【私の思い出たち】〔第四話〕

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背中に見えた光

 遥か昔教員になった年の事。私は3年生の担任だった。ある女の子の事が気になった。その子は常日頃はおとなしく,友達と一緒に遊ぶ事も少なかったから。

 運動会の前,体育の学習で,グラウンドで50㍍走の記録をとっていた時のこと。私はその子のフォームがとても美しい事に気がついた。授業時間が終わって教室に戻る道すがら,何気なく彼女に

「走るかっこうが,とってもいいね。絶対速くなるよ!」

と声をかけた。彼女はびっくりした顔をしたあと,にっこり笑った。



 2日後の次の体育の時間のこと。この時間も50メートル走の記録をとっていた。この時間の記録をもとに,運動会のリレー選手を決める事になっていた。

 彼女は学年で一番速い女の子と組になって走った。私は記録用紙への記入に夢中でスタート時に目を離していたが,子どもたちの大歓声に驚いてトラックに目をやった。


 驚いた。なんと彼女がぶっちぎりで快走していたのだ,とても美しいフォームで。彼女は文句なしに選手に選ばれ,以降小学校卒業まで4年間,リレー選手に選ばれ続けた。この出来事にあわせるかのようにしだいに友達も増え,休み時間には笑顔のこぼれる女の子になった。

 ピグマリオン効果(教師の期待によって学習者の成績が向上すること。“光背効果”とも言う。:ウィキペディアによる)を実感したできごとだった。

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【私の思い出たち】〔第五話〕

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