内定が決まってた。

大学4年生の頃、某出版社の学習教材を売る営業部に内定が決まっていた。
営業する対象は中学生。内定直後、さっそく、研修に出かけた。
みんなにあったかい紅茶が出されて(うれしい)、なにがはじまるのかと思いきや、
「さあ、みなさんが相手にする方は中学生。中学生の感じに一日でも早く慣れて頂きたいので、私が、中学生の演技をしますから、話しかけてください! 最初は、私の隣にいる、社員に相手をしてもらいますので、続きを、あなたたちがやってみてください。」
と、元気な社員の人が、中学生のマネをはじめた。
「えー、うん…別にェ~」
と、いきなりだるそうでたまらない中学生のマネをはじめる社員さん…。
「それでは、一番うしろのあなたっ!」
と、社員が内定学生を指すと、
その学生が、
「●●くうううううん!! こんにちわあああ!」
と、いきなりナレーターコンパニオンかというくらいの作り声で話しかけ始めて、私は心底ドギモを抜かれた。
ヤバい…、なんか、ヤバい…
みんないきなりこんなことやらされるなんておかしい…
ていうか、なんでこんな声すぐ出せるんだ…
これって仕事なのか…
俺、監獄に入れられる…
タスケテ…
それから、顔をまったくあげられなくなってしまったので、
紅茶を飲むふりをして、そのまま顔を伏せていた。
いままでの人生で、これほど紅茶と自分が仲良くなったと思ったことはなかった。
というか、もう、ほぼ紅茶にしがみついて、その場に存在している、といってもよいほどだった。
「…どうしたのかな~?」
と社員の人にネコナデ声で聞かれた…。
「いえ…あの…気持ち悪くて…」
と、とっさに謎の言い訳をしてごまかした。
ああ、絶対嫌だ、こんな人間じゃない職私には絶対合わない、どうしようどうしよう、って思ってたら、
体育の単位落として留年して、
1年学んだのち、エロ本の編集者になった。

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