幼児が、リーダーシップを一瞬で身につけた魔法のことば  職人パパが、娘と難関私立小受験に挑戦した話 第8話

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小学校受験の科目には、

「行動観察」というものがある。


受験会場で、初めて会う子ども同士で、

グループとなり、自由遊びを行うというもの。


大人でも、初めて会ったばかりでは、

お互いに出かたがわからず、

マゴマゴしてしまうもの。


生まれて5年足らず、

ことばを発し始めて3年余りという幼児に、

そんなことが、できるのか?!と、

この試験があると知った時には、思ったものだ。


娘の受験予定の学校の傾向としては、

たいていは、5人ぐらいのグループで、

あからじめ用意された、道具(新聞や、ボール、ロープなど)を使って、

遊びを考えて、みんなで、遊んでください、というものが多いとのこと。


その対策として、幼児教室でも、

その練習をする。

こちらは、やや知っているお友達とのやりとりだから、

本番よりは、ハードルが低い。

それでも、

なかなか遊びは、始まらず、もじもじする時間が流れることが、しばしばだ。



幼児教室の先生のお話によれば、

用意されている道具を使った鬼ごっこやリレーのような競争が、

子どもらしく、動きもあって、好印象なので、

「これを使って、こんな風に競争しない?」というような提案を最初にできると、
リーダーシップがあるということで、よい、とのこと。


レッスンでは、先生のアイディアを聞きながら、

子どもたちは、「そういう風にするんだなぁ」と理解して、

毎回、違ったメンバーで集められても、

遊べるようになっていく。


とはいえ、

みんなが、最初に「これで、○○しよう!」と言う、言いだしっぺになれるようになれる訳はなく。

我が家も娘も、楽しく遊びに参加することは、できても、

全体をひっぱっていくようなタイプではない。

そんな受験科目が存在する学校を受験すること自体が、

まちがいなのか?と悩む日々。


「協調性があるのは、いいことですが、

発言をしたほうが、積極的に見えますからね」と、先生も苦笑い。


5歳の娘に、リーダーシップを説明しても、理解不能。

どうしたら、わかってもらえるだろうか・・・。

できるように、なるのだろうか・・・。


娘が寝てから、パパに相談。

パパ「でもさ、そういうタイプじゃないんだから、しょうがないよ」と、あっさり。

「それじゃ、その科目で、点が取れないよ・・・」と、ぐずぐず言ってみる。

「じゃあ、なんか、言えそうことを、シンプルにひと言だけ、言わせるのは?」

「ひと言?」

「そう。いろんな状況だろうけど。ひと言だけなら、アイツも憶えるだろうし、言えるだろ!」と。


それから、ずーーっと考えた。

リーダーシップっぽい、ひと言。

どんな状況でも、使えるような、汎用性のある・・・。

そんな、ひと言、あるのか?!


「行動観察」のレッスンを見学し続けてわかったのは、

この科目で行われる遊びは、

ほとんどが、鬼ごっこか、リレーの集約されるということ。


言いだしっぺが「○○をつかって、こういう鬼ごっこしない~?」と、言い出すと、

残り4人は、たいてい口をそろえて、「いいよぉ」と答える。


そこで、娘の出番。

「それを、ケンケンで、やるのは、どう?」

というのだ。

(これがリレーのような競争のゲームでも、以下同文)


受験本番の1ヶ月前、悩んだあげく、思いついたのは、

そう、片足で進む、「ケンケン」。


鬼ごっこや、リレーを

バージョンアップさせる、ひと言を言う作戦。

どんな遊びでも、使えそうだ。


ためしに、幼児教室の「行動観察」の時間に、

「ケンケン」を提案してみると、

みんな楽しそうだし、先生も「いいアイディアですね!」と、笑顔。





受験本番。

例年通り、「行動観察」が行われた。

もどってきた娘に様子を聞くと・・・。


「すご~く楽しかった! 

おたまに、ボールをのせて運ぶ競争をしたんだよ。」

「え? ケンケンできないよね、それ・・・」


「うん。だから、言わなかったよ」




「・・・・・(ガーーーーン)」




娘は、わたしのショックの顔を見上げて、

「あ!」と思い出したように、続けた。


「わたし、1回目の競争で勝ったから、

勝った人が審判やることにしよう!って言って、

次の競争で、審判やったんだよ。

みんな順番にどんどん競争して、楽しかったんだぁ」


どうやら、子どもなりに、自分の意見を言って、

チームに貢献する楽しみを感じたようだ。

リーダーシップなんて、そう簡単に見につくものではない。

けれど、「ケンケン」で伝えたかった中身は、伝わっていたようだ。


1次試験の結果は、合格。


あとで聞いたところによれば、

娘のチームは、5人全員合格だった。


倍率が高い学校なので、

これまで、1度もなかった結果だとか。

「これまで見たなかで、もっとも、楽しそうに活発に遊べたチーム」だそう。


受験だからと、周りを蹴落として、

わが子を合格させたい、という気持ちで臨むのは、おかしい、

と思ってやってきたが、


この結果を見たときに、その考えでよかった~と、肩の力が抜けた。



パパの「ひと言だけ」作戦は、

つい、いろいろと多くを伝えようと、しゃべりすぎる母親には、

とても効果的だった。


そして、いよいよ、家族3人が試験を受ける、

親子面接へ、駒を進められることとなった。


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