(10位)文系人間に、数学講師ができるのか?
文系人間に、高校数学講師ができるのかに関する一考察
1、問題意識(1)
日本においては、高校で文系コースと理系コースに分けて進路指導をすることが一般に行われている。受験科目が異なるために当然の措置とされている。
具体的には、
「数学の点数が取れるか否か」
により、文系か理系かに生徒たちを分けることが多い。いくら理系を希望しても、数学が出来ないと志望校に合格することは難しいからだ。
筆者自身も、高校1年生までは理系志望であったが「数学、理科、英語」の理系総合点より、「英語、国語、社会」の文系総合点の方が点数が高いために文系に転向した。
文系科目の組み合わせなら難関国立大に合格できる可能性があるが、理系では難しいという校内テストや模試の結果を受けてのことだった。
そして、名古屋大学教育学部に進学し塾や予備校の英語講師として20年ほど勤務したが、
「18歳の時点で文系人間と判定されたが、正しいのだろうか」
という問題意識が残った。
「人生は好きなものより、得意なもので生きていく」
そういう人生観が正しいのだろうか。
これが、この考察の問題意識だ。
問題意識(2)
第一段階として、定評のある問題集を調べた。ネット情報のほかに書店に並んでいる数や塾生の子たちから情報を集め
1、オリジナル(研数書院)
2、チェック&リピート(Z会出版)
3、1対1対応の演習(東京出版)
を使用することにした。エール出版の合格体験記などを見ても、よく使用されていることを確認した。これらの教材の有効性に関しても、塾講師として確認しなければならなかった。
2、研究方法
京都大学を実際に6回受験してみて、成績開示をする。その際、最初の2回は「オリジナル」、次の2回は「チェック&リピート」、最後の2回は「1対1対応の演習」を使用した。
その結果の平均値を比較することにより、文系人間に分類された英語講師が京大レベルの数学が合格ラインを越えるられるのかを検証する。年度による難易度の差、学部により採点者が異なると思われるので、そこも考慮して考察してみる。
高校を卒業して30年を経過して50代での受験となるため、ほぼゼロからのやり直しとなった。
3、調査の実施
平成18年、20年(文学部) 正解率の平均 33%
平成21年、22年(教育学部) 正解率の平均 39%
平成23年、25年(総合人間) 正解率の平均 64%
最高が70%であった。京都大学のボーダーラインは医学部以外65%程度なのでボーダーを越えたと判断した。
4、結果の分析と考察
この結果によると、サンプルが7個では有意差の検定が出来ない。しても、意味がない。また、
「年度、学部による難易度、採点の厳しさの違い」
などの変動要因が考えられて、単純に「ボーダーを越えた」と結論づけられないかもしれない。
しかし、この調査結果と
「理系(数学3を含む)の京大志望者を指導するのに困らない」
という指導経験からみて、ボーダーを越えたと考えてよいと思われる。日々の授業で、京都大学に合格していった生徒の指導に困ることはない。
5、結論
受験指導をしていると
「英語はともかく数学は才能だなぁ」
と思うことがある。それが世間の常識になっている。しかし、「職業として理系に進む」ということと「受験のための高校数学が出来る」ということは異なるのではないか。
それが今回の研究目的であったが、結果を見ると
「高校数学は文系に分類される子でも京大レベルまで伸ばせる」
と言える。ただし、高校3年間で可能かどうかにおいては別の検証が必要だろう。
6、今後の課題
本当ならば、理系を志望する子を数学の得点で文系に分類することは時期尚早の可能性がある。指導方法の改善、および適正判断の方法など研究の余地がありそうである。
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