上野駅ホームであった悲しい事

未だに思い出す、あの不思議な体験。

私はあの時、何を観たのか?おばあさんはどうなったのか?自分は何かできなかったのか?
そんな言をもう何十回も考え答えがでないまま今に至ります。

ここにしるし、いつかその意味がわかるのを期待したいと思います。

今から約4年前位の事です。あの頃私はよく、金曜日の最終の新幹線で実家のある宮城に帰ってました。
あの日も上野駅の東北新幹ホームで最終の新幹線を待っていました。
少し早く着いたためか、ホームには私一人だけでした。
そこへ、制服を着た男性が2名と、1人の70〜80代のおばあさんがホームに降りて来ました。
暇をもてあましていた私は、すこし遠目で3人の様子を見ていました。
制服を着た男性の内1名は、わりと小柄でやや太め、年の頃は50代位といった所で、仕事に不慣れなのか、緊張し何かそわそわした様子で、ひと言もしゃべりませんでした。
もう一人の男性は年の頃は40代位で、制服をかっこ良く着こなし、物腰も落ち着いている感じでした。
恐らく、40代位の男性が上司で、50代位の男性は、配属されて日も浅いのではないか?
などを考えてると、制服の男性達の間に居たおばあさんが、
「電車にのるの?」
と、40代位の制服の男性に話をかけたのでした。
男性は、
「そうだよ。もうすぐ電車が来るからそれに乗るんだよ。」
と、優しい感じでおばあさんに語りかけました。
おばあさんは、少し腰が曲がっていて、身長も140cm位の小柄で、素敵なつばの大きな帽子をかぶっていました。洋服も比較的おしゃれで、明らかによそ行き用の身成をしていました。
その掛け合いから、私は最初40代位の男性は母親を見送りに来たのかな?と感じました。
そう感じたのは、彼の手にはお土産なのか、お菓子の紙袋が握られていたからでした。
微笑ましいと感じましたが、同時に何かおかしいとも感じました。
もし親子なら、後ろにいる50代の男性は、何故ここにいるのか?
職務中だったとしても、部下や同僚を母親の見送りに付き合わせる人はそうそう居ない。
次に考えたのは、新幹線の乗り方がわからないおばあさんを、駅員さんがサポートしてるのではないか?とう考えでした。
サービス向上の為、結構、親身にサポートするようになったのかと関心したと同時に、やはり何か違和感を感じました。違和感は2つあり、1つは制服でした。
先ほどまで、駅員だと思ってましたが、よく見ると警備会社の制服だったのです。
今まで、ホームで警備員を見た事などありませんでした。今も基本的にはホームで警備員を見る事はありません。
そして、違和感の2つ目は警備員さんとおばあさんの関係がさっき会った様な関係ではないのです。
おばあさんは、40代位の男性をとても信頼している感じでした。
一緒に居る50代の男性が見えないかの様に、ずっと40代位の男性に話かけているのです。

この違和感はなんなのだろう。

困惑する私の前に、長野行きの新幹線が入ってきました。
長野行きの最終の新幹線で、一駅前の東京から乗って来た方が結構いらっしゃいました。
新幹線の扉が、プシューっといって開くと、制服を来た40代位の男性が、おばあさんに
「この新幹線に乗るんだよ」
といって、扉の前までおばあさんをつれていきました。
おばあさんは、素直に新幹線の中へ。
そして、戸口でおばあさんにお土産の様な紙袋を渡したのです。
紙袋を渡し終えると、制服を来た40代位の男性は、数歩ホームに下がり、おばあさんに一言
「危ないからさがりなさい。」
その直後、おばあさんは不安を感じたのでしょうか?
手に持っていたお菓子の袋をストンと新幹線の床に落とし、新幹線からホームに戻ろうとしました。
その時に、おばあさんがかぶっていた、黒いつばの大きな帽子がストンと、新幹線とホームの間にすべり落ちていきました。
それを見た、制服を来た40代位の男性は、
「降りたらだめだ!そのまま乗ってなさい!」
と声を荒げたのです。その声にビックリしたおばあさんは、新幹線の中から不安そうな目で40代の男性を見つめるのです。その後も、男性は
「大丈夫だから、乗ってなさい。」
と続け、とうとう発車の合図と共に戸はしまって動き出しました。
あの時のおばあさんの寂しそうな顔を忘れる言はできません。
大きなつばのついた帽子をかぶっていた時は、どこぞの裕福なおばさまかと思っておりましたが、帽子を無くしたおばあさんの髪は、ボーイッシュに短くカットされていて、よりいっそう哀れみを感じさせる姿でした。

私が怒りを感じたのは、新幹線が去った後でした。
おばあさんが落とした帽子を気にかけるそぶりも無く、制服を来た男性2人は足早に立ち去っていきました。その後しばらく、コンクリート敷きのレールの上に落ちた黒いつばの大きな帽子を見つめながら、拾いに現れるのを待ちましたが、結局2人の男性は現れる事はありませんでした。

ネットを調べたり、両親に話を聞くと、ホームレスを保護するとその地域で面倒を見なければならなくなる為、新幹線で管轄の違う所に送り出してる。という話があるとのことです。
でも、あくまで噂なので、本当なのかわかりません。

ただ、あのおばさんが今どうしているのか、気になり時折、あの悲しい表情を思い出してしまうのです。

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