早朝一斉勤務は成功するか?

何のために朝方勤務を推奨するのか?残業規制?時差通勤?残業代削減?実際には従業員の労働時間の増加になるだけだと思うけれど・・・・

最近朝方勤務を推奨する企業が出てきた。官公庁でも実施する予定だ。

朝方勤務については普通に私は良い方法だと思っている。朝は気持ちいいし、空気がきれい、電車は空いているし何せ頭もフレッシュだ。ブレークファーストも美味しい。すべての1日の開始は朝からだ。少なくとも夜勤をして迎える朝より、十分睡眠を取ったあとの朝の方が良いに決まっている。


でも朝方勤務を会社や国が強制するのはどうかと思う。なぜなら私の苦い過去の経験があるからだ。

早朝勤務を誰も喜ばなかった

大手IT派遣会社(新宿)度重なる残業に苦しめられた私は、率先して7時出社を開始した。定時では当然上がらず、いつも残業になってしまっていた。家に帰る時間は大抵9時を越えていた。そこで

「勤務が2時間早まれば2時間早く帰れるだろう。」

そう思い、家を5時台に出ることにしたのだ。そうだ、電車はこの時間ガラガラなのだ。運がよければ座れるし、7時に会社に着けば悠々とスタバのコーヒーとサンドを手にして仕事ができる。もちろんオフィスには誰もいない。

ついつい朝会で発表した。

「私は今週から早朝出勤を開始しました。残業を減らすため、早く帰るため、健康のため一石三鳥ではないでしょうか?」

みんなの拍手もあった。

3日目までは早朝勤務が定着した感があった。

しかし、4日後にあることが起きた。PCを除いていると会議出席依頼が飛び込んできた。

「木曜夜9時から会議を行います」

私はふざけるな、と思いメールを拒否した。毎朝5時に起きて会社に行っているのになんで9時に会議をしなければならないのか?

しかし出席依頼は何度も私のところに来た。しまいには「会議終了後・・・さんの送別会を歌舞伎町で行います。」とあったのだ。

冗談じゃない!!ついにメールを無視したのだ。

すると夕方、退勤の6時に取締役が私のところへ来たのだ。そして言った。

「なんで会議出席しないのですか?」

私は言った。

「夜9時という時間とその後送別会など尋常ではないプランに賛同しかねます。第一私は今早朝勤務しているのです。夜10時には寝てしまいますので。」

そう言うと、取締役は困ったような口調で言った。

「会社はね、君の都合なんて考えていないんだ。営業が帰ってくる時間は毎夕8時、会議が9時からやるなんて普通じゃないか?朝方勤務?君が勝手にやっているだけだろう?」

私は憮然として答えた。

「じゃあ会議出ますよ。でも・・・さんの送別会は出ません。よろしいですか?」

そうして早朝と夜の会議をしばらく続けていくうちにとうとう寝不足がたたり、翌週バタンと倒れてしまった。変な話なのだが健康(?)のために朝方勤務をやめざるを得なかったのだ。



当時私が朝方勤務をしたのは自ら残業をしないためだった。早めに上がればスポーツジムなどへ行きリフレッシュすることができる。しかし、朝方勤務をすることを会社は何も望んでいなかった。むしろそんな単独行動を認めたくなかったというのが会社側の言い分だろう。


早朝勤務をすれば早く帰れるとはいえない

昔日本の高度成長時代、東京や大阪の都市部の電車がひどい混み方で死人を出すまでになった時代、政府も重い腰を上げ企業に時差通勤を奨励した時代があった。その時に10時、8時出社時間を決めた企業は素晴らしいと思う。

いま話題の早朝出勤は、時差通勤奨励ではないと思う。ではなにか?

残業代の抑制と残業時間の削減だろう。しかし本当に残業時間削減は可能なのか?

ある朝方勤務を行った為に過重労働になり自殺した男性会社員の例がある。


男性は金融機関に勤務していた2005年、38歳で自殺。四国の支店から九州に転勤した後のことだった。四国時代は朝6~7時台に出社し、難しい融資案件や本店の指示に対応していた。

だが男性の上司は転勤後も残業の抑制を指示しただけで、仕事量を減らすことはなかった。男性は早出の分を残業として申告していなかったが、死後、遺族が早出分を算出。時間外労働が最長で月109時間あったとして労災認定された。遺族も会社を提訴し、2013年に1審の大阪地裁は会社に9000万円の賠償を命じている。


この男性と私の場合は、自主的に早朝出勤を行ったわけで会社が指示したのではない。会社が指示した早朝勤務というのは何か深い「裏」を感じざるを得ないのは私だけだろうか?


そもそもなんで早朝勤務を推奨するのか?本当に残業の抑制だけなのだろうか?時差通勤して鉄道会社の負担や社会の苦労を軽減しましょう、といえば良いだけの話ではないだろうか。


ましては「ホワイトカラー残業代ゼロ」を法案化してしまったアベノミクスが今度は公務員の一斉朝方勤務を推し進めるというのだからなんだか胡散臭い。


そもそも「残業」自体が人為的問題で生じるのだから徹底規制すればよいのだ。例えば私のいた中国では残業を野放しにしてやらせている経営者は刑事罰を受けることになるのだ。


今の労働安全衛生法についても、「残業が80時間を超えたら医師の診断が必要」なんて甘っちょろいことが書かれている。残業をさせすぎて御用産業医の診察を受けさせてなんの解決になるというのだ?

今度は「朝方勤務」でごまかそうとする日本の社会の体質を垣間見た感じがする。朝は会社は残業させたという観念がない。つまり「朝方勤務」を定着、固定化させ体良く社員を合理的に残業させようとする企業が増えてくる感じがする。


第一親の介護や子供を保育所に入れなければならない家庭はどうするのか?通勤事情で朝6時半からしかバスが来ない地域はどうするのか?これだけとっても課題だらけだろう?


早朝遊ばせて昼から勤務にすれば?


私の提案である。

本当に社員のメンタルを尊重するなら朝方勤務なんてものはやめ、「朝遊び放題」にしたほうがまだ社会の活力が生まれると思う。

朝からスポーツジム、健康ランド、温泉などに行き、午後から仕事をするなら何時まで残業しても構わないようにした方がよほど社員のためにならないか?(笑)

そんな馬鹿な?!と思う人が居ると思うが、少なくとも長々と残業してその後居酒屋に入り上司や会社の悪口を言いまくり「ちくしょー」と叫び終電で帰り二日酔いで出社するよりはるかに健康的だ。


一度国会で検討してみてはいかがだろうか?


なぜ会社に行かなければならないのか?


私は長年この課題を考え続けてきた。会社に行かなければならないような仕事(研究職、工場、IT)ならば会社に行くべきだろう。でも普通の事務のバックオフィスなら家で仕事しても同じだろう。面倒な「個人情報管理」なんてものがあるから会社にいかなければならないのだ。

21世紀型の働き方は「高バリュー、短時間労働、社会貢献」だと思う。つまり長々だらだらあの西新宿の非人間的なハコモノの中で嫌な奴と顔付け合わせて仕事をする必要がだんだんなくなるのだ。

短時間で契約をまとめ、高い価値を生み出し、社会貢献に注力する企業がこれからは伸びてくるだろう。すなわち「朝方勤務」なんてやり始めるような会社や団体こそ「オールドエコノミー」化していくのだ。


第一会社も社員にバカ高い通勤費払わなくなるだけ経費削減になるではないか?営業交通費だけ使いその分は電子決済で行う。家=外出先の往復だけでいいのだ。


来年就職活動される学生に言いたい。こんな朝方勤務を推奨する会社は胡散臭いと思ったほうが良い。

「当社は朝7時出社、もちろん早朝手当も出ますし、朝ごはんもビュッフェで食べ放題ですよ。夢のような会社でしょう!ね?」


こうした会社は十分注意したほうがよさそうだ。学生さん!




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