新卒で入社した一部上場企業が民事再生法適用になった話 その5

前話: 新卒で入社した一部上場企業が民事再生法適用になった話 その4

「倒産」というと「会社更生法」だったのが最近は「民事再生法」の申請・適用が増えてきている。

会社更生法は名前の通り法人に限定され、利害関係者が多くその調整に時間が掛かる場合に裁判所の選任した「破産管財人」の強いリーダシップの元に旧経営陣の退陣、株主責任の明確化で正に一からの出直しを図るもの。

一方、民事再生法は個人、法人の双方に適用され、利害関係者が少なくスピーディーな再生計画の承認が期待される場合に適用される。

一番の違いは民事再生では旧経営陣が再生計画に携われること。スポンサーの選定に関与して、経営を継続することも可能である点。

スカイマークの再建が民事再生法の元で行われたのも、リース会社等に大口債権者が限られていた為。

同様にこの会社の場合も債権者は銀行団、商社、船主に大きく分かれたが、比較的大口が多く調整が容易であった為に民事再生法を選んだと思われる。

当初は商船三井がスポンサーになるのかが焦点だったが、同社から来ていた社長が再建案が固まった所で引責辞任と言い出したあたりから、

「単なる一出資者に過ぎない」との立場や、

「社長は要請されたので人材を送った」というコメントが相次いで明らかに逃げの姿勢が見て取れた。


そうなると「三光汽船」の再生に名乗り上げた海外ファンドや、第三者割当増資に応じた大手商社も考えられたが、市況が数年は回復しそうもない中で引き受けることはリスクであってこそすれメリットは少ないと判断されたようである。

資産の売却の過程で住友金属向けの商権もほとんど無くなった同社の魅力はほぼ無くなったということであろう。


結局、スポンサーが決定できずに更生計画の提出を一回延長。

そこで出てきたのが船主を中心とする債権者による出資。

船主の中には同社との取引で始めて外航船を持てたという会社もあり「運命共同体」的な心情を持っていたところもあった。

より現実的には、同社が潰れても「船」はどこかに貸さなければならない。市況が悪いので足元を見られるのは必至。

「それじゃあ市況が回復するまで、船の貸出先として付き合う。」という判断もあっただろう。


この再生計画の承認を持って社長及び主だった役付き役員は退任。

船主並びに専門商社からの社外監査役を迎え、私の数年先輩が社長として、また先輩、同期が若返った経営陣として再出帆の航海に乗出す。

海はまだ波高く、その先は霧に包まれている。

しかし何とか次の大陸=好況まで荒海を乗り切って行って貰いたいと祈念している。




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