リアルな「ガウディ計画」の話 〜終わりなき人体実験〜

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もう少しで終わりに近づくのでは、、、と思っていたんですが、ここに来て書き忘れている内容を幾つか思い出しました、、、。書くべきかやめるべきか、、、。とりあえず続きを書きます。


 無事に第1症例目の人体実験が終わり、患者さんに何かトラブルが起こるのでは?という不安は抱えつつも、作った製品を患者さんに使用することでトラブルが起こるということがなかったことは、ほんの少しですが私にとって心を軽くしてくれました。

 だからと言って、すべての不安がなくなるわけではないので、オペがの前日の夜はほとんど眠れず、毎朝の願掛けの神社参りを欠かすこともできない日々は続いていました。

 「あと14症例」「あと13症例」毎回オペが終わるたびに自分にそう言い聞かせて、もう一つの期限である「3ヶ月の期間限定」ということもあり、期限が迫ってくると「あと5週間」「あと4週間」と考えていました。


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 ここでほんの少し記憶が曖昧なところがあるのですが、『リアルな「ガウディ計画」の話 〜動物実験と学会発表編〜』からの話の流れで、アメリカで散々な目にあった学会発表以降に人体実験の計画が進められた様に書いていますが、ここに来て記憶違いでは???と思う様になってきました。

 というのも、自分の記憶を整理しながらこの物語を書いていく中で、少なくとも人体実験の1症例目は学会発表前に実施し終えていた様な気がして仕方がないのです。

 こういう事態を引き起こしているのも、過去の記録を見て話を書いているわけではなく、すでに退職してしまった会社での出来事を記憶を頼りに思い出し思い出ししながら書いているので、タイトルに合わせた内容で話を書こうとするとどうしても時間軸がずれていく様です。

 と、ここまで言い訳をしてきましたが、それはこの後の話のストーリに続いてきます。

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 どう考えても残り日数で、残りの症例数を終了させることができない、という事をなんとなく考え始めた頃に、未消化な面が結構残りますが一応「人体実験」が終わるという事を確認するために、社長と二人でお医者さんのところへ行きました。

社長
先生、人体実験の方ですが、、、
お医者さん
あぁ、あれね、倫理委員会に話して症例数を50症例まで増やすことにしたから。
社長
!!!
!!!
社長
先生そこまでやる必要がありますか?今更症例数を増やすことになんの意味があるんですか?
お医者さん
学会発表のこともあるけど、15症例くらいで成功だと言っていてもこの世界では認めてもらえない可能性がある。
 なんせ「ライト兄弟が飛行機を飛ばした」と世間が喜んでいる様な中で、「スペースシャトルを作って飛ばしました」と言っても誰も見向きもしてくれないでしょ?
 だったら、きちんと有効性を認めてもらえる最低限の症例数として厚生省の認可を得られるだけの症例数である50症例までやっておく方が、世間に認めてもらいやすいと思うから。
社長
、、、でも、この製品をこのまま弊社で生産して販売することは無理ですよ、生産工場もないですし。
お医者さん
そこまでは考えてないよ。あくまで数字の根拠として認可が得られる症例数と言っているだけで、実際のビジネスの話は社長さんの方で進めてくれればいいんだから、とにかく、50症例までやるからね、今回は終わるまで続けるから。

  この一言で、終わると思っていた人体実験が無期限で日本国内合計50症例まで実施されることが決まりました。よく言われますが、すごろくでゴール手前で『振り出しに戻る』を出した気分です。しかも、同じすごろくではなく難度がさらにアップしているすごろくにまで飛ばされています。


 そしてこの日以降のオペは、さらに私を恐怖へ陥れる様になるのでした。

 何度も書きますが、私が作った製品は厚生省の認可を得ていない実験用の試作品であり、同様の商品をすでに販売している大手メーカーの製品と比較して、安全性の面で安心できるとは言い切れないものでした。そのためこの時までこの製品を使用した患者さんの病変部分は、他の製品を使っても問題が出にくい様な病変、つまり『良い結果が得られて当たり前』という様な病変ばかりでした。

 しかし、これ以降のオペでは、大手メーカーの製品と同じ様に対象となる病変全てに使用される様になり、しかも『一人の患者さんに対して1つしか使わない』という約束も、お医者さんの判断で『問題なくいける』となれば、複数個使用される様にもなりました。

 15症例を無事に終了させようという考えが強かった時期に比べ、50症例まで増やすという判断を下した以降は、既に販売されている大手メーカーの製品と同じ様な扱いで使われ続ける、、、つまり、ここから先のデータは人体実験と言いつつ通常の臨床データと同じ状況下でのデータ取得になるのです。

 当然失敗する可能性も格段に増えます。

 実際これ以降の人体実験で、『アレスト:心肺停止状態』つまり心電図の波形が画面いっぱい真っ直ぐになる、というかなり危険な状態も目の当たりにすることになります。(幸いその後リカバリーはキチンとでき患者さんには何の影響もなしで終わりましたが)


 怖い経験、喜ばしい経験をいろいろ積み重ねながら、国内での症例数を重ねていく、、、押しつぶされそうな人の命を左右する製品を作っているというプレッシャーと、作った製品の思った以上に成績が良く若干天狗気味の自信が芽生え始めてくる、、、これがその後の私に訪れるいろいろな出来事の付箋となっていくのでした。(それはまた後ほど、、、)


 それはさておき、国内症例数もかなりの数をこなしてきた頃に、社長から意外な話を持ちかけられます。

社長
ちょっと良いか?
どうしました?
社長
イタリアに行って、この製品を使用するぞ?
ど、ど、どうしてですか?
社長
(共同開発者の)お医者さんの知り合いのお医者さんがイタリアにいるんで、そこに行って海外でも人体実験するぞ。
なんでですか?
社長
日本以外でも実績を作るため
(イヤイヤ、それでも何のためか全くわかんないですけど!)

何にせよ、理由ははっきりしない状況で海外での人体実験の計画が計画されてしまうのでした。そしてもその本当の意味はかなり時間が経った時に判明するのですが、それもこの後の話とさせて下さい。


 国内症例を進めつつ、海外イタリアでの人体実験を行うためにお医者さんのスケジュール調整、それに合わせた製品の準備(この場合事前情報が全くない(実施する症例数も不明)状態でのオペとなるので、考えれるだけの製品の準備を行います。なので通常より持ち込む製品の数も多めに準備しなければならない、その準備して持ち込む製品の量に関しても事前にお医者さんと打ち合わせをすると言った日々が続きます。


 こうして、とりあえず世界初という称号を得るためだけに実施した人体実験は、日本国内を飛び出し海外にその活躍の場を広げていくのでした。


 今回は少し短めですがここまでとさせて頂き、続きは次回『リアルな「ガウディ計画」の話 〜いろんな意味で世界デビュー〜』編へ!

 なぜかここに来て終わりが見えない状況ですが、今しばらくお付き合いください。

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