何度後悔しても懲りないバカの半生の話(4)

今にまで受け継がれる”呪縛”


呪いの言葉を告げられたのは、この小学生の頃だ。

正確には母親づてに聞いた一言なのだが、それですら、後の僕に重く圧し掛かってくることになる。


その言葉を<呪縛>と、僕はそう表現する。


怨嗟渦巻く呪いものの映画よろしく、そう簡単に打ち破ることが出来ない。

確かに打開する方法は無きにしも非ず、しかして、それをするのが困難だと感じる。

大仰に前置きしたが、呪いの言葉というものは、本当に何気ない一言だったのだ。


「○○君は、何をやっても中途半端ですねぇ」


とても良い先生だったH先生のその言葉は、恐らくだが工作をさせたり絵を描かせても、完成途中で投げ出してしまう僕の性根の部分を指して言ったのだろうと思う。


中途半端。


当時の僕自身はどうとも思っていなかったその言葉は、鋭角に襲いくるボディーブローだった。

二十年越しほどにも遅れてやってきた衝撃は、今の僕自身にとても鈍い痛みをもたらす。


仰るとおり、大正解。

何をやっても中途半端なんです、僕は。


仕事面では一度も正規雇用された経験がなく、バイトスタッフの中核止まり。

ニートから電気工事のバイト、それをバックれて、派遣のライン工は長続きした。

5年ほど務めたアルバイトでも、社員雇用の話が来たものの、自らそれを蹴る。


「まだその器じゃないかと思いまして」


普通自動車免許を取得していない自分にとっては、その職場では最後のチャンスだったはずだ。

自信がないというのは方便で、本当は、<責任のある仕事をしたくない>というだけだった。

まだ、多くのアルバイトスタッフの中に紛れて、中途半端な立場で居たかったのだろう。


生活の基盤となる仕事が中途半端なのも当然で、僕は趣味ですらが何一つも完結させたことがない。


当然の事ながら、それらは多岐に渡る。

絵、小説、楽器、プログラミング、Web作成、動画製作など。

パソコンを使ってできるような趣味だけでも、これぐらいだろうか。


この中で作業に心血を注いでいたものもあるにはあるが、何かに目移りしたか、はたまたそれが頓挫した後に、新たな作成計画を立てたところで、再びそれが走り出したことはない。


色々経験はしている、しているものの、そこから何かを得ていない。

上っ面だけをすくい取り、大事な部分を自分の肉にできていない、生かせていない。

激しく後悔した思いからさえ、経験として学び取り、学習しないのだ。


そう考えると、今書いているこの文章すらが、誰かの受け売りにも思える。

自分でも気づかぬ内に、顔も知らない誰かの言葉を、自分の言葉として発信しているのかも知れない。


タイピングは早い、けれどExcelのグラフの作り方はよく知らない……

ドローイングソフトはインストールした、けれど描きたいものが無い……


こういう事が、自分にはあまりにも多すぎると、最近になってひしひし感じるようになった。

そこへ、H先生の言葉が<呪縛>として付いて回るのだ。


「○○君は何をやらせても中途半端」


自分に自信を持てないタイプだと自負している。

オブラートに包んで言えば器用貧乏、そうでなければただの半端者だ。

胸を張れるような実績もない、芯の通った何かを持たないというコンプレックスが、僕を萎縮させる。

歳を重ねる度に弱くなっていく自分を、虚しく思うばかり。


単なる被害妄想なのかも知れない。

だけど、僕自身の精神的な弱さや、実行力の無さ、何よりこれまでの悪しき実績。

それらが僕のネガティブな部分に直に触れて、呪縛の効力を後押しする。

ただの言葉が呪いとなって降りかかり、半端者の僕を打ちのめすのだ。


いつだって、一番にはなれなかった。

どこにいても、中心にはなれなかった。

何をさせても、本気でのめりこむことはなかった。


思い返してみれば、「あぁ、そうだな」と思う。


その呪縛を打ち破る方法は、本当は僕自身解っているはずなのに。

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