くま歩きが、脳の管理統制能力を育てる!?、という話 職人パパが、娘と難関私立小受験に挑戦した話 第6話

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「お受験」の運動能力を測る、基本項目に「くま歩き」

と呼ばれるものがある。

文字通り、くまのように、四足で歩くもの。


だけど、「ハイハイ」では、ない。

ひざをつくのではなく、足で歩く。


なので、やや、前のめりの体勢になる。

この、なかなか普段しない「くま歩き」。

これが、「お受験」の世界では、とても重要視されているらしい。





ある日の教室。

体操の時間。


いつもなら、

「スタートの場所で、ボールのドリブルを10回続けましょう。

それから、ボールを持って、ケンケンで、赤いコーンを右からまわって、

帰り道は、スキップでもどりましょう。」

というような指示を聞いて、

それを、ひとりづつ行う、サーキットトレーニングが多いのだが、

この日は、ちがった。



「この白い線にそって、横に並んでください。」

の声とともに、子どもたち10人くらいが、並ぶ。

補助の先生が、「間隔を開けましょうね」と

やさしく声をかけながら、1メートルくらいづつの間隔をとる。


「それでは、これから、くま歩きの競争をしますよ!

くま歩きは、こういう風に、足と手で、歩きます。

競争なので、できるだけ、速く、進んでいけるように

がんばってくださいね」

補助の先生は、「くま歩き」をやってみせる。



教室の後ろで、見ているママたちは、

「やったことある?」

「うちは、お兄ちゃんのときに、さんざんやったらから、

あの子も見ていて、いっしょにやっていたから、できると思うわ」

「そうなんだ。やったことないけど、まあ、だいじょうぶかしらね」

なんて、小さな声で、話している。




「それでは、よ~い、ドン!」


子どもたちは、一斉にスタート。

上手な子は、「歩く」というよりも、「走る」ように進む。

勢いあまって、顔から床につんのめる子もいる。


ちょっと不器用な子は、床ばかり見ている、曲がって進んでいることに気がつかず、

お隣の子に突進してぶつかり、泣いてしまったり。


あまり、やったことのない子は、前に進めず、

途中で、座り込んで、まわりをキョロキョロ。


ストップウォッチを見ながら先生が、やや曇った表情で話し始めた。

「くま歩きは、小学校受験での、

運動能力をみる基本です。


くま歩きが速い子は、

全身の筋力もバランスよく発達していて、
その動きもよいのです。


脳の管理統制能力を育てる、とも言われています。

そのため、小学校入学後の体育の時間にも、動きよく、学習ができると

言われています。


これは、練習をすれば、かなり速くなりますので、

ぜひ、おうちで、練習なさってください。


今回の、1等賞の○○君でも、25秒でした。

昨年、筑波に合格の男の子は、16秒でした。

慶應幼稚舎、早稲田実業合格の女の子は、14秒です。

まだまだ、練習の余地がありますので、

そのつもりで、毎日少しでも、

練習させてあげてください。」


後ろで見学中のママたちが
一斉に、「筑波男子、16秒」

「慶應幼稚舎、早稲田実業女子、14秒」と
メモをとる。


我が家のあ~ちゃんは、といえば、いちおうゴールまでは行ったが、

「合格!」のラインには、まだまだだ。

10秒以上、タイムを縮めなければならない。



その日の夕食で、「くま歩き」の話をパパにすると、

「明日から、毎朝、ろうかを、くま歩きで競争だ」と、はりきった。


翌朝から、ドタドタと、親子ぐまが歩く日々が始まった。

バランスがよいのか、パパは、顔からどさっと転ぶことが、

日に2度くらいあるが、あ~ちゃんは、転ぶことはない。

ただ、圧倒的に、体が大きく、勢いがあるので、

パパが勝つ。

大人げないくらいに、勝って喜ぶ。


寒い朝は、手も足も赤くなる。

暑い朝は、汗で手や足がすべる。


あ~ちゃんは、負けてムッとしながらも、

明日こそ!と、パパと競争を止めなかった。


受験本番まで、残すところ1週間。


とうとう、あ~ちゃんは、僅差で、パパに勝った。

喜びで、ぴょんぴょんと跳びはねるあ~ちゃんを

「よかったね~」と拍手しながら称えていたら、

隣で、

親ぐまは、四つんばいのまま、動かない。


「パパ~。負けたからって、泣いちゃ、ダメなんだよぉ」と、あ~ちゃん。

「ばか、ちがうんだ。うれしいんだよ」とパパ。

「負けたのに、うれしいの~?

・・・あ、わたしが速くなったのが、うれしいの?」



その後、教室での「くま歩き」競争で、

あ~ちゃんは、ぶっちぎりで1等賞をゲット。

「13秒! すごいわ。くま歩きは、合格ですよ」と先生。


教室からの帰り道、

あ~ちゃんは、「パパが、合格なんだよね~」と、ひと言。


「何かに情熱を注ぐこと自体が目的。

結果は、おまけみたいなもんだ」

というのが

15歳で中学を卒業、その道の師匠に弟子入り、

自分の腕一本で生きてきた、職人パパの口癖。


しかし、受験というのは、

結果こそが、すべての世界。

どんなに頑張ったとしても、運が悪く結果が出なかったら、

その努力に対して、肯定的になりにくいはず。

努力は、身についているものでは、あるけれど。


「ダメだったら」というネガティブな不安な気持ちを

つぶしていくには、圧倒的な努力しかないけれど、

受験する、小さな子どもには、そんな自覚もあるわけではない。


楽しい競争を、本人が楽しめるような状態につくっていくしかなくて、

それは、日々の「くま歩き競争@ろうか」という、地道な努力しかない。


本番前ということで、

いろんなことが、できるようになって喜んだり、

まだできないことに悩んだり、

一喜一憂の乱気流の中を飛んでいるような日々だった。















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蛇の道は蛇、気晴らしが大事という話  職人パパが、娘と難関私立小受験に挑戦した話 第7話

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