ローマに降り立てばそこらじゅうでクラクションが鳴り響き、ウインカーは出さないし、3車線道路には車線を無視して5台が並び、これ何処から脱出するの?っていう有名な二重駐車もイタリアの代名詞だ。




あと、一部の高級車を除き、つまりは98%ぐらいの車は洗車をしないし、アチコチぶつけても板金塗装に出すという文化がない。というよりぶつける前提でバンパーがゴムで出来てたりする。


私が当時よくやってたのは、街中を走ってる時に知り合いの運転する車を発見すると、追いかけて行き信号待ちで停止している知り合いの車の後部に向かって結構な勢いで、しかしムチ打ちにならないギリギリの勢いでドーン追突する。で、相手は当然怒って窓から顔を出して後ろを振り向く。





で、「よっ!」って挨拶する。


こんなお茶目な遊びをしょっちゅうやってたね。


また、当時はヒルトンホテルの駐車場を借りてたんだけど、ホテルの正面玄関の車寄せに沿って特別駐車スペースが縦列4台分あった。そこに停める事は許可されていたものの原則はホテルの中でもVIP専用の特別駐車スペースであり、普通の宿泊客ですら駐車できない。とはいえ早い者勝ち的なルールでもあった。


当時会社で2台のクルマを保有してたから1台は常に停まっていて1台は戻ってきた時に空いていれば停められる、そんな状況だった。


だから私はあるワザを編み出した。4台中2台が会社の車の時に1台乗って出て行くと、帰ってきた時に取られてしまう恐れがある。


それを防ぐ為に、先頭の車で出庫したあとにバックしてサイドブレーキを20%程しかかけていない2台目の後ろに周り前方に押し出す。残ってる1台が2台分の丁度真ん中にくるところまで押してやる。こうする事で4台スペースに3台駐車していてもう1台が入れない。


そして戻ってきた時に2台目の後ろからドーンと追突してスペースを作り駐車する。これは画期的だったが、ヒルトンホテルの支配人が車寄せに出ていないタイミングを見計らってやる必要があった。


自分勝手な非常識野郎の所業にも見えるけど、基本的にこの手法はヒルトンホテルのドアマンには公認で、VIP用に空けなければならない時には協力して2台ともどけたり友好関係は作れていたから成り立っていた。


※因みに先週ミラノに行った時に今どうなってるかなー?と思って元MY駐車スペースの写真を撮ってきた。茶色い石鋲が設置され、1台も駐車できなくなってた!!!




まあ、最初から脱線しまくったけど、とにかく日本とは交通事情も車そのものの扱いや考え方が全く違うのがイタリアだ。


冒頭で3台潰したと書いたけど、ざっくり流すと、3台中の1台であるプジョー205は通勤途中についドリフトを失敗して自爆。もう1台のフィアットTempraはパトカーに追突してしまい廃車。しかも同乗者は”「死ぬまでに会いたい奴リスト」に載ってる奴らに会ってきた話 〜ローマ編〜”にも書いてある「旅行・観光業界カースト制度」でいう絶対に、絶対に怒らせてはならないガイドさん。この後2年間会うたびにネチネチこの時の事を言われ続けたっけ。


よくハンドルを握ると人が変わるっていう言葉があるけど、当時の俺の場合は性格そのまんまが運転に表れていた。自動車は凶器。自動車を運転するというのは様々な責任を伴う…というのは認識していたけど少し運転は荒い方だった。


そして本題の3台目。このアルファロメオ75は一番長く乗って何処に行くにも一緒だった。イタリア国内はもちろん、フランスとかスイスにもよく行ったもんだ。


その日仕事は休みだったが、知人にCDか本を貸す為に彼が仕事をしているミラノ大聖堂近くの広場に居た。そして仕事が終わった知人を乗せ飯でも食おうとその知人宅に向かってた。

知人の家にあと7〜8分走れば着く距離に差し掛かったところだったと記憶しているが、なんだか妙にガソリン臭い。


不思議に思いながらも、あまり気にせず先を急ぐ。すると少し渋滞にはまったところで何回かビービー後ろからクラクションを鳴らす音が聞こえてきた。


明らかに私に向かって鳴らしてるっぽかったので、ちょうど信号で止まりそうになった時に文句言ってやろうとそのまま道のど真ん中にクルマを停めて後ろの車に歩き出す。





そうしたら、実はすげーいい人達で、後ろの若い兄ちゃん2人組が我が愛車の後部を指差しながら ガソリン漏れてるよと教えてくれた。


確かに今来た道を振り返ると結構な距離で液体の跡がついており、どこだかは分からないが今尚ガソリンが漏れ続けている様だった。


思い起こせばまさにここがターニングポイントで、絶対に誤ってはならない判断ミスだった。


本来取るべき行動は、まずエンジンを切り、そして車を降りて押して路肩に寄せる。これが正しい選択だった。

が、しかし、私の取った行動はまずお兄ちゃん達に丁重にお礼を申し上げ、近くのガソリンスタンドに向かったのであった。


ここから一番近くのガソリンスタンドは目的地よりミラノの街の中心に向かったところだ。


直ぐに右折して中心街近くの交差点に差し掛かかり、この角曲がってあと500m程進めばガソリンスタンドっていう交差点で急にボンッという鈍い音がした。


この時点でフロントのボンネットがへの字に折れ曲がり、エンジンルーム両脇の隙間から炎が上がっていた。


もうね、人間現実を受け入れたくないのか頭が混乱し過ぎると思考停止+身体が動かなくなるのね。


この様なパニック状態になるのは私はこれで2回目の経験なんだけど、これぐらいパニックになるのはなかなかない。


話しは少し脱線するけど1回目の時は、これも運転してる時だったんだけど、後ろを走ってた高級車がやたら運転素行が悪くウィンカーを出さずに連続で割り込み車線変更を繰り返すのよ。で、私も割り込みされたんだけどクラクション鳴らしながら煽ったっけ、次の信号で横に並ばれた。


こっちも右方に居る相手の車を見る。すると窓がウイーンってゆっくり開く。いちゃもんでもつけてくるかと思いきやスーツをビシッと決めサングラス掛けたゴツいおっさんが無言でジーっと拳銃を向けてるの。





うーん、、、


落ち着け俺。いや、取り敢えず手を挙げればいいのか?シート倒して伏せるか?いや大口径だしドア貫通する?いやそもそも本物か?そこから先はもう完全思考停止して、覚えていない。


首の向きを変え、ハンドルを握ったまま真正面を見たまま動けなかった。まさに蛇に睨まれた蛙状態で信号が青になって横の車も居なくなり後ろの車のクラクションで我にかえった。もう涙鼻水汗がやたら吹き出てとてもじゃないけど運転出来る状態じゃなかった。


あの時ほど赤信号待ちが長く感じた事はなかった。まああの格好から想像するにまず本物だったんだろうな。撃たれないで良かったわ。今まで何度か銃を向けられた事はあるがあの時が一番怖かった。


話しを元に戻します。


私は思考停止の後、ボンネットの両脇から出ている炎を再認識すると、助手席に乗ってた知人に「降りて!」と叫びながら自分も車から飛び降りた。というか転がり落ちた。


辺りは大都会ミラノの繁華街、道行く見物人が集まる中、消火器を借りようと目の前にあるブティックに入って行った。


そもそも消火器なんていうイタリア語を知らないから店員に火、火と叫ぶと、どうやら気がふれた輩と勘違いされたらしく怪訝そうな対応をされた。


それでも窓の外の燃えてる車の方を指差して火、車、火、燃える、と叫んでると店員がマンマミーアと叫びながら外に出て行った。


いや、あの、消火器借りたかったんすけど…



で結局消火器を借りて消火活動をしようと近付いた時、ボーンというさっきの10倍ぐらいの音で爆発した。降りるの遅かったら重傷パターンのヤツや。


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