ニューヨーク生活でみた、ニュースの世界と日常生活の違い



土曜日の大雪で私の車が雪にうもれてしまった。

今年のニューヨークは例年にない寒さだ。


マンハッタンから川を超えたクイーンズ地区。パン工場や印刷所。週末になると人はほとんどいない。15年前はおそろしくって立ち寄ることもなかったエリアだ。


そんな場所に路上駐車をした自分を責めていた。


気温はマイナス17度。雪はがちがちに凍っていた。

車に積んでいた簡易のプラスチック製のシャベルを使って何度も雪かきをした。

タイヤは空回りするだけで抜け出すことができない。

20分ほど格闘して、今日はあきらめようかと思い始めたときだった。


どこからともなく、中国人風の男性が現れた。


私の車を見るなり何も言わずに手伝ってくれたのだ。

鉄製のシャベルを持ってきて、雪をかいたり、車を押してくれた。

私がハンドルを握り、「レディー・ゴー」と声をかけながらアクセルをふかす。

しかし都会のほこりまみれの真っ黒い雪が舞い上がるだけ。


中国人風の男性は泥まみれになりながら無心に雪をかいてくれてる。


凍った雪は男の鉄製のシャベルをぐしゃぐしゃにしてしまい、木製の柄は真っ二つに割れてしまった。


私は心の中で

「うっっ、弁償か・・」と。


中国人風の男は、車の中から大量の古新聞を持ち出してタイヤの下に敷きしめはじめた。

しかし、それでもなかなか出ることができない。彼も一緒に途方にくれてしまった。


すると今度は、ぼろぼろの青いワンボックスカー車が停まった。


ガタイの大きい黒人男性が車から降りくる。


工事現場で働いている風の男は同じく無言でトランクの中から白い容器をとりだした。

白い容器の中には雪を溶かす融雪剤がはいっていた。


その融雪剤を男は惜しげなくタイヤの下にばらまき、車を押してくれるのだ。


「う、こいつらはもしかして・・」

と身構える私。


しかし、多少のチップ(お金)がかかるのは仕方がない。とにかく車を取り出さねばと焦る私。


何度押してもなぜかタイヤが空回りするだけで抜け出せない。


大の男が3人、格闘すること30分、やっとのことで雪だまりから車を出すことができた。


ここはアメリカ。私はチップを渡そうと急いでポケットに手を入れた。




しかし、2人はそれを察してか、「イエーイ」とグーで私の肩をポンと押ししただけで、颯爽と走り去って行ってしまったのだ。


「チップをいくら払わないといけないのか」とハラハラしていた自分が急に恥ずかしくなった。


私はふと、朝見ていた日本のニュースを思いだした。


ヘイトスピーチ問題、フランスでの黒人差別問題、中国との外交問題が取り上げられていた。


人種のるつぼのニューヨーク。人を見かけだけで判断したらこの街では生きていけない。


ニュースの情報に振り回されることなく、自分が身をもって体験したことを大事にしたい。


実生活では、困っている日本人を、中国人のおじさんや、黒人のお兄ちゃんが助けてくれるのだ。


寒い中、泥でべとべとになりながらも、いやな顔ひとつしないで。









板越ジョージ
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George Itagoshi
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