もし会話の苦手なサラリーマン研究者がアナウンススクールに通ってラジオDJを目指したら②

 2010年から2011年にかけて、僕のラジオ環境は一変した。まず1つはラジコの登場である。ラジコによって、インターネットで茨城でも東京のラジオ局の放送をクリアな音で聴けるようになった。これで、中学生の頃からやっていたアンテナの向きを変える作業から解放された。もう1つは、携帯電話会社のauが提供するLISMO WAVEである。これは、月々315円(ただしパケット代は別)を払えば、全国のFMラジオ局が聴き放題というサービスである。これにより、CMは聴けないが茨城でもFM青森が聴けたり、青森の実家でもJ-WAVEが聴けるようになった。ラジオリスナーにとっては夢のようなサービスである。

 そんな中、2011年3月11日東日本大震災が発生。この当時、身内の不幸があって青森の実家にいた。僕が一番知りたい情報は、茨城がどのような状態になっているか、その1点だった。しかしながら、どこの放送局も東北3県や原発の情報ばかりで、茨城の情報は伝えてくれない。僕は途方にくれた。

 幸いにもインターネットは停電回復後すぐに利用できた。確認すると、茨城放送でユーストリームで無料配信をしていた。聴いてみると、水道、道路、電気はどうなっているか、一番聴きたいことが放送で伝えられていた。うれしかった。僕はこのとき初めて、ラジオは電気や水道と同じように社会インフラなんだと実感した。

 実家には震災発生後から1週間ほどいることになってから、それから茨城に戻り、すぐ会社指示で神戸に行くことになった。これは会社の建物が相当な被害を受け、復旧までに2ヶ月ほどかかるため、業務継続のための措置である。

 神戸はもちろん日常生活を行う上で不便は無く、普段通りの生活ができた。一方、阪神淡路大震災を経験した土地であり、今回の東日本大震災に対しては誰に聞いても非常に関心が高かった。そんな中、偶然見たテレビ番組で茨城放送が紹介されていた。毎日放送の「せやねん!」という、土曜午前の人気番組である。地震が起きた瞬間に生放送を担当していた渡辺美奈子アナウンサーのインタビュー、そして地震発生時の放送を初めて聴いた。涙無しでは見ることができなかった。

 神戸では茨城放送も聴けることができた。ラジコでは「震災復興プロジェクト」と称して、東北3県と茨城のラジオが全国で聴けるようになっていた。そんな中4月から土曜日に始まったのがnotesという番組である。僕は初めの頃、前編で話した恭ノ助さんの番組が終わったことが残念でならず、この番組に対しては正直疑問をもっていた。

 しかし、番組をよく聴くとこれは良いと思った。従来の茨城放送、いやラジオの概念を破り、新しいものをやってみようとする「やる気」があるなと思った。AMのラジオ番組でありながら、FMのような曲とトークの一体感を重視した番組構成、地方の情報を単に伝えることから脱却し、こうすべきだというメッセージ性のある内容、山田タポシさんとアヤコさんという、フリーの立場でしっかりと意見の言えるパーソナリティの存在…言えばキリが無いが、これは番組が継続すればすごいことになると思った。

 茨城から帰った6月、僕はcircle notesという、notesの「番組参加型企画会議」に参加した。集まったのはラジオネームで1度は聴いたことが方ばかりだった。皆さんのラジオに対する情熱や関心は僕以上で驚いた。でも、番組を作っている方と直接話して議論できるのは、他の番組では無いことで非常にうれしかった。

 8月は前編で話した「ロケットマンショー」のイベント「フニオチコンテスト」を見にいった。フニオチコンテストとは、世の中の腑に落ちないこと(フニオチ)を紹介しあい、その中で最も共感できるフニオチを決めるという企画である。司会のふかわさん、審査員のシリトシさん、岡本夏生さん、清春さん、蛭子さんがいて、公募で選ばれた人が壇上に立ち、フニオチを読み上げるといった構成である。フニオチの内容がおもしろかったし、ふかわさんの司会進行もとってもよかった。

 そして、11月には「フニオチ鍋パーティ」に参加した。これは場所は二子玉川の河川敷で行う鍋パーティなのだが、1人1品鍋に必要な物を持っていくというルールがある。そして、3班に分かれてそれぞれの班のリーダー(番組スタッフ)が参加者を指名し、指名した人の食材のみを用いて鍋を作るというルールである。鍋の中身はひどいものだったが(笑)、何より他のリスナーさんとの交流が楽しかった。僕のラジオネームは思ったほど浸透しているらしく、「もしかして茨城の○○さんですか?」と声をかけられ、ちょっぴり恥ずかしかった。

 そして2012年4月、僕はある決断をする…

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