メルボルンで南極からの風に吹かれる

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中世の英国領の趣きが深く残り、海から丘が立ち上がっていて坂道の多い街メルボルン。

日本からだと大抵シドニーでのトランジットになる。深夜、成田空港を飛び発った飛行機は早朝にシドニーに到着。と、乗換時間が短い。今さっき着陸だからと叩き起こされた身で、空港職員が手招きする国内線ゲートまで走るのはきつい。

ふと横を見ると先ほどまで搭乗していた飛行機から我々の荷物がカートに乗せられて、凄い勢いで抜き去っていく。シドニー空港を飛び立ち水平飛行になって暫くするともう着陸の準備。飛行時間は一時間ほどである。

早速ホテルへと移動。会社の同僚連中も着いているはずだが、それぞれの別の便。何時のフライトとお互いに確認しておらず、明日の朝ロビーで集合する事になっているので、取り敢えず部屋で休息。

今回の出張はオーストラリアの資源会社とのジョイントベンチャーを設立して投資を行う為の、ファイナンスと契約書の詰めが目的。明日から投資銀行やら弁護士やら、資源会社の人達と詰めた話し合いになる事が分かっていたので、早めの夕食を取って早々と就寝。

あっという間に朝になり朝食を済ませてロビーにいくと、いましたいました会社の同僚達。同僚と言っても、一人は取締役、もう一人は部長。営業担当の先輩課長と自分が財務担当の課長という4人組。

まだ先方の本社での会議まで時間があるのでブラブラと歩いて行く事にする。朝の眩しい光の中で時間を経ているであろう中世風な建物やそれらを取り囲む木々や草花が輝いている。街角にはバーやカフェが溢れかえっている。ビジネスでなければ店の外の席でビールを楽しみたいところだが、そうもいかない。暫く歩いて行くと小高い丘の上にガラス張りで輝くビルが見えてくる。あそこがこれから向かう先だ。

会議は昼食を挟んで夕方まで続き、双方とも満足のいく結果が得られていた。

夕食は先方がアレンジしてくれたイタリアンレストラン。玄関からして黒光りをしたドアに金色のドアノブ。それがけばけばしく見えないのは長い歴史を経ているからだろう。誰の目から見ても老舗の高級店だ。しかし内部はそんなものではなかった。使い込まれた木の家具が磨き上げられており、天井からは幾つものシャンデリアが頭にぶつかるのではという位まで垂れ下がっている。そう美術館といった方がぴったりくるだろう。

シャンパンで本日の会議の成功を祝い前菜を食べていると次の注文を取りに来る。が、メニューがイタリア語。せめて英語は、、、ない。知っているのはラザニア位。えいやとラザニアを頼んだのが運の尽き。濃厚なチーズが焼かれて良い味なのではあるが量が半端ない。ワインで流し込む様に食べるが全部は食べきれない。そして次の主菜は何を頼んだか思い出せないほど。

外人は何事も無かったかの様にワシワシと食べ進んで行く。7時から始まったディナーは既に10時。

恐るべきオーストラリア人の胃袋。そろそろお開きかと期待したところでデザートのメニュー。まだ食うか。。。

食後のコーヒーを飲み終えた頃には11時を回ろうとしていた。ホテルに帰って寝るしかない。

すっかりと人通りの少なくなった通りを日本隊はフラフラと歩き出していた。

季節は冬が終わって春になろうかという頃。日本では紅葉が始まろうかとする頃だった。

昼間は柔らかい日差しが差し込んで心地よい温度であったが、日が暮れるとぐっと気温が下がる。一陣の南風が吹いてくる。身が引き締まる様に冷たい風だ。この海の向こうにはタスマニア島。そしてそのもっと南には南極大陸。メルボルンの街の坂を下りながら、僕たちはその目に見えない大きな白い大陸を感じていた。


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