『ペ●スノート』:Page 2「絶望」

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剣(ナイト)は絶望した。何故なら仮眠のつもりだったのに、目が覚めたら夜の8時とかだったからね。そりゃあ、絶望しますわ。オレだって絶望するもん。「軽く寝よう……」って小休止したつもりがさ、起きたら深夜の3時だったー・とかってさ、もう絶望じゃん。風呂入ってね工よ俺。クソ。……あ、今日の俺はちゃんと風呂入ったよ?ウン。何となく友達と深夜ドライブした帰りではあるけど、ちゃーンと風呂には入りましたから。エエ。そこはご心配なく。


で、剣が絶望している間にヌォワっと剣(ナイト)の妹、登場!いつだって忘れない、エジソンは偉い人……そんなの常識!と、言わんばかりの表情をしている剣を横目に、剣の妹は冷静に言い放ちました。



「ねえねえナイトくん。なんかつくって。お腹空いたよ。」



ちなみに妹の名前は娘撫。"んこぶ"と読む。……変わった名前でしょ?そう、苗字の多田(たた)も居含めると、「たたんこぶ」ってなる訳……世にも奇妙だよね。……オレもそうだけどサ。。。。

どうでもいいけど、娘撫はオレのことを"お兄ちゃん"だの"兄上"だの"お兄様"だの絶対に言わない。いつも"ナイトくん"と呼んでくる。……昔は違ったのにね。お兄ちゃんね、悲しいよ。

おっと、心の内の語りが多くなってしまった。とりあえず、妹の返答に応えねば。



「メンドい。台所にカップ麺あるから、それ食えばいいやん。」



「じゃあ、お湯沸かしてよ。」



「我が家には簡単にお湯を沸かせるヤツアリマスヨネ?ソレヲお使イナサイマセ」




「お湯湯湯湯湯湯湯湯湯湯湯湯湯湯湯湯湯湯湯湯湯湯湯湯湯湯湯湯ゆ」





娘撫のCrazyModeが発動してしまった。娘撫は全身のありとあらゆる関節を360°回しているが……この状態は、まだセーフなのだ。……いやセーフじゃないけど。でも、この状態は、まだ無害なままなのだ。



「頼むよ……オレも勉強で忙しいんだって……」





「れれれれれれれれれれれれれれれれれれりりりりりりりりりりり」





娘撫、SadisticHystericMoonを発動。これはいけない。この状態になると、一体何をしでかすかわからない。ちなみに過去にはヘリコプターの離陸する時の爆音を完全再現したり、JR山手線を真っ直ぐの一直線にしてしまったことがある。尚、前回この状態に陥った際は、全国のパチンコ店から「パ」の文字が消えた。……そう、この状態になると、多田家だけでなく、社会全体にも影響が出てしまうのだ。それは、避けたい。



ああ、娘撫がついに45cm程宙に浮いて、時速145kmで回転運動を始めた。このままではマズい。




「もぅわかったよ!お湯ならオレが入れるって!だからヤメロ!!!!」




「ぉっゖ」




娘撫はすぐに地に足をつき、部屋から去っていった。とりあえず、大惨事は免れたみたいだ……余計な手間をかけるハメにはなったが。



「はぁ……疲れるなぁ……」




「災難だよなァ。ホント……」




「うん……」






僕はすぐさま、自分以外誰もいないハズの部屋に第三者の声がしたため、本当にびっくりした。心臓止まるかと思った。でも、その声は聞き覚えがあるのと同時に、声の主は旧知の仲である彼だった。




「……ビックリさせないでよ。。。。」




「いやいや、悪かった悪かったw。ともかくナイト、おっす!」




彼の名前は目露人 虹空。"めろと にあ"と読む。僕とは遠い親戚の関係にある大学生だ。虹空の家は僕の家からちょっと近い所にあって、ボクが中学生になったのと同時に、虹空は僕の家に頻繁に訪れるようになった。その様子を見てた僕の両親は、「せっかくなんだし虹空くんに勉強を教わってもらいなさい。」という誠に有難くない助言により、虹空はアルバイトとして僕の家庭教師となった。ここ最近は、チャイムを鳴らすこともなく、いつの間にか部屋に居たりするので、本当にびっくりする。命落としかねないよ。本当に。



「何しにきたんですか……」




「何しに来たもクソもねェよ!んなもんバイトしに来たに決まってんだろうよ!ナイトくんの成績を、き~~~っチリ上げなければならないという、大事な大事なアルバイトさ!」



剣は思い出した。そういえば夜の8時からは虹空と勉強するっていうことになっていたんだっけ……去年の夏頃から始まったとはいえ、自分の意思とは裏腹に始めさせられた習慣であるため、イマイチ積極的に覚えることができない。


ちなみに虹空、意外にもちゃんと勉強は教えられるのだ。こう見えて虹空のおかげで去年の冬は学年でも上位の成績を収められたし、模試の成績も徐々に良くなっていっている。僕の第一志望である某高校も、このままのペースでいけば合格は余裕……な所までいっているのだ。……自分が意図せず始めたものなのに、結果的に良い方面に働いているのが、なおさらムカつく。


そういえば、虹空が大学に通っている姿を見たことがない。……道帝工科大学という所に通っていて、どうやら通ってはいるらしいのだが……



「ナ~~~イトくぅーーーーん。何ボーっとしちゃってンKnow?」



思わずボーっとしてしまっていた。いけない。これは僕の悪い癖だ。

とりあえず、虹空との勉強の前に、僕はやるべきことをやることに。




「おいおい、ナイトきゅんどこに行くんだい?もしかして、ボクとの勉強がイヤだから逃げる気かな????」



「違いますよ。娘撫のご飯、つくるんですよ。」



「あ、それは先にやらないとだね……」




虹空も察してしまう程の、娘撫の面倒くさっぷり。もうホントにイヤなんす。エエ。



「終わったら戻りますから……変なことしないでくださいよ?」



「はい。」



剣は虹空に忠告して部屋を後にした。虹空は、一人にさせると何をしでかすかわからない。もし余計なことをされていたら……そう思うだけで、剣は憂鬱になる一方だった。


剣は、うっかりため息を洩らした。

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