東京に行って失ったものと得たもの・その1

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 私は今から20年前、会社の転勤により、当時東京にあった関連会社に出向で赴任した。
 それまで、地元から離れたことのなかった私であった。もちろん、それまでにも東京には何回か行ったことはあったが、いずれも観光や日帰りの出張ぐらいである。東京に住み、生活し、仕事をするのはこれが初めてであった。単に遊びに行くのと、そこで生活するのとは別物である。ゆえに、東京での生活は全くの未知数であった。
 20年前のある日の朝、当時勤めていた会社の工場長から突然呼び出され、東京にある関連会社に行ってくれないか、との打診を受けた。聞くと、その会社の生産管理部門でいろいろな問題が起こり、急遽、責任者を交代させることになり、私がその責任者として抜擢されたとのことであった。
 ここで補足説明をすると、私は大学卒業後、ある大手企業に就職したのであるが、すぐにとある県にある子会社に出向という形で赴任となった。その子会社に数年間勤務した後、上記の東京の関連会社への異動の打診を受けたのである。この東京の関連会社も、親会社の子会社であった。
 私はその関連会社についてはあまりいい噂を聞いておらず、その会社に行ったらおしまいだ、とすら言う人もいたほどであったので、その会社には良い印象を持っていなかった。それゆえ、あまり行きたくないなとも思っていたが、この話を聞き、来るべき時が来たという感じを受け、これも社命ゆえ、転勤はサラリーマンの宿命と受け止め、この話を承諾したのである。
 ともかく、今すぐにでも赴任せよとのことであり、赴任先の住居を探すため、すぐにその会社に出向き、総務担当の方と地元の不動産業者と共にいくつかアパートを回った。そして、広さも手ごろで、家賃も比較的安い物件に決めた。聞くと、部屋のクリーニングをしなければならず、クリーニング終了日は後日連絡するということで、その日はそのアパートを後にした。
 その後、不動産業者から、いついつにクリーニングが終わるので、引越しはそれ以降ならばよいと連絡があり、引越しの日取りを決めた。そして、引越しの当日、引越し業者のトラックに荷物を載せて出発させ、私は自分の車で東京に移動し、赴任先に到着。車は会社の駐車場に置き、その日はアパート近くのホテルで一泊し、その翌日にアパートに入ることにしていた。
 そして、その翌日、私はトラックのドライバーにホテルまで迎えに来てもらい、トラックに乗せてもらって一緒に引越し先のアパートに向かうことにしていた。ところが、待ち合わせの時間になってもドライバーが来ない。
 で、あわてて引越し業者の会社に連絡したところ、ドライバーはホテルに寄るには寄ったものの、該当の人は宿泊していないと言われ、直接現場に向かったという。どうも、ドライバーが私の名前を読み間違えていたらしく、該当者なしと言われるのも当然である。
 私もそそくさと引越し先のアパートに向かい、ドライバーは先に到着していた。ところが、さらに驚いたことに、アパートはまだ部屋のクリーニングをしている真っ最中であった。そして、ドライバーも、荷物を下ろせずに困っていたのである。
 私は、その日ならクリーニングは終わっていると不動産業者から聞いており、それに合わせて荷物の搬入日を決めたのに、話が全然違うではないかと怒りがこみ上げてきた。しかし、目の前の現実はどうしようもない。やむをえず、小さな荷物だけ部屋に置いて、それ以外の大きな荷物は赴任先の会社の倉庫に置かせてもらうことにして、トラックの運転手に指示した。本来はその日からアパートに住む予定だったのだが、結局、ホテルにもう一泊しなければならなくなった。
 この一連の出来事は小さなことであったかもしれないし、このようなことは普通に起こっていることなのかもしれないが、今思うと、これが後の東京で起こる種々のけちの付き始めであった。
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