なんちゃって外資系 その4 退職編

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このシリーズ、"なんちゃって"なのですが、これはシリアス。退職編。

日本企業に勤めていた時は毎月月末に定年退職の方や寿退職の方が退職のご挨拶に社内を回られていたが、これはある意味計算できる。

一方、外資系企業の場合は会社と本人にとって予期せね退職と言うのが多々ある。


会社にとって予期せぬ退職は、ついこの間までバリバリと仕事をしていた者が突然上司に辞表を出す事態。それなりに頼りにもしていて、待遇もそこそこ。

こんな時は、その人は気づいてしまったのだと思う、貴方の下で働いていても良い事が無いと。

外資系での昇進は上司の力と推しが大きく左右する。

このままここに居ても自分は良くてこの上司のレベル。と、言ってもこの上司どこかに転職する程の気概も能力も無いと。自分にとって蓋の様な存在だと。まあこんな時は、自分を追い落とそうと画策しなかっただけ感謝するしか無い。後任が決まるまで、その仕事をやらなければならないのも自業自得かと。


反対に役立たずと貶められている人は中々辞めない。自分が出て行っても今より良いところへ行ける自信がないからだ。会社からすると、こう言う輩が一番厄介。

社内の不満分子と徒党を組みネガティブな毒を撒き散らす。会社のメールで誹謗中傷の嵐。

会社をひっくり返してやろうとの気位が有れば逆に退治し易いのだが、表面上は従順を装っているのでタチが悪い。残念ながら基本的な倫理観、社会人としての常識について若い時に教育されていない者が多い。この点は日本企業でも最近は言われる様であるが、外資系に比べると大したものである。

先輩、上司によるきめ細かな指導が成せる技だと感嘆する。日本の大企業の粒揃いの人材に比べると、外資系の人材は卓越して優秀な人もいる一方で、どうしようも無い人達が混じっていて、日本企業からマネージメントでそんな会社に移って来た際には途方にくれる。


会社の方から退職を働きかける場合。基本的には雇用契約で決められたスペックの仕事が出来なければ契約がそもそも存続し得ないというのが会社側の立場。然しながら、日本の法律では労働者は大幅に保護されている。よって違法な退職勧奨は許されないし、やるべきでも無い。

時間は掛かるが雇用契約の内容の確認、出来ていること出来ていないことの確認、どうやって出来ていないことを出来るようにするかのプランをじっくりと話し合うべきだ。一部にこの様な話し合いをせずに強硬な手段に走る企業も、外資に限らずある様だが、それは間違っている。ユニオンやら弁護士の所に駆け込まれても、彼らはプロだから、換言するとお金の為に介入してくる。時間が掛かれば掛かるほど彼らの取り分が多くなるだけ。会社も本人もやり直しの時期が遅れるだけだ。j

十分に時間をかける事によって、当事者も気づきを得て、次の路へと歩みだすことができる。

この会社とは相性が悪かったかもしれないけれど、他ではその能力を生かせるかもしれない。

実際、会社の規模、成熟度などによって、重宝とされる人材は異なってくる。

立ち上げが得意な人。大きな組織を動かすのが得意な人。色々、ある。


"撤退"を勧める際に"手切金"を支払う会社は減ってきている様に思う。かつては年収の1年分とか場合によってはもっとだったが。より時間を上げるので次の進路について考えて下さい、と仕事をせずに求職活動をすることを認めるというのが主流になってきている。

ある経理部長の場合、大ぴらにはされてなかったが、転職を勧奨された様で、しょっちゅう行方不明。電話を掛けると、「今、税務の勉強会だ。」とのお答え。彼はその後別の外資系へ経理責任者として転職。そこで社長の座を掴んで国内証券会社系のファンドへの売却を経て、東証二部上場。そして最近、東証一部への指定替えを達成。実は、外資系の時代経理責任者として誘われた事もあったのだが、シンガポールから来た人事の連中が失礼な奴らで、面接の席を蹴って立ってきた。


上司が嫌で他の外資系へ転職して「逃げた!」と思っていたら、1年後にその上司がまた上司のポジションに降ってくるという嘘の様な話が多々ある。

「何だ、先に来て俺を待っててくれたのか。」と、勘違いされるならまだマシ。

退職時に悪態をついたり、引き継ぎを適当にしてきていたら大変。次のリストラ要員にまず決定。

外資系の世界は狭いので人間関係にはくれぐれもご留意を。


外資系でも金融機関の場合、合併などによりポジションが重複し退職を余儀無くされる場合がある。

一番ラッキーなのは他社への転職が容易で、退職金とストックオプションの高価買上げをして貰う場合。

「退職金でマンションを買ったよ。」と、言う米国系投資銀行の元ダイレクター。

「どんな部屋なの?」と、聞くも。

「部屋じゃなくて一棟買ったんだ。出物があってね。」

悠々のマンション・オーナーである。


但し、法律や会社の規則に違反した場合、手を染めた当人は当然として、これらを取り締まる立場の人間に対する処分も厳しい。特に米国流に言うと株主に帰属するはずのお金に手をつけた場合、コンプライアンス違反の場合が厳しい。

よく外資での解雇は突然に言われて、即刻オフィスから退場という噂を聞いていたが、実際にその現場に居合わせた時には震えを抑えきれなかった程。昼頃に日本の経理部長、英語で言うところのコントローラの上司が香港からオフィスにやって来た。そして1時間位すると経理の女の子から電話。「経理部長が今日付けでクビだって。」急いで彼の部屋に行くと、「あと2時間以内に出て行け。」と言われたとのこと。

目が真っ赤だったことが今でも鮮やかに思い出される。


あと気を付けなければならないのがハラスメント。セクハラは元よりパワハラも証拠を握られたらまず逃げられない。いい歳をした役員クラスが若い娘を可愛がる余り、出張先でホテルの自室で飲もうなんて誘うのは即死。レポートされれば、事情聴取されてアウト。そこまでの魂胆が無くとも抗弁のしようがない。

それなのに何故か黙認されるのは社長と秘書との大ぴらな関係。驚くのは社長が移動すると秘書さんも一緒に移動すること。どこまでも付いて行く。奥さんも知らないはずないのだが、英雄色を好むということなのか。


もう一つ避けて通れないのが世代交代。

外資系の社長の位置付けは実は多くの場合、営業のトップだ。決して日本企業の社長の様な役割を期待されているわけでは無い。よって営業部隊が飽きてくるとテコ入れとして頭の据え変えを考える。このやり方が巧妙で下にいたNo2を昇格させて、同じ職位の者は二人要らないので、どちらが残るか決めろと。元のトップには本社での部長クラスのポジションを提示。国のトップでも本社の部長クラスというのが現実。大抵は後輩に路を譲るのが日本の美学。席を譲った元の社長、過去のストックオプションやリテンションボーナスの精算でかなりの金額を手にするが、暫くすると別の外資系の社長などの地位に就く。但し、どこかでコケるとそのニュースは人材市場を駆け回って、かつ一度社長の地位に就いた人を社長以外のポジションで採るといことは普通はしないので、こうなると事実上"あがり"。自分で会社を立ち上げる人も多い。


色々と外資系の退職に関する話をしてきたが、これらはかなり極端な例。

普通に能力を発揮出来ていれば何の心配をする必要もない。外資系企業の日本からの撤退も、今や日本企業も部門の売却、撤退、はたまたシャープの様に自らが外資系の傘下に転じる事例も増えて来ている。何が起こっても大丈夫な様に日頃から自己研鑽に励んで、また自分の市場価値を確かめることが、退職を予期せぬものにしない為には重要になっている。



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