サイパン島の森の中で出会った人 その2

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日本軍玉砕の地サイパン。今は南の島のリゾート地。そんなリーゾト生活を楽しんでいた我々だが。

海に入るとビックリ。

遠浅の砂地の海底に黒い長っぽそいものが一面ゴロゴロと転がっている。

踏まずに歩くのが難しいくらいだ。

思わず「ウンチ」と叫びそうになる形状だ。

(まさか目の前のホテルのトイレが垂れ流し?)

それから皆んなでその正体を巡ってケンケンガクガク。

「山の中から大雨でバナナが流されて来て腐った奴だ。」

「自転車のタイヤのチューブが焼け焦げたものだ。」

しかし、かりにも一流ホテルのプライベートビーチにそんな物を残しておくものだろうか?

恐る恐る手に取って見ると、表面はざらざらしている。

両端には穴が開いている。(生き物なのだろうか?)

でも全く動かない。

誰かが「これナマコじゃない?」と叫んだ。

「ナマコ??」

漢字で書くと海鼠、の酢の物にすると日本酒と合う奴?

どうも居酒屋で見た奴とは色が違うが何となく同一の仲間の様にも見える。

こうして「ウンチ」騒動は解決。

反抗しないナマコを蹴散らして我々だがはビーチに帰還した。


昼食を兼ねてレンタカーで街に出た。

顔に当たる風が気持良い。島の海岸に沿って走っている道路を進んで行く。

所々にスーパーマーケットがあり、そのうちの一つで飲み物やつまみを買う。

アメリカのスーパーの様で(その頃は未だ見たことが無かったのでイメージ)広々としていて、中を見て歩くだけでも楽しかった。

隣にハンバーガーショップがあり、そちらで昼食。

ここでバトル発生!

タバコを吸う輩同士が「貰いタバコの量が多い。」「いや累計だとお前の方だ。」と一発触発。

「もう社会人なんだから。」と休戦斡旋。

「近くの海に戦車が鎮座している所があるから、そこにでも行ってみるか。」

と言うと、揉め事の当事者の一人、例の「右翼」が、「よっしゃー」と声を上げる。

南の島のスコールみたいなものだったバトル。


街を外れて再び海岸線に出る。ここの海岸線は弓状を描いており海水も淡い水色で美しい。

駐車場に車を止めビーチに向かおうかと言う所に椰子の木が林立していた。

「喉が渇いたな。」

「右翼」はそう叫ぶとヒョイと椰子の木に登り始めた。

彼は某大学体育会ボート部。伝統あるWKレガッタという隅田川春の風物詩の対抗戦で8(エイト)という8人乗りのボートでコックスという舵取役だった。残念ながら艇の設計が悪く浸水して沈み行くボートの中でお玉で水を掻き出すも沈没という不名誉な歴史の持主。

未だに過去のWK戦の回顧となるとそのビデオが流される。

コックスはボートを漕ぐわけでは無いので身体が小柄で軽い方が良い。

よって木登りにはうってつけだった。

「よーし。実を落とすぞ。」

そい言いながらヤシの実を次々に落として行く。

(全ての椰子の木には所有者がいる)と聞いたことがあったが、(ちょっとだから旅の者に施しを)と勝手な理屈を付けて頂くこととした。

と、ところが椰子の実を割る道具など持ち合わせていない。

そもそも何で割るんだ?

ここでもかの「右翼」が活躍。尖った石を斧の様にして穴を開けていく。

繊維質なので結構硬い。でもそうして15分くらい奮闘すると中の果汁が飲める位の穴が開く。

それを皆でまわし飲みしていく。

「うまい!」

冷えていないのが残念だが、ポカリスウェットの薄い奴の様な味。


そしてその頃、「右翼」は次の行動に移っていた。


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