暴走族を作ろう!という話

僕は大人になってから勉強を始め現在28歳で海外大学の4年生だ。割とエリート的な人が集まる大学で「おじいちゃんが経済学でノーベル賞とったよー」なんて言っている人がいたり「某有名企業の家族」や日本人でも「天皇関連の家族」とかがいたりして普段知り合うことのできないタイプの人と一緒に切磋琢磨でき貴重な経験をさせてもらっている。


色んな人がいるんだなーなんて思いながら自分のバックグランドを振り返った。10年くらい前は高校生で勉強でなくまったく違う環境で違うことに努力していたことを思い出した。


暴走族復活とその影響

中学でヤンキーデビューし同じ様な愚れた仲間と連んでいると高校生になるくらいの年には地域ごとの結束が強くなる。それらが「チーム」になり暴走族やギャング、チーマーなどになっていくのだが幸い僕らの時代には警察の努力の結果その地域に過去存在していたチームは検挙され存在していなかった。


僕はただ好きなように遊んでいたかっただけでチームに所属することで「看板」を得ることにはまったく興味がなくむしろ面倒な集まりが増えるので嫌だった。そもそも捕まりたくないしビビってもいた。


ちょうど自分が中学を卒業し高校に入学するくらいの時期に地元の隣地域の不良のおっさんが刑務所から出所し昔その地域にあった暴走族を復活させた。その地域には自分の友達も沢山いて彼等もその暴走族に入っていたのでそのチームが国道を走っていると自分も面白半分でギャラリーになり見ていた。


しかし自分の1つ、2つ上くらいの先輩達は怒りを募らせていた。


ヤンキー社会とは

不良社会っていうのはまるで昔のヨーロッパの様に縄張りがあり隣接するコミュニティーと争うことが多い。その縄張り(地元)を仕切る不良コミュニティーがあって彼等は腕っ節の強さやとんでもない不良行為を平気でしてしまうなどの恐怖感を使って相手に脅威を抱かせテリトリーを守っている。もし目立ったバイクや格好で相手のテリトリーに侵入すると絡まれ「地元どこだこらぁ!」みたいなことを言われるわけだ。


僕の先輩達はその不良コミュニティーを取り仕切っていて周辺のワル達の中では有名だった。マジで漫画「クローズ」のリンダマンみたいな先輩とかキャラの濃い先輩が沢山いた。だからいきなり復活した暴走族が平気な顔して単車でこっちの地元を走ってくることに不満があったようだ。


むしろ自分たちのテリトリー内で派手なバイクで走ったりすると夜中に車で追われたりした。相手が綺麗なベンツとかだと「中の人はヤクザとかなんだろうなー」と思いながら逃げる。実は綺麗な車の場合そこまで危険はない。ひかれないから。もし相手がボロボロのグロリアとかだったら「マジでひかれそう」と思って結構焦って本気で逃げた。


そんな背景もあって先輩達が中心となり本気で暴走族を作ろうと言い始め僕も周りの人になんとなくついていった。


投資家でなくケツ持ち

暴走族やギャングを始めるにはまず「ケツ持ち」と呼ばれるヤクザ組織からのサポートが必要らしい。これは近年よく聞く起業「スタートアップ」を始めることに例えるとスタートアップ「チーム」がベンチャーキャピタルに事業計画を発表しサポートしてもらうようなものだろうか。でもヤクザ組織が金銭的なサポートをしてくれるのではなく、他の敵チームと揉めた時に相手側につくケツ持ちと仲裁に入ったりする。


またサポートを受けるヤクザ組織にもそれぞれ島といわれるテリトリーがあるようでそれに応じて活動範囲が決まってくる。色んなベンチャーキャピタルがある様に、色んなヤクザ組織があるようだった。僕らにあったケツ持ち候補は2つで活動範囲の選択肢は渋谷・川崎でチーマーか横浜で暴走族のどちらかだった。


先輩の助言

「じゃーマジでやるかー!」って雰囲気になっている時にケツ持ちを決定するために地元のコンビニの駐車場に一同集まった。


その場に行くと「本気でやる気があるなら上と話つけてやる」と言う一人の先輩がいて彼を囲み話が始まった。まずやる内容だがギャングはケンカばっかりなのでバイクで走り回る暴走族の方が人気があった。「でも横浜ではやりたくない」とかそんなことを話しているとその先輩が「そもそも今わざわざ看板を持つ必要って本当にあるんだっけ?」と言い始めた。


敵チームをまくるために正式な看板を作りたいというのが最初の目的だった。そして先輩はこう続けた「もし本当に暴走族を作ったらいずれここにいるメンバーの殆どが警察に捕まり主要メンバーの何人かはヤクザ組織に勧誘されることになると思う。やりたくもない仕事も回ってくるしだるいことの方が多い。」


「別に看板なくってこっそりと他の地域を走って敵チームに捕まらないように帰ってくればいい。どうしてもブチのめしたいならフルフェイスのヘルメット被って身元がわからないように潰せばいいじゃないか!」と言われた。


前半いいこと言っていたけど後半はとんでもないこと言う人だなーと思ったのを今でも覚えている。でも結局「くだらないプライドさえ捨ててしまえれば今までの様に楽しく暮らせるぞ〜」と言われ全員同意してチーム結成は断念した。


              



敵チームの暴走族も1年も満たない間に警察に逮捕されあたりは静かになった。相手暴走族に所属していた友達も鑑別所や少年院、地方施設に送られ自分が高校を卒業するくらいの頃に再会した。あの時コンビニの駐車場でラフな先輩が彼なりの助言してくれなかったら自分の人生はまったく違う方向に向いていたと思う。

ストーリーをお読みいただき、ありがとうございます。ご覧いただいているサイト「STORYS.JP」は、誰もが自分らしいストーリーを歩めるきっかけ作りを目指しています。もし今のあなたが人生でうまくいかないことがあれば、STORYS.JP編集部に相談してみませんか? 次のバナーから人生相談を無料でお申し込みいただけます。

著者のSuzuki Takuyaさんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。