ど素人高田支配人の現場改革 第一章 いきなり試練はやってくる

次話: ど素人 高田支配人の 現場改革 2 飛び込む勇気

                                                                                                


 

~経験も無い、実力もない、地元での人脈も無い状況の中で

 いきなりの店舗責任者に任命された若きサービスマンが

 愚直に現実にぶつかりながら、会社を再建させた実話に基づいた

 物語である。

 

 <登場人物>

 

高田支配人~このシリーズの主人公。アンビシャス入社2年目の新人にして現場の支配人の辞令を受けた。35歳 結婚式場の責任者の経験はまったく無く、営業の経験も無い。ないない尽くしで自信もないまま 指導を受けて一人立ち上がる。

河野俊一~隣町の結婚式場の支配人。同じアンビシャスの社員で、やはり支配人として人材派遣された。高田より1年早く入社して現場に配属されいた。30歳。

後藤部長~ハートロード結婚式場の営業部長。営業部10年目。現場のたたき上げで

     規則を守ることに厳しい。現場の鬼と呼ばれている。32歳

石原バンケットマネージャー~ハートロード結婚式場の創立メンバーで、地元の顧客には顔きき役。親分肌で面倒見もよく、影のボスといわれている。52歳。

白石庄平~地元の生命保険のトレーナーで引退後も後輩の面倒を見ながら研修会に参加している中で高田と出会う。72歳。

大林友子~ハートロード結婚式場の専務婦人。フロントの責任者。

大林育子~ハートロード結婚式場の社長婦人。総務経理の責任者。

森田源蔵~ハートロード結婚式場の双蝶調理長。

内田悟~ハートロード結婚式場営業部課長代理。

竹丘真一郎~地元のお米や経営者だったが、店を閉めて引退していたところ高田に声をかけられて送迎バスの運転手になる。

 

 

 

 

 

 

 

第一章  いきなり試練はやってくる

 

・スタートは無い無い尽くしの環境と不足な自分の能力・経験

 

 

 ひなびた単線の線路を1時間電車に乗ってやっと着いた無人駅で降車した高田の目に入ってきたのはあたり一面に広がったタバコ畑だった。

 

 千葉県の片田舎に有るハートロード結婚式場の支配人として赴任することとなった高田は、まず人口が数千人しかいないだろう、この寂れた片田舎町に降り立ってはげしい心の葛藤を覚えていた。

 

「俺はもしかしたら とんでもないところに来てしまったのかも知れない。」

 駅前から続く細い県道を歩いてゆくと すでに営業をやめ、つぶれたらしいガソリンスタンドが目に入ってきた。地図を片手に目的の結婚式場を探してゆくが、だんだん胸騒ぎがしてきた。道路の右手にR祭典という看板が目に入ってきた。葬儀屋だった。

「まさか、、、、」高田の直感は的中した。

 

 

道端の葬儀屋の角を右に曲がると、目ざすB結婚式場が現れた。

「まさか 葬儀屋のすぐ隣だなんて。」

葬儀屋の建物の陰に隠れて 道路を通る車からはB結婚式場が見えるか見えないかだった。

しかも B結婚式場の周囲は住宅で囲まれるような街のつくりになっていて、宴会等で騒いだらすぐに近所からクレームが来る、そんな密集した構造になっていた。しかも入り口に葬儀屋である。

「俺は此処に何をしに来たんだろう。」

そんな、感嘆を通り超えた絶望に近い心の叫びが高田の中で沸きあがっていた。

 

 今日来るとは現場には連絡を入れず、そっと内情視察に来た高田が 大きな駐車場でため息をついていると、そこに大型バスが入ってきた。隣町に有るC結婚式場の河野支配人が運転していた。河野と高田は以前から面識があった。

「高田支配人じゃないですか、今日から赴任されたんですか?」

「いや 明後日からなんだが、その前に敵状視察しようと思ってね」

 

高田にとっては敵状視察という表現しか思い浮かばない状態になっていた。

いったい、此処で何が待ち構えているのか、どうして自分のような経験もなく実力もない初心者がいきなりこのような難しい環境に放り込まれようとしているのか。

まったく未来は不透明だった。

「ところで河野支配人 どうして大型バスを持ってきたんですか?」

「実は昨日 此処の社長から電話があって B式場のバスがほとんどすべてエンジントラブルで修理に出したので、大型でいいから貸してくれないか、というんだ。」

 

どうやら 此処のバスは2台とも耐用年数を越えているらしく、いつ走らなくなるか分からない危機的な状況であるようだった。

 向こうを見ると、結婚式場のガラス張りの壁の通して、中で掃除している社員たちの様子がなんとなく感じ取れた。明らかに相当年配と見えるご婦人らしき社員、たぶん此処のベテラン社員なのだろう、仲間にあれこれ指示をして そのうち階段を走るようにあがっていった。

 

「ああ、あの人は此処のバンケットの親方的存在で、もう15年以上此処で勤めているベテラン社員ですよ。」

ベテランで高齢の女性社員ばかりの現場の責任者として、いったい自分に何が出来るのか。

高田の心では、不安が衝撃となり、さらに次々と勝手な妄想が浮かび上がっては消えて行った。

 

 この式場の環境をみれば見るほど、さらに施設を知れば知るほど、高田の心がどんどんなえていくのが分かった。普段は前向きでポジティブな人間であると自負をしていた高田だったが、この日の精神状態は最悪だった。

 

 高田は アンビシャスに入社してまだ2年ほどの駆け出し社員で、以前はマスコミ関係に勤めていてサービス業、特にブライダル関係の仕事は初心者同然だった。2年ほど結婚式場や旅館の現場のお手伝いに人材派遣で経験を積みはしたが、それはまだ現場をかじった程度で、支配人をまかされて現場を切り盛りできるような能力からは程遠かった。

 

 

 

 

 こうして、高田は赴任の当日を迎える前に、現場を視察することによって返って完全に心が折れてしまった。そして いつの間にか ダメな部分 出来ない理由 難しい環境を数える作業に没頭していった。もちろん ますます苦しさの洞窟に深く入っていくだけだった。

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