「私設警備員」

六本木のクラブで飲んでいた。
お気に入りのブラッディーマリーに、塩とタバスコをたっぷり入れて。
飲むと酔うのに、ピリリと醒める。
この感覚がたまらない。
薬も売っていたが、幸い違法薬物には手を出さなかった。
(処方薬には手を出したが…)
一緒にいた友人が、表通りにナンパしに行こうと誘ってきた。
ホイホイと付いていき、見事2 人の女性をゲット。(先に声をかけたのは私だ)
友人が女性に、「俺の店で飲もう、料理も作るよ」と。
ここで説明:友人はある有名芸能人のお店の店長で、ほぼすべてをまかされている。六本木、乃木坂、串焼きで検索すればすぐに出てくるだろう。
私もちょくちょく手伝っていた。
おもむろに店の鍵を開けて、女性二人を中に案内。
適当なつまみとワインを用意して話を聞いてみると、
なんと、大手航空会社の客室乗務員(スチュワーデス)
そう思って見てみると、端正な顔立ちと均整の取れたスタイルだ。
最初はイメクラ嬢かと思ったが、嘘ではない証拠に乗務員マニュアルと社員証を見せてくれた。
なぜ俺たちに?
と、私が聞く前にとなりで友人が猛烈に口説いている。
私も一緒になって口説こうとしたが、仕事内容が気になってその質問ばかりしてしまった。
結局、彼女たちは「ごちそうさま」と言い残して帰っていってしまった。
…のだが、私たちはおさまりがつかず最初のクラブで飲むことに。
友人が酔いながらも、家出少女あたりに目星をつけている間、私は酔いが回ってカウンター上でミ
ニスカートで踊っている雇われ女の足首に腕を回している。
教育上良くない光景だ。
いい加減二人とも酔い潰れてきてクラブの風紀を乱してきたころ(このクラブの風紀ってなんだ?)、
一人の黒人が目の前に…。
身長180~190㎝、筋肉モリモリでボブサップみたいだ。
このクラブの雇われ警備員。ケンカやトラブルの仲裁役。
こんなのが、このクラブには何人もいる。
まぁ治安が悪いからしょうがないか。
な~んて思ってたら、後ろから襟をつかまれてエレベーター内へ。
友人も程なくして違う黒人と入ってきた。
1 階でドアが開いた瞬間、背中を押して出された。
どうやら酔っ払いすぎたので、つまみ出されたようだ。
ところが友人はくじけなかった。
「あのフェンスから2 階に上がれる!」
まぁ、2 階の非常階段に入り口があるのは知ってますけど…。
いくら酔っぱらってるとはいえ、ビルの2 階まで命綱なしでフェンスに手と足だけをかけて上りきるというのは、相当怖い。
それを二人はやった。
見事2 階の非常階段にたどり着き、ドアを空けた瞬間、
さっきの黒人二人が立っていた。
あとはご想像に…。

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