しかし、実際にやっていることは・・・

しかし、実際にやっていることは・・・

私は名古屋大学の教育学部を卒業してから、ずっと受験指導にたずさわってきた。こんな指導をしていると、自分の研究というより生徒を教えることに喜びを感じるものだ。そこを評価されて、飯のタネにもなるのだから真剣にやる。

受験業界で名を轟かせているのは、関東では「開成高校」だろうし、関西では「灘高校」だろう。ここ三重県北部の近くでは、名古屋の「東海高校」かもしれない。どうせ指導するのなら、そういう高校で指導したいものだが、ここは田舎すぎる。

もちろん、無名の高校に通っている優秀な子も北海道から沖縄までいるだろう。そんな生徒を指導するといっても、日本は広い。夢物語でしかなかった。それに、そんな日本を代表するような上位の子を指導するのは、向こうからお断りかもしれない。

 ところが、4年ほど前から高校生の間で急速にスマートフォンが普及した。それで、私はスマホの写メで送受信する「通信生」を募集し始めた。すると、過去4年間に、北海道から鹿児島まで通信生が増えた。

  そして、京大「医学部」3名、阪大「医学部」1名、名大「医学部」1名をはじめとする合格者が出始めた。その中には、上記の開成高校の生徒の方も含めて、名だたる有名校の生徒の方たちが含まれる。

  この駄文を読まれている人以外は、誰も気づいていないが、私は英語の資格で最高と言われる英検1級や通訳ガイドの国家試験に合格している。京大を7回受けて、得点率は英語8割、数学7割だ。そして、指導させてもらっている生徒は日本最高。

  この現実に、実は圧倒されて驚いているのは、私自身だ。4年前に、ひっそりと始めた時は、このような事態は予想していなかった。日本最大のブログサイトの「アメブロ」の受験生ランキングは1位。一体、なにごとが起こっているのだろう。Youtube の動画は39万回も再生された。

  インターネットを開発してくれた研究者に感謝している。アメブロやYoutubeに感謝している。ローガン中学校で、私に英語を教えてくれた、アラン、エリックに感謝している。なんと良い時代にめぐりあわせたのだろう。私の力ではない。

    

英検1級をめざしていた20代の頃は、英検1級なんて雲の上の存在で、一生合格できそうにないと思っていた。文系出身の自分は、数学Ⅲを勉強することなど、一生ないと思っていた。ましてや、現役時代には不気味にしか思えなかった理Ⅲや京大医学部を受験する生徒を指導することなど、ありえないと思っていた。

  その全てが実現している現状に呆然とすることがある。塾生の子には「コツコツやれば、いつか夢は現実になる」と励ましながらも、心のどこかで「無理かも」と考えていた自分がいた。

  河合塾や駿台といった、有名な予備校があるのに、どうして無名の片田舎に住んでいる私などに英語の添削依頼がくるのか。最初は不思議だった。でも、今はその理由が分かる。優秀な子たちは、その指導に満足していない。

  地方には高校生を指導できる教師や講師が少ない。普通の高校生のことではない。旧帝や国立大医学部をめざす高校生だ。開成や灘にはいるのだろうが、本当はもっと突っ込んだ質問がしたい。

  授業なら、動画やDVDでも事足りる。そうではなくて、自分の解答のどこが、なぜ減点されるのか。そして、どうすれば減点されずに加点される答案にできるのか。できれば、メールなどで気楽に、個人的に、際限なく聞きたいのだ。

  当然ながら、その相手は最高度の英語力の持ち主でなければならない。ところが、生徒たちは教師や講師に疑いの目を向けている。「この先生、本当に京大医学部に合格できる英語力なのか?」

  これが、私の通信生が増えた理由だ。私も若い頃は、名古屋の7つの大規模予備校や塾で14年間指導してきた。個人的な質問は受け付けてはいけない規則だった。不公平だし、個人的に親しくなるとセクハラなどの事件のもとになるからだ。

  しかし、私は生徒の顔が分からない。北海道から鹿児島まで生徒がいるので、会えるわけがない。セクハラなど、絶対に起こらない。また、メールは365日24時間受付可能だ。我ながら、うまい制度だと思う。改めて、ネットに感謝。

  そのうち、どこかの誰かが気づくかもしれないけれど、今は誰も私が開成の生徒を指導しているなんて夢にも思っていない。ここは、三重県の片田舎だから、鹿児島の生徒を指導しているなんて想像もできないだろう。

  私が通りかかっても、ハゲ頭のおっさんにしか見えない。笑える。小さなプレハブの無名の個人塾。「そのうち、つぶれる」と中学生にさえバカにされる。しかし、そのハゲ頭のおじさんが、実際にやっていることは ・・・・。

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