手を擦り合わせるジェスチャーの話

(注意:ささやかながら、下ネタです)
今でも興味があることは何でも調べてしまう僕の性格は、小学校4年生の頃から健在だった。よりにもよって「エイズはどうしたら伝染るのか?」という疑問を持ってしまい(確かテレビのニュースを見ていたと思う)、よりにもよっておじいさんに質問してしまった。

ありていに言えば、「セックス」という概念を、毛も生えていない小学校4年生にわかるように伝えなさいという命令をおじいさんに下してしまった訳である。
おじいさんは普段から一切下ネタを言わない。ひとつだけ満州で体験したスゴイ下ネタがあるけれど、それ以外は一切口にしない。
※満州で体験したスゴイ下ネタ:キリキリに冷えた満州の冬、宿舎の中にトイレがないので外の森でしゃがみこみ、やっとのことでスッキリしたと思ったら、森のあちらこちらから「ドドドドド…」という足音が迫ってくる。それは野生のイノシシで、おじいさんが出したものを食べにやってくるのだ。おじいさんは、尻を丸出しにして逃げ出した。
「おじいさん、エイズってどうやったら伝染るの?」
と無垢に問う僕に対してしばらくの間ニコニコと笑っていたおじいさんは、やおら両手を僕の目の前に差し出し、しゃりしゃりしゃり…と音を立てながら、手のひらを擦りあわせた。鉄工場を営んでいた肉と皮の厚い手で、しゃりしゃりしゃり。満面の笑みで、おじいさんは手を擦り続けた。
おじいさんは、手を擦り合わせるジェスチャーによって、セックスを表現していたのだった。昔はそういう表現方法があったのかもしれないけれど、僕は寡聞にして知らない。当時の僕もわからなかったから、話題は自然と終わってしまった。
そんなことがあったから、今でも折にふれて手を揉む動作をしている人を見ると、おじいさんの不思議と堂々とした満面の笑顔を思いだす。ついでに、セックスという概念もちらりと頭をよぎるから、困ったものだ。

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