芸能人になりそこねた塾講師、ジャッキー・チェンに会う

芸能人になりそこねた塾講師、ジャッキー・チェンに会う

 大学3年生の夏だった。当時の人気番組「TVジョッキー」で奇人変人大会というのがあった。私は、ブルース・リーに憧れていてヌンチャクが使えたし、中学時代は体操部だったのでバック転など朝飯前だった。

 実力のある拳士もいいのだが、1人の力には限りがある。映画を通じての影響力には負ける。それで、面白半分の気持ちで応募したら返事がきた。それで、上京して出演することになった。足刀でろうそくの火を消せたのだ。

 この頃、あるタレント養成所に通っていたのだが、レッスン中に着替え部屋から財布が抜き取られていた。ロクな人間が集まっていないのは、レッスン中に感じていた。

 それで、別の事務所のオーディションが大阪の丸ビルであったので出かけてみた。審査を受けたら、「合格なので東京に出てこないか?」と社長らしき人が言った。

「TVジョッキー」の画像検索結果

 それで、思案していたら別の中年女性の審査員が近寄ってきて「ねぇ、キミ。キミは国立大学の学生でしょ。この世界はヤクザな世界だから、そのまま卒業した方がいい」と言ってくれた。

 卒業後は、愛知県の刈谷市で塾講師をしていた。その頃、売り出し中の香港のアクション・スターが同じ「TVジョッキー」に出演すると言う。それで、再度応募したら、すぐに返事が来た。今思えば、ジャッキー・チェンの引き立て役だったのだろう。

 スタジオに向かう途中で、ラフな格好の男の人とすれ違ったら「ハロー」と言う。それで、ふり返ったらジャッキー・チェンだった。でも、私は彼に興味はなかった。本格派のブルース・リーとは違っていたから。

 特別賞の白いギターをもらった。「高木繁美」で検索してもらうと、録画したものがYoutubeに投稿してあります。→ 

ジャッキー・チェンと「TVジョッキー」で共演しました。

  


(7000回再生)https://youtu.be/sMdPLgzTjeQ  

 その後、アメリカで教師をすることになったが、体育の時間に拳法のデモンストレーションを何度もやることになった。生徒集会の舞台でも、ヌンチャクの演技をしたら、ウケた。

「TVジョッキー」の画像検索結果


帰国後は、自分の塾を持った。その後、10年くらいは塾の授業のかたわら、英語検定1級、通訳ガイドの国家試験、国連英検A級、ビジネス英検A級などに合格することに専念していた。

 結婚して、子供も生まれ、英語と数学にくわえ、理科と社会も教え始めたので授業と勉強に忙しかった。成績処理にコンピューターを導入したので、操作の方法やら、ネットが普及し始めたので、そちらの勉強もしていた。

バブルの頃だったので、土地を買い、建物をたて、融資や税金対策や、やることが多かった。教育学部で習った空理空論など、なんの役にも立たなかったから、一からの勉強だった。

 塾生に望まれて、高校数学も指導することになり、センター試験を10回、京都大学を7回受けて、もう塾講師にどっぷり。英語と数学にめざめてしまった。

 俳優など河原乞食。しょせん、拳士のマネ。英語を話せるフリ。学者のフリ。中身はカラッポ。そう思うことにした。


 「ジャッキーチェ...」の画像検索結果

 ところが、還暦近くなって、はげ頭になって少し違う視点が生まれた。確かに芸能界は、ロクな人が集まっていないように思う。しかし、塾業界はどうなのだろう。

 英検1級や通訳ガイドの国家試験に合格し、京大二次で英語8割、数学7割を取れる塾講師は少ない。しかし、こんな田舎で少数の生徒を相手にしていたら、存在感はゼロ。影響力はゼロ。自分の得たものを、多くの人に役立てることが出来ない。

 中身がなくて、知名度だけではダメだ。しかし、中身があっても、今の時代は知名度がないと存在しないも同然だ。そして、思い出した。「なぜ、ブルース・リーは支持されたのか?」

 彼の前のアクション俳優は、演技をしているだけだった。ところが、ブルース・リーは本物の格闘家だった。本物であるという裏づけ。それがあるから、彼の演技は別物だった。それが、見るものを感動させた。

「飛び出せ!青春」の村野武範さんとツーショット。
 飛び出せ!青春 - From☆aiyou00 - Yahoo!ブログ

 私は、この世が不条理だと知っている。受験業界も腐っている。お金を儲けて豪邸に住み、愛人を囲い、飲食にふける。そのために、真摯に教育に向かい合わずにタレントを使ってCMを流しまくる。

 暴走族講師、ヤンキー講師などのパフォーマンス講師が何億円も儲ける。マジメな講師は埋もれて、誰にも知られない。そんな世界だ。芸能界と、大して違わない。事実、予備校講師や塾講師からタレントに転身した人もいる。

 私の塾生の子たち、特に理系女子は私などよりずっと賢い。現役時代の私の英語や数学力より上という意味だけではない。アニメのCMや大きなビルなどに見向きもしない。

 世の中には、予備校経営者の策略に乗らない中学生や高校生もいる。「飛び出せ!青春」の村野武典さんとツーショット写真を撮らせてもらう機会があったが、塾生の子たちは全く興味を示さなかった。

 人生は、自分の計算どおりに行くわけがない。実力だけの世界なら、無冠の帝王なんて言葉は存在しないだろう。芸能界も政界も二世、三世だらけが現実。

 あの女性審査員は、どなただったのだろう?私の拳法のレベルは大したことないし、イケメンでもない。芸能人の道に踏み込んだら、今ごろ野垂れ死にしていたかもしれない。

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