ボクは、最低の息子、最悪の父親

 父に見せたかった初孫

 皆さんは、親にとって良い娘、良い息子だろうか。私は、悪い息子だった。

  幼稚園に入る前に、喉にデキモノが出来て地元の病院で切ってもらった。それは失敗したらしく、名古屋の日赤病院で手術をしてもらった。帰りに道で麻酔が切れて目をさましたら、タクシーの後部座席に寝かされていたことを覚えている。

  母は、手術に立ち会って卒倒したそうだ。

小学校の高学年まで、身体が弱く喘息持ちだった。よく父に塩浜の病院に連れていってもらった。泣き虫で、男らしくなかった。「大事なアトトリ」と言われて甘やかされ、ひ弱な男の子だった。

泣いてばかりいた情けない思い出が多い。

中学校ではいくら勉強で頑張っても、トップクラスにはなれなかった。高校に行っても同じ。神経が細すぎ、大学の受験前にノイローゼで倒れて入院さわぎを起こし、母は「プレッシャーをかけすぎ」と医者に叱られていた。そんなことなかったのに。

大学では、ある女性に夢中になり、留年し、心配をかけた。大金を出してもらったのに、卒業しても、大学院を受けると言って、正規に就職せず、アルバイトで生活し、アメリカに飛んで行き、実家に寄りつこうとしなかった。

結婚したら、バツイチになり、親ばかりか、娘たちも悲しませた。塾のための土地を買うときは、連帯保証人になってくれたのに、父と大喧嘩になり、塾がうまくいくと「オレは父を越えた」と傲慢だった。

本当に、最低の父親、最低の息子だった。

自分がしてきたことをふり返ると情けなくて、涙がでる。それでも、父が亡くなった時に「あいつは、自慢の子だった」と言ってくれたそうだ。

名古屋大学に合格し、英検1級をとったことを指していたのだろう。文系出身だけど、今は「数学」も指導している。そんなことを近所で自慢していたらしい(http://storys.jp/story/18218?to=story&referral=profile&context=author_other

私は子供たちに社会的な成功など期待していない。そんなことは、どうでもいい。家族がお互いに思いやりが持てる関係でいることの方が大切だ。ところが、ある日、帰宅したら妻がいなかった(http://storys.jp/story/21601?to=story&referral=profile&context=author_other

私は塾生のような才能にめぐまれていない。社会的に成功したわけでもない。小学校の頃は、「年表に載るような仕事をしたい」とか「教科書に載るような成功」をして親に認めてもらいたいと考えていたが、そうもいかないらしい。

  世界一大きなピザを作っても、教科書にも年表に載らない。せいぜいキネス。私の英検1級や、京大二次で7割の数学力も、人の役に立たないと意味がない。

  だから、教える対象を考えざるをえなかった。怠惰で、素行不良生徒を指導していたら、何も残らない。京大や旧帝、国立大医学部をめざす子を指導して気づいてしまったのだ。

卒業後に、Dr.コトーのように無医村で頑張っている。公認会計士の資格をとって事務所を開いた。企業の研究所で遺伝子組み換えの研究をしている。そういう卒業生から、連絡が入り始めた。彼らは、確実に人のために役立っている。

  私は、そんな生徒を指導することに生き甲斐を感じる。彼らが成功していく過程にほんの少し手を貸せた。これが、私の誇りだ。

  これが、私の生き甲斐だ。

2016年度(7名)
 京都大学「医学部」、京都大学「理学部」、大阪大学「人間科学部」、名古屋大学「経済学部」、名古屋市立大学「医学部」、神戸大学「経済学部」、御茶ノ水大学「理学部」
2015年度(6名)
 京都大学「経済学部」、京都大学「総合人間学部」、東京医科歯科大学、大阪大学「外国語学部」、東工大、名市大「薬学部」。

 京大「医学部」に合格できる子は、全国でも指折りの生徒たち。医学部でなくても、数は少ない。そんな子を指導できることが嬉しい。彼らは、賢いし、感受性が鋭いので、普通の学力では「この人では、ダメだ」と烙印を押す。私の塾に来てくれる子は学校や大規模塾の教師、講師では質問に答えられないと不満をうったえる。だから、私は猛勉強しないと見捨てられる。

  「ガリレオ」の湯川先生、「相棒」の杉下右京、あのような論理的な思考をしないと京大受験生など指導できない。時間を有効に使わないといけない。この生き方と、親思いの生き方は、しばしば相反した。

親や別れた妻は、デキの悪い子の指導をする塾講師を期待していたようだった。弱い者を救う熱血教師、熱血学園ドラマをイメージしているようだった。ところが、私はまるで正反対の目標をめざした。

  日本社会では、「スクールウォーズ」の昔から「ビリギャル」まで、落ちこぼれが主人公でないと学園ドラマはヒットしない。でも、非行少年や非行少女より普通に頑張っているA子ちゃん(http://storys.jp/story/18470?to=story&referral=profile&context=author_other)の方に感動するのは私だけだろうか。

 

  私は、微分積分の計算式に取り組んでいる生徒を見ると感動する。つまらぬことでグレて、周囲に迷惑をかけるような生徒を嫌悪する。もと奥さんや、親の期待とは違う。

 

  非行少女から慶応に受かっても、感動しない。最初から非行にはしらず、京大に合格する方に感動する。不良を指導するために、アメリカに行き英検1級をとったわけではない。京大を7回受けたわけではない。「数Ⅲ」を勉強したわけではない。

 

  これから、日本社会を背負って立つ生徒を指導できる講師になるために頑張ってきた。デタラメな塾講師を蹴散らすために頑張ってきた。なめた口をきいた奴らを見返すために頑張ってきた。

  不良など相手にしているヒマはない。それは、他の講師に任せる。

  受験は、勝つか、負けるか。勉強をファッションか、肩書きくらいに考えている人は、この世界に入ってこない方がいい。難関校の受験の実態を見て、「なんて、非人間的な」とボヤくだけ。

  亡き父が見たら、嫌なヤツだと思うだろう。自分でも嫌なヤツだと思うが、どうしようもない。私の塾の合格実績は、この成果に基づいている。父に見せたかった研究成果だけれど、父はいない。

「親父、初孫が生まれた。心配していた私の塾も、多くの塾生の子に集まってもらい順調だ。心配しないでくれ。そのうち、ぼくもそちらに行く」

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