いま、私が自分らしく生きていられるのは、小さい頃から母が「うちの子は◯◯◯◯◯から」と言い続けてくれたからだっていう話

ノセ29歳、教育の仕事をしています

私は今、教育関係の仕事をしています。家庭教師や生活保護受給世帯向けの学習支援で学習支援専門員という仕事をしていまして、たくさんの子どもと話してきました。

私が話してきた子どもたちの中に、誰ひとりとして同じ子はいなくて、それぞれに好きなモノや大事なものがあり、悩みがあり、得意なことも苦手なこともあって、それはそれは愛しくない教え子なんて一人もいません。

私はとても幸運で、その中で、不登校の子が勇気を出して学校に復帰して高校進学にこじつけたり、学校でトラブっちゃって…とか家庭でゴタゴタして…という子が悩みながらも自分だけの”解”を見つけたり、将来の夢を大人に踏みにじられたと語る高校生が「もう一度、また新しい夢を見つけたら良いんだって思った。頑張ろうと思う」と勇気を持ったり…といった場面を何度も見てきました。今、これを書きながらちょっと泣けてきちゃうぐらい、どれもこれも私の大事な宝物です。


そんな私が母からもらったギフト。それは「”ふつう学”」への招待。

ところで、みなさんは小さい頃、身近な所に「博士」はいませんでしたか?昆虫大好き「昆虫博士」、車大好き「くるま博士」、ポケモン大好き「ポケモン博士」、魚大好き…さかなクン?同じクラスに一人はいたのではないでしょうか。ひょっとしたらご自身がそうだったかも?戦隊モノ、セーラームーン、いや、きっと博士クラスではなくても、何か心ときめくものがあって、それについて知りたいと思ったり、グッズを集めたりしたことはあるんじゃないかな、と思います。

私も例に漏れず、ポケモン大好きでしたし、他にもたくさん好きなモノがあり、それを追いかけていました。でも、私にとって何よりも興味があったのは「ふつう」だったのです。そう、私は小さい頃から「ふつうって何だろう」ということに興味津々で、ずっとそれを追いかけて、そしてたぶん、今での追いかけてるんです。たぶん私は今も昔も「ふつう博士」だと思います。それは、母がいつも言っていた言葉のお陰だったんです。


母の口癖。それは「うちの子は、ひと昔前の子なのよねぇ。だから人とは違うのよ。」


これ。これなんです。母が私に小さい頃からずーっと言い聞かせていたこと。大体いつも、こんな感じで。

うちの子は変わってるから。
そうなの?
うん、人とは違うのよ。一昔前の子どもなのよねぇ。
へー、そうなんだ

私には5歳以上年の離れた兄と姉がいて、たぶん類にもれずそういうオリジナリティあふれる子ども時代を過ごしていたのでしょう。その中できっと母はそう感じたのだと思います。人と違うということは、ひょっとしたら他の子とソリが合わなくなることもあるかもしれない。最悪いじめられたりすることもあるかもしれない。だから覚悟しておきなさい、そんな気持ちもひょっとしたら混じっていたのかもしれません。


「他の子と何が違うんだろう?」”ふつう学”の道のり

口癖のように聞かされる内に、私の中では「人と違うんだ」という意識が芽生え、そしてそれがいつしか「人と違っても良いんだ」という気持ちになってたような気がします。幼いノセは「どう人と違うんだろう」という素直な疑問を行動に移すようになりました。

友達
いやだってさ、ここはふつうあいさつするでしょ?
そうなんだー。なんで?
友達
いやだって…ほら、その方がきもちいいじゃん!
そっかー、なるほどね!

こうして、私の素朴なフィールドワークが始まったのです。


若い日のノセ、みんなの「ふつう」が違うと気づく

そうやって、いろんな人の「ふつう」や「考え方の違い」を集めるのが私のライフワークとなりました。最初は単純に、自分がどう違うのか知りたくて。でも、そのうち、みんながお互いに違うことを知って、しかもその違いのことで悩んでるらしいと気付きました。また、それこそ私が「変わった人」であり、フィールドワークのために「話を聞く人」になっていたので、私のところには、少しずつですがいろんな悩みがやってくるようになりました。

聞けば聞くほど、みんな、驚くほど持っている「ふつう」が違う!そしてお互いにそれに気づいてない。

それでも、私の中では「自分がふつうじゃない」ということが、一方で良いことだと思いつつ、もう一方で「それでいいのかな?」と思うことでもありました。いろんな人のふつうが自分とずれているのを知れば知るほど、やっぱり思春期の私には、ちょっとした悩み事にもなっていたんです。


社会人ノセ、人と違うことを求められて大歓喜。

そんな私も大学に入り、悩みもありながら自由闊達に過ごした後に就活の時期を迎えました。その頃には「他人と変わっていることは結構お得だな」と思うこともいくつかあったのですが、決定的なことが起こるんです。就活で社会人と話してみると、なんと「他の人と同じようなことをする人は必要ない」なんてことを言うんです。

それもっと早く教えてよ!


「変わってるのは”うちの子”だけじゃなくて、みんななんだ」

長年に渡るフィールドワークの結果、みんなちょっとずつ変わっていて、社会ではその違いが求められるのだという結論に達しました。金子みすゞ並の発見です。その発見が、人の気持ちやコミュニケーションへの興味につながり、その知識が今の教育の仕事につながっています。それこそ、今でも子どもたちは「ふつうじゃない」ことに悩んでいて、でも社会に出たら「ほかの人と違うことが考えられないと価値が無い」って言われるなんて知らない。そんなとき、母公認でふつうじゃなかった自分のことと、フィールドワークの話をするのです。そうすると、少しだけ子どもの近くに寄れるんです。


お母さん「ふつうと違う」ことに対する勇気をくれてありがとう!

そういう訳で、私が母からしてもらって感謝していることは「他の人と違う」と言い続けてくれたことです。こういう教育効果を狙っていたのか、はたまた本当にそう思ってたから正直にポロポロ言ってたのか、よくわかりません。でも、結果として私の人生をものすごい勢いで転がして、とても大事な価値観を与えてくれたんです。ひょっとすると、母からすれば「まさかそんなこと言い出すなんて思ってもいなかった」ことかもしれませんが、心をこめてやったことも、何気なく言ったことも、全部宝物だなと思って私は生きています。そんな感じです。

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