なんちゃって外資系 その3 お国柄編

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外資系企業といっても米国企業だけではない。ヨーロッパの企業も、オーストラリア、はたまたアジア諸国の企業も。今回は、自身が勤めた企業だけでははなく、面接を受けたり、取引先、知合いの勤める会社を含めて、そのお国柄について語ってみたい。

まずは米国企業であるがアメリカ大陸は広い。東海岸と西海岸では時差も3時間。サンフランシスコでオフィスがオープンしたころニューヨークでは証券取引所の前場が終了。実際、ワシントン州シアトルに長期出張で滞在していた時、夕方に緊急なトラブルがありニューヨークの米国法人本社に電話しても誰も出てこない。やっと捕まえた時は、従業員一堂で今は無きワールドトレーディングセンターでクリスマスパーティの最中。

東海岸の会社は比較的歴史が長い大企業が多く、仕事のやり方も手順書が確立されていて、それに沿って淡々と進められていく。権限も明確に決まっているので、何と言ってもタイトル、役職が絶対。

皆んな、高給を目指していると言うよりは、よりハイレベルの権限、オーソリティーを取りに行く。

所謂、コーポレートラダーを駆け登るというやつだ。

一方、西海岸。マイクロソフト、アマゾン、グーグル等、ベンチャー企業が目白押し。

こちらは、仕事の手順やらしょっ中変わる。大体、人がコロコロといなくなる。

一つの会社で地位を登り詰める事よりも、どこか別の会社に上位のポジションが有れば移ってしまう。

IPOという株式公開に便乗できればひと財産を稼げる事から、株式上場しそうなスタートアップ会社を狙うハイリスク・ハイリターンを狙う輩もいる。

新興企業は株と福利厚生で有能な社員を集める為に、グーグルの様に何時でもご飯食べ放題なカフェテリアを設けたり、敷地内を走るレンタルサイクリングを提供。これで結構人が動くというから馬鹿にできない。


フランスの会社の日本における経理の責任者というポジションで面接を受けたことがある。面接場所は東京駅近くのホテルのラウンジ。時間前に現場に行ったのであるが、それらしき人が見つからない。30分しても現れないので、その辺を巡回。ムードがあるのは良いのだが薄暗くて椅子に座っている人の顔がよく見えない。2周して3周目に、それまでじっと本を読んでいる外人の女性に気が付いた。

エージェントから名前は聞いていたが男性か女性かを聞いていなかった。

まさかと思いつつ、恐る恐る確かめるとそうだった。何とか面接を乗り切り、次は本国のCFO(財務最高責任者)との電話面接。これが最初の10分は何を言っているのか全く分からない。恐ろしいフランス語訛り。それでも折れそうな心を鼓舞して何とか10分過ぎから会話になったが、「こりゃダメだろうな。」

ところがCFOが来日して直接面談するとの連絡。会場に行ってビックリ。複数、恐らく5人以上の候補者が居てハーバードビジネススクールの様なケース分析をやらされて、その後プレゼンテーション。

そんなの聞いてないよー。と、泣きが入ったが、何とかこなす。但し、分析結果は彼らの意図したものと違った様で、「これは一つの見方。これを元にディスカッションできれば・・・。」と、取り繕うのがやっと。今度こそダメだと観念したが、このセッションでの候補者の中で一番だったとのこと。

その後も、将来はアジアパシフィック地区を見れるかだの、フランスで働けるかだの打診が続いた。

その状態が6ヶ月も続いた。そして突然、「取締役会にかけたが製造業の経験が無いので見送りたい。」との連絡。そんな事応募のレジュメに書いてあるので最初から分かってただろう!これはウィットと言うのだろうか?

他にもフランスの電機メーカーを受けた事があるが、総じておっとりとした感じ。仕事ばかりでなく音楽や芸術を愛する国民性が現れているのだろう。


逆に思いの外神経質なのがドイツ企業。同国を代表する電機メーカーの面接に行ったが、細々とした事を聞いてくるし、こちらの質問に対しては注意深く言葉を選んで答えてくる。何か知られて困る事があるのかと疑いたいくらいだ。

その神経質さが如実に現れたのが災害への対応。911の際にいち早く採用凍結をしたのもドイツ企業だし、311の際は面接に行った会社のドイツ人社長が急遽帰国してしまい行方不明。人事の方も「実は私も今月で辞めるので人事も見てもらえれば。」と。当然、ご辞退。


違った意味で豪快なのがオーストラリア。なんせ人口が少ないので求人一杯。その上、鉄鉱石、石炭、ウラン、石油と資源が一杯。一言で言うと脳天気。人は良い人が多い。身体はデカくよく食う、飲む。中国バブルの際は資源価格高騰でウハウハ。一転、中国バブルが弾けて真っ青に。カンガルーの国も外敵である国際競争に巻き込まれていて、近年は保守的、右翼的な言動も増えてきている。


初めての外資系企業は香港にリージョンという地域統括会社があり、私の上司のアジアパシフィックのCFOも香港にいた。古い中国的なものと近代的な金融街が混沌と混ざり合った香港。

ここの人達は本当によく喋る。私の上司は毎日夕方の4時頃電話をしてきて、「今日はXXXについて話し合いたい。」と話をし出すのだが、彼が喋っている時間が8割位。そしてひとしきり喋り終えると、「ところでXXXについて社長に聞いて来て貰えないか?」。おいおい、お前が1時間近くも喋るから、もう終業時間じゃないか。息を切らせて社長室に辿り着いている確率は50%。帰宅途中の駅で電話を取った際も、今「今、駅にいるから1時間後に掛け直して良いか?」と聞くも、そのまま話を続け、最後はわざと携帯を落として「あっ、切れる。」で終了。

勤勉で真面目なのですが、兎に角せわしない。彼がバケーションの時は清々としたものでした。


もう少し近くの韓国企業。アジア通貨危機の際に尋ねたサムソン商事のビルは夜遅いというのに、残っている人の所だけ明るい。フロアー全部を明るくしていないのには感心。

兎に角、年長者、上司には絶対服従。うちの若手に爪の垢でも煎じて飲ませたい程でした。

日本法人も例外では無く軍体調。面接の最後には焼酎なら何本飲めるか?とも聞かれるとのこと。

一度、韓国の得意先から電話があった際に不在で掛け直せとのメモ。電話で「金さんいらしゃいますか?」と尋ねたら金さんだらけ。最近はイニシャルや英語の名前を使う人も増えているとか。


中国に現地法人を作った時のこと。経理を任させられる人を採用すべく二泊三日の弾丸ツアーを決行。

面接から採用決定迄この実質2日でやっつけようという企画。中国は初めてだったが本虹空港から予約していた日系のオークラホテル、中国名だと花園酒店迄何とかタクシーで辿り着く。

翌朝も現地法人の住所を手にタクシーに乗り込む。高速?危険。皆んなクラクションを鳴らしながらあたかもレースの様にレーン取り。

高速?を降り運転手が「こっちか?」と聞くが分かるぐらいならタクシーなど乗らない。

しかし、しっかり記憶に焼き付けた住所とビルの名前をお経のように何度も唱える事により、何とか到着する事が出来た。

翌朝から1日で10名近くの面接。中には何人か億ションや富裕層の居住地に住む人も居て、「なんでお金持ちなのに働く必要があるのですか?」と尋ねると、「貴方は働く事の意味が分かっていません。」と、説教される始末。

候補者の中に日本で働いた事のある、中国にある日本企業現地法人に勤める娘がいて、この娘が凄く清楚な感じで服装もセンスが有り全員一致で翌日仕事をオファー。

よかったと思ったのもつかの間、入社直後から「友達は給料がXX%上がったので昇給して欲しい。」とか、「通勤でタクシーを使うので通勤費を支給して欲しい。」と、毎日のように要求をする様になり、「入社したばかりだから・・・」となだめていたら或る日突然、「貴方達日本人は自分達ばかりが偉いと思って中国人を馬鹿にしている。」とブチ切れて退職。所謂、一人っ子政策世代。難しいです。


インドの方も非常に五月蝿い。人の言う事を聞かずにどんどん自分の主張をして来る。勢いに押されていると、益々押し込まれるので、日本人には中々難しいが喧嘩するくらいの気概で押し返さないとやり込められてしまう。ただちょっと気をつけて欲しいのは、相手も別に悪気があってやっているわけでは無い事。よって、やりあった後はお互いをリスペクト、尊敬して、ありがとうと別れることが重要だ。こうすれば貴方もインド人の友人になれる。話している最中に何故か身体が前後左右に揺れ出すのにも驚かなくなる。

給料については概して渋い。但し、後数十年で中国の人口を抜く事が確実なこの国に今から掛けてみるのも面白いかもしれない。


人口2億人超。中所得層が育っていて中国、インドの次と期待されるインドネシア。

1万を超える島から成り、民族数は約300。

人口の大部分はマレー系。しかし経済の中枢は中華系が押さえている。

イスラム教徒が多いので金曜日の午後はお休みという会社や銀行もあるので知らないと焦ることになる。海運会社に勤めていた時、カリマンタン島へ石炭を積む為に船を派遣しようとしたのだが、現地から「清水を沢山積んで来い。」との要求。

水と言っても業者から購入しなければならず、また水の重量分だけ荷物を積める量が減ってしまう。

後で分かったのであるが荷役をする現地の人が船のデッキの上にテントを張って生活。

毎日、沐浴の為に水を使っていたと。

マレー系の人はおっとりとしていて英語の出来る人が限られることもあってコミュニケーションも少ない。Yes/Noでの質問形式や、項目毎のQA形態を取ると、狙っている情報が取りやすい。

経済的には発展を見せている同国だが政治的な安定に欠けており、中国、インドからバトンを受け取るのはもう少し先のことになるのではないか。


最後に仕事に直接関係は無いがマレーシアのトイレ事情。

旅行中に先ほど食べた刺激のある中華料理もどきのせいか腹痛に見舞われた。

休憩場でトイレに飛び込み一息ついてビックリ。紙が無い。。。

その代わりに水道とバケツ。⁈ 

そう、噂には聞いていた「水でパチャパチャ」するやつ。

清潔なんだろうけど、どうにもフンギリがつかない。


国によって感性や人に対する反応が違うのは慣れてくると楽しくなってくる。それは詰まる所、ヒト、の問題であり、貴方が人間が好きであればどんな企業に勤めても問題は無い。むしろその様な違いを楽しむ事こそが外資系企業に勤める一つの醍醐味だと言えよう。 







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