なんちゃって外資系 その8 ベンチャー企業へのお誘い編

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ベンチャー企業というのは将来性があって、大金持ちになれる可能性がぶら下がっている。リスクも有るけど自分の能力を思う存分活かせる。と、いう勘違いと、余りにものリスクが有るとの勘違いが共存している、そんなベンチャー企業について。

ウェブサーチで「ベンチャー企業」と検索をすると、

「ベンチャー企業とは、新技術や新しいサービスを基軸として事業を推進していく企業」と出てきませんか?

あまり知られていないが「ベンチャー」と言うのは中世のイタリアで始まった謂わば「投資プロジェクト」にその起源を持つ。

富を得る野望を持った者が資金スポンサーを集めて船を建造。そして一緒に未知の土地へと「獲物」を求めて航海をする乗組員を集い、香辛料や金銀銅などの鉱物を求めて航海を行い、「獲物」と共に帰国を果たすとそれを換金して、資金スポンサー、乗組員の貢献に応じて配分をして解散するものであった。

ここで重要なのは乗組員が航海、貿易に必要な技量を持ち合わせていて、それらの能力を発揮して成功裏に帰国すれば、その貢献に応じて報酬を受け取れること。

もちろん途中で船が沈没、漂流して失われたり、到着地で原住民と争いになり命を失うことも少なくなかった。正しくハイリスク・ハイリターン。


ベンチャー企業は特徴としては規模が小さい。ファウンダーと言われる創業者が数人でガレージで始めると言うのが典型的。アップルやTwitter、Googleの創業時の話は有名であろう。

多くの場合、売るものが未だ無い。製品はアイデア段階で製品のコンセプトを詰めて、製造し、販路を探すという作業が同時に急スピードで進む。

と、言うか急スピードが必要である。売るものが無いということは収入が無いわけで、一方で費用は掛かる。よって会社を運営する為の資金がドンドンと減っていく。

資産も無いので一般の銀行から資金を借り入れるのも難しく、当座は創業者の預金、家族や親戚・友人からの借金に頼ることになり、大きな金額にはならない。

優れたアイデアに基づいたビジネスプランが出来ればベンチャーキャピタルというスタートアップの会社に投資する金融機関からの出資や借入をすることが出来るが、最初の段階では金額は知れている。

何故なら日本のベンチャーキャピタルはアメリカの様なプロとしての独立系の者が少なく、将来の上場時の幹事を狙う証券・銀行系、政府地方公共団体系のものが多く、「目利き」の能力が低いので大きなリスクは取れず、各社が少しずつ出資する形態を取ることが多いからだ。

そして売上も発生してきていよいよ上場準備に入ったとしても、上場まで行き着くのはIPOブームの時でも高くて10%、通常では1%にも達さないのでは無いでしょうか。

求人案件を見ていると「上場準備中につき社内体制強化の為の増員」と採用理由が書かれていることがあるが、どの程度確度があるのかを検証することが重要だ。証券会社、コンサルティング会社、会計士、弁護士と上場を巡ってお金が流れ込んでくる関係者は多い。彼らは上場が成功すれば当然潤うが、成功しなくともフィー、料金が毎月入ってくるので、確度が高く無い案件に対しても、上場の提案をし、そうして世の中に「上場予備軍」なる会社がゴロゴロと現れることになる。


給料は一般的には安い。支払う余裕が無いからだ。それを補うために株式を給与の一部として与えることがあり、後に株式公開されれば大きな金額を手にすることができる。

但し、実際に上場まで行き着く会社がほとんど無いとすると、ベンチャー企業で働くことは単なる博打になってしまうのだろうか。


時間もお金も人も無く、あるのはやるべき沢山の仕事。会社の規則や制度もこれから作って行かなければならない。上場準備の為にフィーを払っているコンサルタント、会計士、弁護士から、色々と教えられることもあり、授業料なしでMBAコースに行く様なもの。

それよりももっと貴重なのは、会社のオペレーションの全てに携われること。関わらざるを得ないとも言えるが。ここで得た知識は現場に紐付いた貴重なもの。

何故ならマイクロソフトにしろアップルにしろ今でこそ国内に多くの拠点と従業員がいるが、日本に最初に進出した時は小さなオフィスで少人数からの始まっている。同様に電気自動車や斬新な技術で本国で成功を収めたベンチャー企業が、所得水準も高く人口も多い我国に次々に進出して来ている。

つまりスタートアップに長けた人材に対する需要が常にあるということ。

レアな人材にであるので実績のある人であれば引く手数多。


外資系のトップになった方が必ず言うのが「現場で修羅場に揉まれた経験が重要」。

これは2つのことを言っているのであり、一つがプロセスに強い、もう一つは相反する様ですがプロセスが無い様な混沌とした場合でも何とかできる能力があるということ。

その様なしんどいけど貴重な経験をできるのがベンチャー企業であると言えよう。

その意味では若い人ほど初期投資の効果が長期間得られるので、是非ともその世界に飛び込んでもらいたいと切に願っている。





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なんちゃって外資系 その9 そうは言ってもいる編

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