賭け

年に数回しか帰ってこない伯父さんが


昨日からうちに泊まっている


そんな時は決まって俺も よう坊主 お前も付き合えよ みたいな感じで


夜まで酒に付き合わされるのだ



酒はさほど好きではないが 伯父さんの土産話と 珍しいお土産は 俺にとってなかなか心を躍らせてくれる代物だ



おーい 坊主 氷もって降りてこいー



案の定呼ばれた



アイスペールに山盛りに氷を盛って


リビングに降りると


くわえたばこの伯父さんが 無造作に素手で氷を手に取り



グラスに放り込む



琥珀色の液体をトクトクと流し込んで


乱暴にこっちにスライドしてくる




おう で お前さんは童貞を捨てたのか




とデリカシーの欠片もない質問を おやじのいる前で投げかけてくる伯父さんに



貰ったお土産なら捨てたよ と厭味ったらしく返す




そうかそうか


気にも留めない様子で伯父さんはおおきな包みを開く



中には台形の木でできた 置物があった




『今回はこれだ』



『なんですかそれ』



『あー これはな16世紀にイタリアの靴職人が使っていたものだ


この上に靴を載せて最後の仕上げをやるんだよ




まあ今じゃ観賞用にこの上にビンテージの靴を置いてディスプレイしたりする店なんかもあるから



名付けるならばそれは机だな ははは』



なんで机なのかわからないが



その形状は確かに小人の机みたいにも見えてくる





『どうだ 気に入ったろう?



これはバチカンの衛兵の家に泊まった時に 賭けに勝って手に入れたんだよ』




溶けかけた氷が カラン と音を立てる



『賭け?


なんの賭けをしたの?』



そう聞くと


『じゃあお前もやってみるか






俺がコインを投げる


表なら俺の勝ち

裏ならお前さんの勝ちだ



勝った方が負けた方の持ち物を頂く




簡単だろ?


お前は何が欲しい?』



俺は伯父さんの時計に目をやった


ブランドの名前は忘れたけど

珍しいものだって自慢していたのを覚えている



それをみて伯父さんは 『坊主もなかなかの目利きだな


よし


乗った



もし俺が勝ったら。。 そうだな



お前の魂を貰おう わははは』




『たましい??』



『ああそうだ 魂だ



もうこの賭けからは逃げられないぞー』




伯父さんはそういってコインを投げる




クルックルっ チャリリリン



コインがお土産の置物にぶつかって転がり 机の下に落ちた




拾おうとして下を覗き込むと


体が動かない



そして伯父さんの声だけが聞こえてきた



『これは甥っ子と賭けをして手に入れた代物なんだよ 』

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