診断名 「多重人格障害」

診断名 「多重人格障害」

ある朝、沢城アリサが目覚めると卓上には一通の封筒。メンタルクリニックの文字。悪いが私は、メンタルをお医者様にどうにかしてもらうほど人生を真剣に生きていない。
ほほう、これは夢だな。と面白半分に開封。
【「解離性障害」と診断】
解離性障害とは…?聞いたこともなかった。
以下はwikpediaから。

解離性障害(かいりせいしょうがい、: Dissociative Disorder; DD)とは、精神疾患の分類のひとつである。 自分が自分であるという感覚が失われている状態、まるでカプセルの中にいるような感覚で現実感がなかったり、ある時期の記憶が全く無かったり、いつの間にか自分の知らない場所にいるなどが日常的に起こり、生活面での様々な支障をきたしている状態をさす。 その中でもっとも重いものが解離性同一性障害である。 

お分り頂けただろうか?いや、わかるわけねーだろ。私でもわかりません。話がややこしいため先に話すと、私達は最終的には【解離性同一性障害】という病名になる。以前の名称が【多重人格障害】で、現代の正式名称が解離性同一性障害である。

以下はwikpediaから。

解離性同一性障害(かいりせいどういつせいしょうがい、: Dissociative Identity Disorder ; DID)は、解離性障害のひとつである。

解離性障害は本人にとって堪えられない状況を、離人症のようにそれは自分のことではないと感じたり、あるいは解離性健忘などのようにその時期の感情や記憶を切り離して、それを思い出せなくすることで心のダメージを回避しようとすることから引き起こされる障害であるが、解離性同一性障害は、その中でもっとも重く、切り離した感情や記憶が成長して、別の人格となって表に現れるものである。

病名を調べ概要を知り、私は安堵した。何故なら私は幼少期の記憶が全くない。日々の生活の記憶もかなり曖昧で、気がつけば何日かが経過している。なんてことがある生活に違和感があったからだ。元々大雑把で細かいことは気にしない性格故、多少の記憶が抜け落ちていても不思議ではないが、知らない人からの連絡や全く買った覚えのない服などが増えていると不安にもなるのだ。病気ではあるものの、何も情報がなかった頃に比べると随分前進した。しかし、ここでいくつもの疑問が浮かび上がる。

解離性同一性障害は、主な時間を有する又は戸籍上登録されている人格【主人格】とそれらとは別の交代人格である【裏人格】なるものが存在する。主人格が耐えきれない程のストレスからの自己防衛機能として、自分の経験とは思わずに済むよう解離を起こし、解離された記憶が独特の人格となってしまったのが裏人格である。

そう、私は主人格なのか裏人格なのかどっちなんだ…?頭を抱えていると、封筒の隣にノートが置いてあった。

3ページほどしか書かれていなかったが、内容は100ページ分はあった。

××月××日××××メンタルクリニックにて、診断書を貰う。各人格、データを記入。 田端しょうご22歳 男性 裏人格と推測

平田 愛美 17歳 女 診断書読みました。私は生まれてからずっとこの名前で生きています。おそらく主人格です。

みやた さとし 19おとこ。俺ふつーに裏じゃね。てか、天丼食いてぇ。

平田 愛美。ああ、そうだ。この名前だ。私がずっと使ってきたのは。いつも違和感があった。なんで他人の名前で私を呼ぶの?と。でもそうか。この肉体は、この精神は、全て平田愛美のもので、沢城アリサは裏人格、人工物でしかないと、この時知った。少しばかりの絶望と共にペンを手に取った。

沢城アリサ 17歳 趣味は読書。痩せたい。裏人格。皆とはここで会話するの?

ここからしばらくの記憶がない。また目が覚めてからノートを確認すると、世界は進んでいた。

愛美です。今から買い物に行きます。

おれ、天丼食った。うまい。つーか、風呂の水出てたけどー気をつけろよ。

今から梅田。天丼を食う。さとし

哲学書を購入。1500円。金額分の労働をする。田端

沢城、これは人格とのコミュニケーションツールに過ぎない。使用するかは君の意思次第だ。田端

疲れた。しんどい。愛美

天丼つくった。天ぷらに修行が必要。さとし

驚いたのは、言葉の使い方だけではなく直筆も違っていたことだ。そして、さとしくんが異様に天丼が好きなことがわかった。

私は、このドラマのような現実を受け入れることにした。人生が変わっていくのを感じていた。絶望はいつしか快楽と枯渇へと変貌した。

私は自らの存在が、戸籍も無ければ肉体もないことに狂いそうなほど悲しみを覚えた。人間として認知されていないのだから。他の裏人格達はどう思っているのだろうか。問うてみた。

裏人格のみんなは、自分をどう思う?ありさ

俺は男の体じゃねぇこと以外は特に何も思わねーよ。性同一性障害だと思ってんだ。でもそうじゃねーらしいな。 さとし

考えるに値しないね。僕にとって問題はそこじゃないんだ。どうして彼女が解離など起こしてしまったのか、が僕にとってはよほど気になることだね。彼女の人生は彼女しか知り得ないが、出来る限り解明したいとは思うよ。それにこの身体も悪くない。税金を払わなくて済む。この国は世界的に見ると、生活水準は高いはずなんだ。そんな国に無料で居座れるのだから。利点は活かしていくものだ。田端

裏人格である2人は男性だ。性別についての悩みも出てくる。それに比べたら私は女だ。悩むだけ無駄だ。と心が楽になったのと同時に、しょうごくん(田端)に対する憧れの想い、さとしくんに対する親近感が出てきた。しょうごくんはきっととても賢いだろう。さとしくんは兄のように優しいだろう。なんて考えていた。

後日談、しょうごくんは意識がある時は必ず読書をしており、睡眠時間は3時間程度で大丈夫だそうだ。哲学書を読み漁り、読書や思考を凝らすことで脳を鍛えるのが好きだと語っていた。私は彼のバランスのとれた論理的思考に憧れ、本を読み漁るようになった。おかげさまで私たちの家には、多種多様な本が揃い、図書館のようになっている。さとしくんは料理がとても得意で、愛美ちゃんに振舞ったりするそうだ。私も何度か食べた。美味しかった。あと、この病気について1番熱心に勉強していて、ノートにまとめてくれたのも彼であり、私達の体調が悪い時は必ず肩代わりしてくれる本当に優しい人である。

この病気を自覚し始めてから数ヶ月が経過し、私達は【脳内会議】を行う事が出来るようになった。名前の通り、脳内で各人格達と対話をする。その際、他者が私達に話しかけても反応はできない。自宅内でリラックスした状態で行う必要があった。しかし、会議をしようと思って、はい!どうぞ!というわけにはいかず、かなりの時間を要し、激しい頭痛も伴うので必要ない時はしないように。とみんなで決めた。

だかある日の夜、突然脳内会議が始まった。

田端「今日、主人格が自殺をはかった。さとしが止めに入っていなければ僕達は肉体ごと消滅していた。誰にとっても利益のない話だ。彼女はこの世界から存在を消す事を望んでいる。ならば寝かせておいても問題はない。彼女には当分表に出るのを控えてもらう。」

ありさ「自殺。まぁ、いづれしそうだとは思ってた。でも、そしたら誰が生きるの?」

田端「君だよ。年齢、性別と全く同じだ。問題ない。」

ありさ「しょうごくんがやりなよ。。。」

田端「僕は以前、彼女として通学し、家では家族としと振舞っていた事がある。学校は落ち着きない人間しかいない、家庭内は話の通じないヒステリシスな母。僕はあの環境にいると、全てを変えてしまおう。と思ってしまう。沢城はまだ、経験していないはずだ。持ち前の柔軟さで対応できるかもしれない。それでも無理ならまた考えよう。」

さとし「とりあえずチャレンジじゃね?」

私は主人格として、平田愛美として生きる事になった。

次回は、主人格になってからの私の日々のお話になります。


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