【実話】30歳まで童貞だと人はどうなるのか? 第五話 僕は普通になろうと思った

前話: 【実話】30歳まで童貞だと人はどうなるのか? 第四話 僕にロープをくれないか

空高く舞い上がれこの心 渦巻いた悪い夢より高く

(L'Arc~en~Ciel / forbidden lover より)


夢を見る。

夢の中で僕は学校にいる。


知っている人がいる。横にいる。

友達だと”信じていた人達”がいる。

優しさが牙を向く前の世界。

彼らは僕に何かを伝えようとしているのか。あるいは問題は僕にあるのだろうか。


眠りに堕ちて行く時に思うのは、横に誰かがいてオキシトシンが分泌されながら意識を失いたいということ。

そして目が覚めてもそれがずっと続けばいいと願う。


求めれば受け入れられる。


添い寝をして欲しければしてくれる。

膝枕をして欲しければいつでも受け入れてくれる。

ハグが必要になったらハグをしてくれる。


拒絶が存在しない世界。

僕はそれを求めてきた。

今でも探している。


屈辱的な中学生活を終えた僕は、

外部受験をして、中学とは全く関係のない学校への進学が決まる。


普通の生活をしたかった。

朝起きて駅に行く。

電車に乗って学校へ行く。


学校につく。

友だちがいる。

男もいれば女もいる。


強がったりかっこつけなくても自然体で付き合える人がそこにいて、

僕は穏やかな気持で毎日を過ごす。


勉強を教えたり教わったり。

スポーツをして、留学をする。

もちろん恋愛も。


素直な心で新しい扉を開いていたかった。


だけど、環境がそれを許さなかった。


外部受験をすると心に決めた時に、

僕がぼんやりと思っていたのは

普通である事。


その普通とはまず、

学校は大都会にないといけない。


なぜかというと、大都会には色んな場所から様々なバックグラウンドを持った人が集まるからだ。


僕の中学は全寮制ということもあって、日本全国から生徒が集まっていた。

その良さを引き継ぎ、面白い人との接触を望むなら

大都会であることというのは欠かせない条件だった。


だけど‥。


そんな普通の生活を手にするために障害が立ちはだかった。

進学塾だ。


今と異なり当時はインターネットが普及していなかったので

効率的な勉強法とか、効果的な記憶術みたいなノウハウを知るのは困難だった。


だから勉強をするとなると、塾に通い、

そこで提供されるカリキュラムをこなすというのが基本的な流れだった。


小学校時代に大手の進学塾に通い、

そのスタイルや空気感に馴染めなかった事を知っていた母親は、

自宅周辺の塾を調べて、個別指導をしている塾を僕に進めてきた。


若干14歳、15歳の子どもに熟の良し悪しを判断できるはずもなく、

僕はなんとなくその塾に通い始めた。


通い始めてすぐに成績は上がったけれど、

勉強への情熱があまり湧いてこなかった。


なぜかというと、その塾が僕に提案してくる学校の候補は

ド田舎にあるしょっぱい学校ばかりだったからだ。


僕は大都会がいいと何度も何度も言ってるのに、

彼が提案してくるのは近場にあるド田舎の高校ばかり。


今だったらコイツはこの塩学校から紹介料でももらってんじゃね?と勘ぐるのだが、

いかんせんインターネットが使えない。


だから高校受験てのはそういうものだと思わざるを得なかったし、

親も僕が田舎の学校に行きたくないと理解はしてくれていたのだが、

嫌々ながらも塾が提案してくる学校を受けざるを得なかった。


もう一度高校受験を受けられるなら

インターネットを活用してありとあらゆる情報を集めるだろう。


そして学校見学を30校は少なくとも回る。


周りの環境とか、制服のかっこよさ、かわいさ、

留学制度、課外活動など徹底的に調べる。


他人が調べた情報ではなく、自分の手を動かして調べあげた情報に重きを置く。


普通の生活を手に入れようと目標設定が出来たのに、

それを具現化するための手段を他人に任せてしまった。


これが僕の失敗。


だから進学が決まった学校は1ミリも行きたいと思える要素がない、

ド田舎の中の糞ド田舎。


駅から歩いて20分とか言うギャグみたいな場所に立地をしていて、

毎日の通学で莫大な時間を失った。


それでも最初は良かった。


自分が住んでいた場所に住んでいて、同じ高校に通う友だちが出来、

帰りの学校で大貧民(駅長さんから他の客に迷惑になるという理由で怒られた)をやったり、ゲームセンターに行ったり、カラオケに行ったりと、

普通の高校生が楽しむであろう生活を僕も楽しんでいた。


でもそれも最初の間だけで、2年生になって理系と文系を分けるクラス分けをすると環境がガラリと変わった。


日本の高校では若干17歳で自分の進む道を大局的に決めないといけない。

すなわち、理数系の道を歩むのか、あるいは文化系の道を歩んでいくのか。


理系から文系への移動は可能だが、

文系から理系への移動は難しい。


僕は当時、お金が儲かるという安易な理由で歯科医になろうと考えていたので、

夏休みの三者面談で担任の先生と相談をして理系の進学を決定。


ここまでは良かったのだが、「物理学は難しいので、数学がそれほど得意でないのなら生物学を選んだほうがいい」という謎の助言に従ってしまい、生物学のクラスに進学することを決めてしまったのだ。


なんてこった!

高校を決める時に犯した最大の過ちである「他人に自分の行末を委ねる」という大失態を繰り返してしまった。


全く過去から学ばない愚かなガキだった。


他人に自分の人生の主導権を渡すとろくな事が起きない。


その例外に漏れず、高校二年生になった途端、苦痛に満ちた生活が始まった。


学校に行っても心を許せる人は一人も居ない。

地元に帰っても、かつての友達は新しい生活に馴染み始め、

クラブ活動、バンド、恋愛に忙しい。


昔は呼べば人が集まって、全ての自分の欲求が受け入れられる生活を過ごしていた僕は、

中学ぐらいから狂い始めた

思い通りにならない生活に

ただただ戸惑っていた。


この時期に「大学受験のオープンキャンパスの情報を調べる」という理由でパソコンを買ってもらったのだが、インターネットを通じて知らない人と会話が出来る事を覚え始める。


そして、ネットを使えば女の子と仲良くなれるのではないか?と考え、

当時始まったばかりの出会い系に手を出すのだった‥。

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