あのときのホットケーキ

大学浪人したときに、予備校の側に小さな商店街があって、そこを通って通学していた。


そこの途中の2階に小さな喫茶店があって、店の名前はニューヨーク。狭くて少しカビ臭くて。


古臭い純喫茶だった。






何でそこに行ったのかわからないけど、疲れてお金が少しあると、たまにそこの小さな1人席に座って、ホットケーキとコーヒーを頼んだ。


ホットケーキはアイスクリームが乗っかってて、あったかいホットケーキに冷たいアイスクリームが溶けると、それはとても美味しかった。それに、濃くて苦いコーヒー、言うことなしだった。






慣れないフォークとナイフをカチャカチャしながら、夢中でホットケーキを食べているときだけ、先に向かう不安も、小さく壊れそうな心も、ちょっとだけ軽くなる気がした。


だから、今でも街にふっと取り残されているようなとき、ふらっと喫茶店に入って、年甲斐もなくホットケーキ、今はパンケーキらしいけど、を頼んでいる。





でもね、これがねえ、違うんだよね、やっぱり、あのときのホットケーキとは、違うんだね。


だから、いつも、たくさん残してしまうんだよね。


ごめんね、あれはあれなんだよね。


分かってるんだけど、そういうときもたまにあるだけだから、本当にごめんなさい。

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