サイパン島の森の中で出会った人 その3

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卒業旅行で訪れたサイパン。そこには戦時中の遺構が沢山残されています。

気がつくと「右翼」が海岸から数百メートル先の海中からその砲塔の部分を現している赤く錆びた戦車に向かって泳いでいる。

彼は変わった経歴の持主でK大学に入学する前は「商船高専」にいた。

将来の「船乗り」を養成する5年制の専門校だ。

航海術などの技術も学ぶが、ボート漕ぎや遠泳等の運動でも鍛えられるそうだ。

大きな戦車のボディー部分が水没しているのであるから結構な深さのはず。しかし、そんなことには露をも気にせずにドンドンと泳いで行く。

そして片手には木の枝につけた布の様な物をくくりつけたものを持っている。

(器用なものだ。忍者か?)と、ついに戦車に上陸?。

遠くからでも「右翼」の得意げな表情が見て取れる。

そして木の枝にくくりつけた物を高く掲げた。

⁉︎ 

何とそれは「旭日旗」。赤と白の線が中央の赤丸から伸びて太陽から陽が射している様に見える旗だ。

韓国が「スポーツ選手のユニフォームの模様に旭日旗が隠されている。」とクレームしてきたことがある旗。大日本海軍の旗だからだ。

(そんな物をここサイパンで掲げて、、、)

「右翼」は相変わらず満面の笑顔をたたえて身振りで「写真を撮れ」と指示している。

(良いのだけれど、それアメリカ軍の戦車だよ!)


その夜はホテルの近くの「チョモロ料理」店へ。

深海魚の様なもののココナツミルク煮、「ケラグエン」という鳥や魚を細かく刻んで玉ねぎやココナツの刻んだものと混ぜてレモンを絞ったもの、豚肉の甘く煮た物が主菜で、それをレッドライスという赤い御飯に乗せて食べる。

日本で言うところの「定食」。

レッドライスはケチャップライスの様に見えるが特に味は無いので、食べてて違和感はない。

白いご飯も選べる様だったが我々は皆んな折角なんだからとレッドライスにした。

ビールはアメリカ?だからと「バドワイザー」。

それから毎晩滞在中は夕食はこちらで。


ホテルに戻りディスコへと繰り出す。

サイパンまで来てディスコ?と、問われそうだが、その当時日本ではディスコブーム。

他に選択肢はなかった。

薄暗いディスコの中のでミラーボールが輝く。

その中で明らかに他の人達と異なるオーラを出している女の子がいた。

周りをスタッフと思われる男女数人に囲まれて踊っている。

「誰だろう?」

「松田聖子?」「違うな。」

それはその年に歌手デェビューしたばかりの「森尾由美」だった。(正確には歌詞デビューは3ヶ月後)

「やっぱり芸能人って可愛さが半端じゃない。」

我々は森尾由美を遠巻きにしながらつぶやいたものでした。


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