「人生のPlan B」って、何だろう?

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あなたが生まれてからずっと、親や教師や友達から言われ続け、作り上げ、そして守り続けた人生は、「Plan A」と言います。


その「人生のPlan A」は、楽しいですか? それとも辛いですか? 人それぞれに感じ方は違います。そして、そのPlan Aに満足出来なくて、「人生のPlan B」を探しに来た人がいます。これは、「自分の人生に違いを作りたい」と願ったYさんに、私が作って差し上げた「Plan B」の物語です。



4年前に、私はある自己啓発のセミナーを受けました。そこで、人生の目的を探し当てたのです。それは、「私の人生の目的は、『英語教育を通して、人を救う』ことである」というものでした。


私は、その時から、「英語の教師になろう!」と決めたのです。大きな人生の転換期でした。


そして、私は、そのセミナー会場で、Yさんと出会ったのです。大きな体のYさんは、野球をやって来て、サングラスをかけると、まるでヤクザ屋さんに見えました。


「おれって、サングラスをかけると、みんな道をどいてくれるんです。おれは、そんなに度胸がある訳じゃないんだけれどなあ・・・」


体つきを見れば、いかにも頼もしそうな体格です。しかしながら、心の中は、「ネコににらまれているネズミのような」小心な感じでした。


そのYさんは、「スポーツトレーナー」という仕事をしていました。セミナー会場で名刺交換すると、その肩書きは、誰もが関心がなくて、お話がはずまないと、Yさんは嘆いていました。


私は、スポーツトレーナーを6人知っていて、よくその仕事の内容を理解しています。


「ああっ、スポーツトレーナーですか?よく知っていますよ。私の友人も、そうですから。」


それから、Yさんはうれしくなったのか、私にこう言ったのです。


「よかったら、そのうち会いませんか?」


それから、半月が過ぎました。私は、新宿のレストランで、Yさんと待ち合わせをしたのです。礼儀が正しいYさんは、時間になっても現れませんでした。




Yさんは、私立高校と大学の野球部で、トレーナーとして、選手の体のケアをしています。マッサージと鍼灸で、選手の体調管理をしているのです。だから、体育系の挨拶の仕方や人との接し方は、気持ちがいいほどしっかりしていました。


「Yさんって、どうしたんだろう?」


30分遅れて、Yさんが現れました。


「すみません、遅くなってしまって・・・電車が遅れてしまって・・・おれから誘っておきながら、申し訳ないです。」


Yさんは四六時中、申し訳ない様子でした。


「おれ、西條さんをセミナーで見かけた時、どうしても、もう一度会いたいと思いました。縁を感じていたんです。どうしても会いたかったんです。でも、遅れてしまって・・・すみません。」


Yさんは、とても恐縮していました。その姿から、Yさんの誠実な性格を感じました。


「よかったら、いまのお仕事をお聞きしてもいいですか?」


それから、Yさんが自己紹介しました。給与のこと、将来性のこと、自分の夢のこと、たくさん聞きました。そして、7時間も話し込みました。ランチタイムに会って、気づいたら、日がとっぷりと暮れていました。


Yさんは、私立大学を出て、専門学校でスポーツトレーナーとしての勉強をして、マッサージ師と鍼灸師の免許を持っています。そして、国立大学の大学院に通っていたのです。


「西條さん、おれは大学院で運動学を専攻しています。修士論文を書いていますが、まだ未完成なんです。成績は、オールAです。」


Yさんの見事な成績を見せてもらいました。


「それで、Yさんはどうしたいんですか?」

「おれは、運動学の分野で、大学の教授になるのが夢なんです。それから、プロ野球のコーチもやってみたいんです。」

「とても大きな夢ですね・・・」

「おれは、今の仕事がいつまで続くかは、分からないんです。2年ごとの契約だし、監督やコーチと違って、実際に野球のゲームに参加出来ないし・・・給与だって、30万円から伸びやしないし・・・それでも、この業界では稼いでいる方なんです。でも、このまま終わりたくないんです・・・どうしたらいいか分からないけれど、結婚相手もいるし・・・」


「でも、おれって、バカだから・・・」これが、Yさんの口癖でした。


自分をバカだと決めつけているYさんの中に、『大きな可能性』を見ていました。


「毎日、毎日、くたくたになって帰宅します。地区大会があれば、土日も応援に行きます。勉強は、帰宅してからの3時間です。でも、いまのままじゃ、大学院にも残れないし、教授になんか、なれっこないし・・・それに、もう38歳だし・・・」


Yさんの愚痴をずっと聞き続けて来た私でしたが、Yさんの大きな可能性を言葉にしてみたのです。


「Yさん、よかったら、メジャーリーグのマウンドに立ちませんか?」



「ええっ!このおれがですか?出来っこないですよ・・・そんなことが出来るなら、やってもみたいですよ・・・でも、出来ないですよ。プロ野球なんかに行けないから・・・」


それから、Yさんは、以前からプロ野球のコーチの求人に応募して来たことを話してくれました。過去2回、最終面接まで行って、だめになったのです。


「最終面接まで行ったのであれば、あなたも必要とされている訳ですね。もう一息ですね。」

「おれも、中途半端はいやなんです。でも、2度も失敗しているし・・・」


Yさんは、いつしか本音を言うようになりました。


「実は、おれ、あるプロ野球の監督と仲が良くて、ふたりで『日本の野球界を変える』って言い続けいています。彼は、テレビで顔が売れているから、前面に出ては言えない。だから、おれが代わりに代弁しています。実は、エースの子が、進学した先で暴力を振るわれて、野球を辞める場面を見て来ました。いまでも、変わらないんです。おれも、彼も、心を痛めています。同じ野球を愛するものとして、この日本の封建的なやり方を直したいんです。」


「それなら、一度アメリカの野球を学べばいいじゃないですか?」

「そんなこと、おれでも出来るんですか?」

「ええ、出来ますよ。難しくないですから。」

「西條さんは、簡単だというから、簡単そうに思えるけれど・・・」

「私は、企業買収の件で、実際にメジャーのS球団のオーナー会社のNo.1とNo.2と交渉したことがあるから、野球には詳しいです。アメリカでは、野球は、エンターテイメントですよ。そのエンターテイメントを学びに行くんですよ。日本にはない、アメリカの考え方です。アメリカでは、スポーツは、娯楽、つまりエンターテイメントなんです。その気持ちが分からないと、日本の選手は、長続きしないんです。」

「西條さんって、何者なんですか・・・?」


それから、私のプロフィールを伝えました。ブログには書けない内容も、お伝えしました。


「あなたさえ本気なら、場所を改めて、もう一度お話しましょうか?」

「ええ、是非とも。それから、おれ、今日遅れたことの理由って、言ってませんでしたね。正直に言います。おれ、人の命を救ったんです。実は、踏切に入ろうとしたお年寄りを、タックルして倒して、救ったんです。それで、電車が遅れてしまって・・・おれ、助けたかったんです。おれの親友が、社会人野球をやっていたんだけれど、実力が維持出来なくなって来て、野球辞めるって言ったんです。そして、会社に辞表出して、その翌日に「自殺」したんです。おれは、彼の部屋で彼を発見して、警察を呼んで来て・・・だから、もう絶対に死なせては行けないんだと思って・・・」



「Yさんは、命を救ったのですね。人生って、貸しと借りの世界ですよ。あなたの友人が命を捨てて、あなたが、他の人の命を拾ったんです。捨てて、拾ったから、これでゼロですね。あなたは、彼の命は救えなかったけれど、他の人の命を救ったから、これで貸し借りなしなんです。1人の人間に、やり直しの出来る機会を、あなたは与えたんですよ。滅多に出来るものじゃないんです。」


Yさんは、涙ぐんでいました。そして、次回の話し合いの約束をしたのです。私は、Yさんの器の大きさに感心していました。


「Yさんの論文のお話をお聞きしたいです。」


Yさんは、用意周到で、自分の論文を持って来ていました。


Yさんは、論文で「投手のフォームに関する筋肉の疲れ」を論じていました。どのチームにも、投手の投げ方があります。その時の使った筋肉がどこであり、調子のいい時と調子の悪い時の使う筋肉が違うことを突き止めたのです。野球界には、巨人とソフトバンクの両極端の投手フォームがあるそうです。その両極端のフォームとは違う、「第3のフォーム」をYさんは、考え出したのです。





「Yさん、今のチームの選手を使って、もっとデータを取りましょう。そして、あなたの第3のフォームでどれだけの疲労度かを確認して、データで証明して下さい。そのデータを使って、さらに論文の内容を広げてみましょう。」


私とYさんの間で、いつしか論文完成の作業始まりました。ほとんど毎日、メールのやり取りをしていました。


それから、またYさんに会いました。


今度は、銀座の会議室でした。ホワイトボードを2枚使って、私がYさんの「人生のPlan B」を書き上げて行ったのです。


「西條さん、これは他言無用なので、窓のカーテンも閉めましょう。」

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