死んだ人のために生きる人たち




最近、戦争の特集番組を、NHKの深夜にやっている。

今年は終戦から60年だが、それほど戦争の話はなかった気がする。

先日は、沖縄戦の特集だった。

本土決戦までの時間稼ぎとして、地元の人を総動員させての総決戦となった沖縄。

アメリカに投降せず、洞窟で自決した多くの命。


ある女性が出演していた。

彼女の父親は、アメリカに投降していた折、残存した日本兵からあらぬスパイ容疑をかけられ、惨殺される。短刀を何本も刺され、足の裏を日の丸の形にくりぬかれる。

残存日本兵からすれば、アメリカ兵に見つかれば間違いなく全滅される。恐怖感の極地からのねじれ。日本兵が日本人を殺す。

戦争の話は、リアルでありながら人知を越える。

彼女の母親はすぐに精神を病む。母親が亡くなると、今度はお兄さんが精神を病む。そして、全身に手榴弾の破片がめりこんだ彼女は、多くの差別と闘いながら、母と兄を支えてきた。

そして、彼女は自分が殺されそうになった海岸を久しぶりに訪れ、

こういうのだ。

「父さん、どうか安らかにお眠りくださいね。私は元気で暮らしているからね。」

時代にもまれ、世の中を恨みながらも、彼女は生きている。


不遜な私は、その姿があんまりにも強く輝いてみえるので、泣いてしまう。

そして、未熟な私は、その生き方に出来る限りおもいをはせる。

どうしてなのか。どうして貴方は、そういえるのか。

無名の彼女が生きるその姿に、この世の多くのものが救われ、守られ、保たれている。

生きることは、平凡で、果てしない。

その彼岸に立ちつくす。

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