ムーンショット・チルドレン
塾で保護者説明会を開催しました。
個別指導塾で保護者説明会は珍しいかもしれませんが、「生徒が良い点数取れるようにお互い協力して頑張りましょう!」というものではなく、「活躍できる人材になるためには」という勉強面ではない話をします。ですから保護者説明会には生徒たちにも参加していただいています。
一緒に塾を経営している相方の、大学院時代の恩師で世界最大のICTアドバイザリ企業にお勤めのK先生に基調講演をお願いしました(現在は、大学院の客員教授もお務めになっており、現役で教壇に立っておられます)。で、実は偶然にも私たちと同じ高校の出身、大先輩であることが後日発覚。いや、世間は狭いと実感しました。
司会は相方、基調講演が1時間、私が20分の構成で、全体としては1時間半の保護者会です。
先生の講演は『新たな時代の人材像とは』というテーマで、数年単位で劇的に変わるこの時代で生き残るには「イノベーション」が必要という内容でした。先生によると、イノベーション人材とは、
・既存の秩序の枠内では、評価できない人材
・既存の秩序の枠外に出ていこうとする人材
・記憶よりも創造することを得意とする人材
とのこと。
DeNAが、先日、2020年の東京オリンピック開催時に、自動運転タクシーを実現したいと発表しました。自動運転が実現されれば、運転手という職業も不要になります。事故や渋滞がなくなり、自動車保険も無くなるでしょう。さらに将来、車を個人所有することが不要な時代が到来するだけでなく、ガソリンスタンドも駐車場付の住宅も広い道路も不必要になります。土地の利活用が根本的に変化し、「まちづくり」が自動車中心ではなくなる社会が、極近い将来に到来すると、K先生は続けます。
何が起こるかわからない、そんな時代が来ても生き抜く人材を育てていかなければいけないと私たちは考えています。
保護者が未来の世界をイメージ出来ていない状態で、子供に闇雲に勉強しろというのはナンセンス。自分の子がどこの学校、塾、習い事なら成長できるのか、長所を伸ばせるのかを考えてあげなければいけない。「変わるべきは親」という強烈なメッセージを保護者様に投げかけられていました。
先生のあとに私はいくつかコンテンツがある中から「タイムマネジメント」について話しました。
時間は有限で、平等に与えられている中で成果を出す人とそうでない人がいます。
生涯で時間はどれだけあるでしょう?
24時間×365日×70歳 = 613,200
もし増やしたり、貯めたり、借りたりできないお金が生涯で¥613,200だけだとしたら使うときにかなり吟味するはずです。お金を捨てる人なんていないでしょう。しかし昨日の24時間のうち、捨てたに近い時間はどれだけあるでしょうか?
1日の中で人が好きに使える時間は限られていて、それを可処分時間と言います。
サラリーマンの平日における可処分時間は2.6時間と言われています。
例:24 - 睡眠(6) - 仕事(15) - その他(1) = 2時間
学生は約4~6時間
例:24 - 睡眠(7) - 学校(12) - その他(1) = 4時間
では生涯の可処分時間はどれだけあるでしょう?
学生の場合ですと、
¥613,200 ÷ 24 × 4 = ¥51,100
さらに今の年齢を引いて、人生の残りの可処分時間を出すと
¥51,100 ÷ 70 × (70-15) = ¥40,150
もしあなたの人生で使えるお金が¥40,150しかなかったとしたら、慎重に使うはずだと思います。
できるだけ好きな事をしたいし、好きな人といることでしょう。
時間をうまく使えるようになると、多くの経験を積むことができるということを伝えたかったのです。
効率よく勉強できれば、部活やバイト、遊びや新たなことへのチャレンジもすることができます。
そうすることで多くの選択肢から自分のやりたいことや、捨てるべきことを判断できるようになってほしいのです。多くのことを体験するためにはどうしても時間が必要なのです。
『体験を奪わないでほしい』
これは私が今まで言いたくても言えないことでした。現状、子供に夢を叶えてほしいと言いながらほとんどの保護者様が自分の思うとおりに子供を育てられているのではないかと思います。やったほうがいいこと、やってはいけないことを教え、レールを敷いてその上を走らせ、速度が遅ければ闇雲に叩く。躾は必要だと思います。しかしそれは違うのではないかと思っています。
多くの選択肢から自ら選び、自ら考え、自ら判断し、自ら反省しなければ経験値は得られないと私は考えています。
遅刻しそうだから保護者様が起こす、怪我しそうだから危ないことはさせない、受験校を選べないから選んであげるなど、好奇心を削ぐことや代わりにしてあげることを全部やめて、環境だけを用意してあげてほしいと思っています。
そうしないと成功体験も失敗体験も何もないのです。残るのは言われたとおりにやっただけという無責任な状態になるだけです。
「かわいい子には旅をさせよ」まさにその通りだと思います。そうしないと自分の人生を生きることなんて知らずに生きてしまうのではないかと思います。
成績が悪くなるかもしれないですが、ほっといてあげてください。
いつかやらなければいけないと気づくのですから。
怪我するかもしれないですが、ほっといてあげてください。
いつか危険かどうか判断できるようになるのですから。
言うことを聞かないですが、ほっといてあげてください。
いつかあの時はありがとうと言ってくれる日が来るのですから。
保護者会後の反省会(打上げということで飲み会を催していました)で、先生の話を聞いているとネクシィーズの近藤社長や、アンソニー・ロビンズを彷彿させられました、ということをお伝えしました。
先生は、どんな時でも講演当日は朝に発声練習と鏡の前で表情とジェスチャーの確認をされていて、その理由は『プロ』だからということでした。仕事のプロと言う意味でもあり、人としてのプロでもあるという意味だと私は解釈しました。最高の状態でいることが自分にとっても、関わる人にとっても最大のパフォーマンスを発揮できるということです。
続けて先生はGoogleの本社を訪問された時の話をしてくださいました。
Googleでは社員はもちろん、警備員の人でさえ常にテンションが高く、訪問した際はその棟の方たちが全員でお出迎えをしてくれたと。感動を与えるような振る舞いが日常化しているのです。常に「state(ステート)」が高いということです。
Googleの入社面接では「この候補者は、Googler(グーグラー)として相応しいか」と観られるのだそうです。Googlerとはムーンショットを考えられるかどうかということ。ムーンショットとは月面着陸のことで、未来から逆算して立てられた、斬新な、困難だが実現すれば大きなインパクトをもたらす「壮大な課題、挑戦」を意味する言葉です。
それはGoogleに勤めていなくても考えなければならないと思うのです。これからの時代を生きていくならもはや前提なのではないでしょうか。
では教育業界でのムーンショットとは何でしょう?
相方がよく「教育で世界を変える」と言います。
塾を一緒にやってほしいと言われた時からこの志はブレることはありません。
今思えば、私たちはムーンショットするために会社をやめたのだと思います。その当時は「やりたいことをやるため」という目的でしたが、今改めて宣言すると「自分がムーンショットする人材になり、さらに生徒たちにもムーンショットするようになってもらうこと」
教育業界でのムーンショットがどういうものか具体的に見えているわけではありません。
そもそも、自分たちで「教育業界」というふうにすでにエリアを限定してしまっていることが疑問です。
イノベーションとは既存の秩序の枠を破壊することで、枠の中でどれだけ突出したサービスを作れるかではないのです。
もはや「なんとか業界」というくくりがなくなる時代がすぐそこまで来ています。今までは異業種と思われる領域に手を広げて新たなるシナジーを発見し成功している企業はたくさんあります。
生徒たちがそんな時代で活躍できる様になるためのサービスを、最高の環境を用意しなければならないと私たちは考えています。
そのためには私たちがもっと成長する必要があります。
今日は日曜日。
テスト間近でもない限り生徒が自習に来ることはほとんどありません。
しかし、昨日説明会に来てくれた生徒の半数以上が自習に来てくれています。
保護者様に言われたからかもしれません。自発的に来たのかもしれません。
限りある時間を私たちと過ごすことを選択してくれたのならば、何か一つでも糧になるように全力を尽くすこと。
それが私達の使命だと再認識しました。
映画 『ザ・ムーン』より
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