僕にとってタイムズスクエアは神社になってしまい、ラーメン屋の店長はライバルです。

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物心ついて初めて訪れたアメリカの風景は僕が育った田舎町と変わらず自然豊かなミネソタでした。外国人はいるけど木の方がよっぽど多かった。帰国が近づきボランティアで知り合った仲間がニューヨークによって帰ろうと誘われ同行する事にしました。


ニューヨーク。当時の僕にとってはリアリティーが全くない場所でした。


タイムズスクエアに行こうって事になり、タイムズスクエアとは確か映画とか雑誌で良く見る場所で新年には派手なカウントダウンがある場所だったはず。まあ東京に初めていった時にみた東京タワーみたいな感じになるのだろうと冷めていました。


タイムズスクエアへ行くことの興奮よりも帰国後は就職活動が待っているというプレッシャーが重く伸し掛かっていました。あれほど待ち望んだ「社会」へと一歩踏み込むという事に対して不安だらけで僕は間違いなくビビッていたんです。


そんな悩みの中で到着。考え込みすぎていたせいか気が付けばタイムズスクエアど真ん中に立たされていて唖然としていました。信じられないほどの様々な音が聞こえます。車のエンジン音やクラクション、路上商人の叫ぶ声や、なんか良く分からないけど爆笑している若者やら団体旅行の添乗員の掛け声はもちろん、暗くなり始めているせいかひときわ目立つネオンの明かりやモニターから流れる様々な広告。なんだか押し潰れそうで気を確かに持つことでいっぱいでした。まるで夢の中にでもいるかのようで「テレビや雑誌のタイムスズクエアが本物でここはどこだろう?」とまで思っていました。とにかく圧倒的でした。



そして・・・・。仲間とはぐれては腹ペコになります。正直、これだけ圧倒されていては何かを食べるのも不安だらけです。とにかく自分が小さく思えて潰されそうな心境でした。そんな僕の目に入ったのは、まさかのラーメン屋。自分を疑いました。「やっぱりここは夢の中なのだろう、そんなはずがない。アメリカに日本のラーメン屋が?」。今でこそアメリカでも割と普通なラーメンかもしれませんがJAPANESE FOODはあってもラーメン屋は本当に衝撃でした。


よくわからないまま・・・・。 

気が付けば味噌ラーメンを頼んでいました。小さなレストランで不思議だらけでした。


「どうして?なんでアメリカでラーメンを?受容はあるんだろうか?てか儲かるのか?いつからやっているのだろうか?食べても大丈夫なのだろうか?」全くの謎と店主が何故ここにラーメン屋を開いたのか不思議だらけでした。


ラーメンが渡され、混まない時間なのか僕と数人の客しかなく静かに食べ始めました。さっきまで圧倒されていた外と違い本当に落ち着いて頂けた一杯の味噌ラーメンでした。




食べ終えた頃、終えていたのはラーメンだけではありませんでした。僕はそれまでの不安を全て断ち切る事にしました。一杯の味噌ラーメンを通じて頂いたのは店主の志でした。


「ビビッていては何も始める事ができない。」

 

ラーメン屋を出た頃、もうあたりは真っ暗でした。イヤ、看板や町の光でそれまで以上に輝いていました。ラーメン屋を後にしては振り向きざまに勝手に言いました。

おいら
「こんな西洋人だらけの国で、それもニューヨークでラーメン屋を始めたあんた(店長)の勇姿に感銘しました!その勇気頂きます。そして僕はあんたに負けない!」

たぶん・・・・。「負けない」って言う表現は正しく無かったのかもしれません。でも本当にそんな気分でした。「なんだか、負けられない!」っていう思いでした。


歩いて来た道をたどりなんとかタイムズスクエアに戻ります。

田舎者の僕にとってそこは立っているだけでもプレッシャーを感じる大都会。でもこんな大都会にも普通に毎日出勤して仕事している人たちがいる。僕も何時か・・・・。

その時、僕が何を願っていたのかは覚えておりません。
帰国後、大学を卒業した僕は気が付けばアジアの大都会上海へ向かいます。誰の人生もそうですが当然山あり谷ありで、やがて僕は30を超えたサラリーマンになります。そして上司から思いがけない任務が任されます。その内容はニューヨークで行われる事業説明会で会社を代表してプレゼンするという任務でした。



ニューヨーク。あれから約10年が経過しています。その時にはプレゼンの事で頭がいっぱいでした。本当に思いもよらない状況に気が付けば僕はまたビビッていたようです。そして向かったニューヨークはやっぱり光り輝く都市でした。不思議な事にプレゼンをする事となっているホテル会場はタイムズスクエアととても近い所にありました。

そして仕事を終え10年ぶりに僕はスーツ姿でタイムズスクエアーに立ちました。
そして思い出したのです。あの頃、このタイムズスクエアで願った事。


「田舎者の僕にとってそこは立っているだけでもプレッシャーを感じる大都会。でもこんな大都会にも普通に毎日出勤して仕事している人たちがいる。僕も何時かスーツを着て仕事でここに訪れたい。そんな一人前になりたい。


その瞬間、なんだかとても嬉しくなりました。ここまで来たのかと勝手に感動しました。そしてラーメン屋の事を思い出しましたが、思えば迷子の最中に見つけたラーメン屋です。幻なのかと思っていたあのラーメン屋を見つける事はできませんでした。何よりも出張なだけに時間が無かった。

「次にニューヨークに来る時には好きな人と旅行で来たい」と思い帰国します。

それからまた数年がたちます。結婚した僕は久しぶりに戻った実家で過去の私物を整理してました。するとなんとあのラーメン屋の名刺が現れたのです。ビックリしました。そして運命を感じました。結婚を期に僕は転職を考えていました。でも今の仕事は僕を育ててくれた。安泰した収入を得る事ができる職場。ここで妻と冒険(転職)に出るのは愚かではないだろうか。悩みいっぱいで妻とのニューヨーク旅行を決意。

初めてのアメリカに妻は大はしゃぎの中、僕の心はまたもや重いままでした。タイムズスクエアに到着します。変わらぬタイムズスクエアは本当い派手ですごい。何度来てもすごい。とまあ、すごいのはわかっているので僕はさっそくラーメン屋に行きます。

ここでいい感じのストーリーならばもうラーメン屋が無くて良い思い出話になるのがリアルだと思うのですが・・・・。ラーメン屋には行列ができていました。さらには隣の店舗に居酒屋までオープンし、事業拡大となっていました。笑ってしまいました。

タイムズスクエアで佇み、僕はまた新しい願いのような誓いを言いの残します。それから帰国した僕たち夫婦は転職活動を始め、今は全く知らない町でまったく新しい分野で新しい挑戦しています。次にニューヨークに行くのは何時でしょうか。楽しみです。

タイムズスクエアは僕の願いや思いに答えてくれます。変な場所になってしまいました。

後、なんでかわからないけどラーメン屋の店長には負けられません。旅とは思いがけない出会いがたくさんあるようです。時にその出会いは人ではなく場所であったり料理ですらある。観光地であるはずのタイムズスクエアにお参りしている僕もいる。それで結局・・・・。

僕にとってタイムズスクエアは神社になってしまい、ラーメン屋の店長はライバルです。


ー終わりー


追伸:後にしったのですが、あのラーメン屋は僕が生まれるずっと前の1970年代からあるラーメン屋でニューヨーク、もしかしたらアメリカにオープンしたラーメン屋一号かもしれないと言われています。僕は店長は愚か、またもや幻かもしれないって思っていますが今日も営業中です。


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