女優にインタービューで絶体絶命!?全ライター必見の最強テクニックとは?

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女優へのインタビュー当日、目覚めたら愕然とした。一瞬で青ざめた。努力がムダになったと思った。



歴史的な大雨だったのだ。外で撮影なんて不可能。


電車は遅延していた。何時とまってもおかしくない。ゲリラ豪雨がずっと続いているような状態だ。最悪だった。



当時、僕はフリーランスのライターで独立して東京にきたばかりだった。上京してからおのぼりさん的な休日のすごしかたを何度かした頃、以前に勤務していた会社の社長さんから某女優へのインタビューの依頼がきた。


社長はライターのイロハを教えてくれた恩人で、いまでも尊敬している人物だ。大学の先輩でもありライターの大先輩でもある女性社長だ。編集プロダクション時代に出来損ないだった僕にいろんな経験をさせてくれた。世間知らずの生意気な男をたいせつな取材に同行させてくれた。女性だけの事務所で初の男性社員、初の新入社員だから特別サービスだったのだろう。


転職をしてから疎遠になったこともあったが、恩人からの仕事はうれしかった。しかも今回は全国的に知名度のたかい若手女優へのインタビューだ。地元・兵庫県で創刊する雑誌の第一回目の表紙だった。テレビや映画でも大人気で、インターネットではまとめページが乱立している。ネットニュースでネタにされることも多い。映画はアジアでも上映され、今では海外でも人気。ベテランの風格さえある芸能人である。僕は焦った。噂ではプロ意識がたかいらしい。批判的な記事もみつかった。


強面の社長をなんども取材してきたとはいえ、別次元の圧迫感を感じていた。


しかし失敗は許されない。仕事をまわしてくれた社長の顔を潰すわけにはいかない。最高の結果で恩返しするのだ!僕はつよく決意した。


休日はすべてロケハンをした。カメラマンの相性もチェックした。取材・インタビューの仕事とはいえ、読者は写真に注目する。最初は女優の顔、美しさ。テキストはその次だ。最重要ポイントは彼女の魅力をひきだすこと。ロケハンは野外撮影を想定してのリサーチだった。事前の準備がすべてを制する。自信につながる。それこそ大先輩の女性ライター社長から学んだことのひとつだった。



さらに僕はとっておきを仕込んでいた。徹底したイメージ戦略だ。かっこつけてお洒落な姿で取材をするのではない。ボクサーにはシャドウボクシングという練習がある。対戦相手の動きをなんどもイメージして、試合で理想の動きを再現できるようにするのだ。僕は普段から大切な仕事では、このノウハウを実践していた。



「自己プログラミング」



自分をイメージ通りに動かす方法。吃音症で挙動不審になりそうでも、極度の緊張で心身衰弱状態でも、プログラムを組んだロボットのごとく寸分違わぬ行動をする。普段なら決してできないことを、緊張をすることもなく実行するために編み出したとっておきの方法だった。


僕は自己プログラミングを徹底的に仕込んだ。目標は女優と握手をすること。第一声をスマートに伝えること。僕の役割は彼女の最高の笑顔を撮影してもらうこと。読者がよろこぶエピソードを引き出すこと。最高の聞き役になることだ。


自己プログラミングは強面の飲食店オーナー、外資系ホテルの外国人シェフにも握手することができた方法だ。面倒だし根気のいる地味なノウハウだ。しかし、絶対の自信があった。しかも、今回は女優の地元で発行される本である。取材の内容もわかりやすい。



正直なところ彼女の活躍はまったく知らなかった。なぜなら僕はテレビをみない。仕事に集中するためにテレビを断捨離したのだ。そんな時に舞い込んだ仕事である。パソコンがあれば情報はでてくるけど、出世作になったテレビドラマも映画もみていない。彼女が出演するテレビ番組・ドラマの宣伝が目的のインタビューだったら完全アウトだったかもしれない。


しかし、今回は彼女の地元・神戸。しかも僕もホームグラウドにしていた阪急沿線のローカルエリアが対象だ。こじんまりしたパン屋さんから商店街のコロッケ屋、JRの高架下から阪神電車までのルート、沿線にあるお好み焼き店まで知っている。



第一声はすぐに決まった。


挨拶 ⇒ 握手 ⇒ 取材の説明



ノートに一挙一動を箇条書きにした。それを100回くりかえした。丸暗記して頭に叩き込む。同時に、身体で再現を繰り返す。100回書いて、丸暗記して、理想のうごきを100回再現するのだ。目の前にひとはいない。大きなミラースタンドにうつる自分をチェックする。動きに違和感がないか?最初はロボットのようにぎくしゃくしたスローな動きだ。それを次第にはやくしていく。


心のなかで3カウント。その間に視線を定める。足は右から歩きだす。顔の筋肉を動かし・・・、目の前に近づくまでの歩数と歩幅、腕を上げるタイミング、腕を上げるまでに何本の指を開くか?第一声を発する前に一回だけ鼻呼吸をする。そして口角を持ち上げて笑顔をつくる。左右同時だ。そして口を開く。最初は上唇の筋肉。同時に下顎をさげて口をひらく。そして魔法のフレーズの一文字目をしゃべるための口の形にする。第一声を発するまえに口の形をつくるのだ。これで吃ることはない。最初の文字は決まっている。カ行の「き」だ。


自己プログラミングを繰り返した。お風呂あがりも実践した。全裸でも挨拶した。握手しまくった。鏡にうつる笑顔が自然になっていく。最強のイメージトレーニングが100回を超えた頃、僕のなかで若手人気女優へのイメージが変わっていた。



しかし・・・


目覚めたら愕然とした。目を覚ました瞬間に青ざめた。歴史的な大雨だったのだ。


ロケハンはすべてムダになった。時間も費用もあらゆるシーンを想定して、仕事の合間をぬってインタービューする女優の「最高の顔」を撮影するためダケに費やしたことはすべて再現不可能になった。


正直、カメラマンと合流するまでの記憶がほとんどない。この日のために磨きあげた革靴は諦めて、スニーカーに履き替えて、雨でも失礼がないギリギリの服装で取材に向かった。大雨の影響で電車が遅れていたので随分はやくに自宅をでた。


絶体絶命だった。しかし、幸運にも時間が味方してくれた。冷静さを取り戻したのだ。


カメラマンと合流したとき、すでにマネージャーとの相談は終わっていた。


屋外での撮影は不可能。事務所のなかで撮影できるスペースがあるらしい。そこでインタビューと撮影をして欲しい、と。今日は他の取材もすべて予定変更で同じ場所にしているらしい。


カメラマンは慣れているとはいえ、ここまでの雨は予想していなかったらしい。


芸能事務所内での撮影になったと聞いたとき、安心したようだった。外での撮影よりも簡単で、スタジオ撮影のようにたくさんの表情を決めどりできるとよろこんでいた。


その一方、僕は緊張が高まっていた。初めての芸能人インタービュー。若手ナンバーワンの人気女優。ネットの噂ではプロ意識がたかくて生意気らしい。10代で地方から上京して人気はすぐに火がついた。透明感のある美貌、圧倒的なカリスマ性で人気を集めた。20歳ですでにトップクラス。美しく、演技力にも評価がたかい。インターネットには熱狂的なファンがまとめサイトをつくりまくっている。


しかし、豪雨は緊張すら流してしまうほどの勢いだった。最悪のことを考えて、階段での撮影もできるのではないか?とカメラマンと相談しているときには、緊張する余裕もなくなっていた。


すべては読者のために。彼女の素晴らしさを引き出すためにはどうすればいいか?頭のなかはそれだけでいっぱいだった。




その瞬間はやってきた。芸能事務所の玄関前に立ったとき僕は不思議な感覚に陥った。


右手を上げて、ドアノブを掴む。右にドアノブを回して扉を開く。カメラマンが荷物を入れやすいように出来るだけ大きくドアを開いたあと、右足から玄関にはいる。


事務所内は明るく、キラキラしていた。清潔感のあるソファとガラスの机がある部屋に、僕とカメラマンは案内された。つい先ほどまで別の取材があったらしい。悪天候のためすべての取材は予定変更。おなじ場所で行われていた。


(きっと飽きているだろうな・・・。)


女優のモチベーションが心配だったが、そこはプロ意識がたかいはず。ネットの評判を信じてみた。


目の前にはマネージャーしかいない。カメラマンは照明をセットしている。準備は完了。いつでも撮影できるようだ。



その瞬間、マネージャーが口を開いた。



「それでは登場です。」

マネージャー
それでは登場です。




カメラマンの後ろのカーテンがさっと開いた。驚いた。女優はずっと背後にいたのだ。ソファのほうしか意識していなかったので気づいていなかったのだが、ソファーの対角線上にいたカメラマンの後ろはガラス張りのメイクスペースだったのだ。女優はそこでスタイリスト担当とメイクやヘアスタイル、洋服のチェックをしていた。はじめからスタッフのみなさんと待機していた。カーテンで仕切られていて気づかなかった。僕にはまったくの予想外だった。



カーテンが開いた瞬間、彼女は現れた。綺麗だ。何度もパソコン画面でみた顔だ。美しく整った顔。女性らしいボリュームのある髪はすこしフェーブがかかり女性誌のモデルのようだった。顔が異常に小さくみえる。目が大きい。透明感がすごい。きらきらしている。そして、思っていたよりもスリムで小さい。当然だ。テレビやスクリーンのなかではどんなひとでも大きく見える。ご対面すればリアルなのだ。20代・身長163cmのすらりと美しい女性がそこにいた。



僕とカメラマンの前をふわりと通りすぎた彼女は、ソファの前で振り向いた。



その瞬間、プログラミングが発動した。身体は自然と動き始めた。女優と目が合う。足は右から動きだす。どうやったか覚えていないほど自然に腕があがった。口の形は例のやつだ。同時に、彼女の温もりが右手に伝わってきた。


やわらかな温もりが脳に達したとき、僕は魔法のフレーズを解放した。



「今日は地元自慢をしてください。仕事とは思わないで世間話をしてください。あなたの地元のコンビニで売られる本なので、お友達が喜びそうなことがいいですね。例えば、あそこのパン屋のクリームパンが美味しいとか、お好み焼き屋に家族といくならココとか・・・。」



100回以上をくりかえした言葉が、吃音症などもろともせず自然と口からでてきた。



女優は思わず目を見開いた。予想外だったのだろう。

まさかの「仕事禁止令」だ。取材が仕事じゃないなんて普通じゃありえないのだから・・・。



驚いた表情のあと、そっと手が離れた。



彼女の目が変わった。



それはスクリーンのなかでも、テレビでも、雑誌でも見たことのない、


天使のような微笑みだった。




最後までお読みいただきありがとうございました!^^


僕もあなたの物語を読ませていただきます。

「読んでよかった」から後ほどお伺いさせていただきます。


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坂田 光靖

あなたの潜在覚醒スキルを高める専門家。個のエネルギーをたかめて人間成長を目指す中小零細企業の経営者やリーダーの潜在覚醒シンクタンクを運営。混沌のネット時代。潜在覚醒スキルで隠れた人格と才能を開花させよう!ブログではあなたの才能を引き出す23冊の必読本リストをプレゼント。HP:http://t-ok.

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