B52戦略爆撃機がクリフの向こうに消えていった

先週グアムで「B52爆撃機が墜落」というニュース。そのニュースを聞いて5年前のグアムを思い出した。

B52はアメリカのボーイング社が開発した戦略爆撃機。

1940年代に開発されてから今日に至るまで米軍の主力爆撃機としての地位を保っているのには驚かされる。最新型の生産中止から既に半世紀経っている。

アメリカ人には悪夢のベトナム戦争や湾岸戦争での出撃で「死の鳥」という悪名も頂いている。

北朝鮮の核実験に対する牽制として今年初めグアムのアンダーソン空軍基地から韓国のオサン米国空軍基地上空を低空飛行して、「米国の核の傘」を北朝鮮にまざまざと知らしめた。


そのB52を見たのはもう夕刻。陽が海岸線に沈もうとしている頃だった。

その時私はアメリカの公認会計士の試験の受験でグアムに来ていた。

(現在では日本国内でも受験が可能)

試験はその日の午前中に終了していたので後は夕食を食べて翌朝の帰国に備えるだけだった。

(今日は自分へのご褒美ってやつでステーキでも食べようかな)

夕陽に輝くグアム島の北部を見やりながら考えていた時だった。

それは音も無くスーッと視線に入ってきた。

ちょっと見は黒い飛行体。

翼は後退翼で異様に長く感じられ、その下に4基のエンジンをぶら下げている。

大きな要塞が浮かんで動いている様で言いようのない不気味さと存在感を示していた。

その大きさのせいか、島の北部にあるアンダーソン空軍基地へ着陸する為か、速度はゆっくり。

遠ざかっていく時にはもう夕陽も水平線の下に沈み、4基のエンジンから放たれるオレンジ色の光が不気味さを際立てていた。

あたりは涼しくなってきていたが。鳥肌になっていたのはそのせいばかりではない。


眼下のプールでは親子3代で来ていると思われる家族連れが、まだキャーキャーと騒いでいる。

もうじきバーベキューと「ポリネシアンショー」がプールサイドで始まる。

日本から3時間半のフライト。時差も1時間。

小さい子供やお年寄りでも無理無く来れる。

どうも関西からの旅行客が多い様で「ヒョウ柄」をまとった女性を多く見かける。

ゴルフバックを背負ったシニア世代の日本人も多い。

先ほどのB52には誰も気がついていないのであろう。


北朝鮮がミサイル開発や核実験を繰り返す一方で、アメリカでは駐留米軍の費用は駐留地の国が持つべきだというトランプが大統領候補にならんとしている。

そしてここグアムがそんな米軍の太平洋における核戦略の中枢。沖縄の海兵隊の移動先でもある。

こんな楽園の様な島でも世界の紛争の影響を受けずにはいられない所に、今の世の中の矛盾がある。



ストーリーをお読みいただき、ありがとうございます。ご覧いただいているサイト「STORYS.JP」は、誰もが自分らしいストーリーを歩めるきっかけ作りを目指しています。もし今のあなたが人生でうまくいかないことがあれば、STORYS.JP編集部に相談してみませんか? 次のバナーから人生相談を無料でお申し込みいただけます。

著者のTachibana Toshiyukiさんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。