【第2話】32歳の喪主

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私は会社をビジネスパートナーと
共同経営していて
母はその会社の経理をしてくれていた。

もともと母はピアノとエレクトーンの先生で
自宅で音楽教室を開いていたのだが
レッスンの騒音問題で近所と色々あって

音楽教室を閉め
銀行のオペレータをしたり
小さな会社の経理をしたりしていた。


その時の経理の経験を活かし
私の会社でも経理をしてくれるようになった。


ちなみに私は、母のことは嫌いじゃないし
多分好きなのだと思うのだけど
家庭がちょっと複雑だった関係で
私と母の間には、なんとなく溝があった。

また、中学生のころから
離婚して父がいなかったので
家族の中では
私が父親のような役目を担っていたのだが
母はそれに甘えてきた。


もちろん、母親としての愛情は
あったと思うのだけど

「亜也ちゃんどう思う?」
「亜也ちゃんに任せる」

と何かと私に判断を委ねていた。


そして、私は家族を守るためにしっかりしないと
母や妹を守らないと
という変な正義の心を
中学生から持つようになった。


父親ってこんな気持ちなのかな?

とにかく、そういう環境にいたせいか
家族に悩んで欲しくなくて
自分が何かに悩んでも
ひとりで考えて、ひとりで結論を出す
ということが普通になっていた。

私に悩みがあってはいけないのだ。

お母さんが悲しむから。
家庭はいつも明るいほうが良いから。

私は明るく悩みのない父親役であり、
母を悲しませない、真面目な子供でいなくては
と、勝手に思っていた。

読んでよかった
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