伝わらない訴えを繰り返す人たち
たまにだが、精神障害・精神病を持った、あるいは、そうであろうと思われる方と仕事上会う。
彼らの中には,精神病による幻覚・幻聴などによるためか,常識的に考えて通常あり得ないと思われる話をする人がいる。
例えば,「隣人から24時間常になぜか監視されている」とか,「電磁波が見える、常に私を攻撃してくる」といったものである。時節柄,電磁波が放射能に変わる時があるかもしれない。
昔の私のイメージは,そういう方々は話の内容も展開も支離滅裂で,周囲にはどうにも話の筋自体が理解できないのだろう,というものだった。
でも,そうではないんだ,と実感した。
彼らの多くは話の根幹,内容の中心自体は確かに常識外のものではあるが,話の筋立てなり意識なりはしっかりしており,むしろ詳細で綿密なものだ。
何より彼らは総じて熱心で真剣である。
話の内容は何度も何度も推敲を繰り返してきたものだろう。
何とかわかってもらいたい,協力してもらいたいという一心で話をしてくる。
私は彼らと会話していると,何となく「Xファイル」のモルダウを想起する。
何を言っても理解されず,宿命的に孤立化していくような人たち。
彼らの多くは一見とてもまともで,理知的であるともいえる。
ただ多いのは,考えを突き詰めすぎる傾向があり,自分の考えに信頼を置きすぎているところだ。
説明する力はあるけど,説得する力は弱い。
悪く言えば,自分の考えに疑問を挟み込むことをせず,一方的な主張しかしない。
彼らは多くの組織を回り,もう何年も何人も何度も同じ話をし,そして同じく無下に帰され,時には笑われ,怒られ,否定され続けている。
そして、その全てを彼らは覚えている。
でも,彼らにはやはり何かが見えるし,聞こえるし,感じるのだ。
周囲が信じてくれないこともわかってるけれど,それはとてもリアルで,疑いの余地がないと思える。
彼らの苦しみは終わらない。
ひどくなれば強制的に精神病院に送られるだろう。
私は電磁波は感じないが,彼らの言動は自分に似ているところがあるし,そういう気持ちはわかるところがある。
自分だけと考えている言葉、自分だけと感じているおもい。
それが、いつか伝わるのではないか、そう信じている彼らの苦しみに向き合っている。
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