【第2話】父子家庭パパが所持金2万円からたった一人で子供2人を育てた10年間だったけど、これで良かったのか今でも分からずに文字にした全記録を、世に問いたい。

【第2話】父子家庭パパが所持金2万円からたった一人で子供2人を育てた10年間だったけど、これで良かったのか今でも分からずに文字にした全記録を、世に問いたい。
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さしあたっての不安は、お金がないことと時間の使い方がわからないこと。

父子家庭になって子供たち2人の子育てを始めてからというもの、自分の時間などなく、気が付いたら朝で、気が付いたら夜だった。とにかくやることがなくならない上に、慣れていないために時間を効率よく使えないのだからこういうことになる。

仕事に追われているとか、予定が目いっぱい詰まっているとかでの時間の使い方は、自分で時間の配分やペースをコントロールすれば良いのだけれど、子供が小さい時の子育てというのは、とにかく自分の考えで時間の割り振りやペース配分を決めることができないのだということを、いやというほど痛感した。

とにかく言うことを聞いてくれない。

幼い子どもたちだから、仕方がない。それは分かっている。

分かっているけど、言うことを聞いてくれない子供のペースに合わせなければいけない生活というのは、予想以上のストレスだった。

朝起きれば、朝ご飯を作らねばならないのだが、何分あればそれらが仕上がるのかわからない。

必要以上に早起きをして、朝ごはんとお弁当を作りはじめ、その間に散らかったリビングを片付ける、昨晩やり残した洗濯物をやりながら子供たちを起こす。上の子の着替えを出してやって、下の子の着替えも済ませなければいけない。

ランドセルの中に入れるもの、出し忘れているプリントなどはないか、連絡帳を再度確認し、子供たちの着替えが終わって、顔を洗ってあげたら朝ごはんを食べさせる。ご飯が終われば歯を磨かせるのだが、磨き残しがないか仕上げ磨きをしてあげなくてはいけない。

上の子の寝癖を直してあげたら、ハンカチとティッシュをズボンのポッケに入れて帽子をかぶせ、下の子を連れて外に出る。登校班が待っているところまで一緒に行き、下の子と一緒にお兄ちゃんをお見送り。そのまま家に戻り、後回しにしてしまった下の子の歯磨きからやり直す。下の子に幼稚園の制服を着せたら帽子をかぶせ、ハンカチとティッシュをポッケにいれて準備完了。車に乗せ幼稚園まで送っていく。幼稚園は車で15分程度のところにあり、幼稚園に預け戻ってきてだいたい9時。

そこから終わることのない、洗濯物の残りをやってしまわなければいけない。

洗濯物を干し、朝ごはんの済んだ食器を片づけ、掃除。布団を干して掃除機をかけて、床の雑巾がけ。パソコンをチェックしメールの返信などしていたら、あっという間に12時になっている。

近所のスーパーに買い物に行き、晩御飯の食材を調達。

下の子の幼稚園のお迎えのついででも良いのだが、まだ幼稚園の下の子を連れていくと、余計な時間がかかるのでいないうちに済ませてしまう。

買い物をし、外に出たついでにほかの用事も片付けたら、家に戻って14時。

仕事など、できる状況ではない。

幼稚園は14時から帰りのお迎えなので、また急いで幼稚園に行き、先生に園での様子を一通り聞いたら帰宅。帰ってきて手を洗ってうがいをさせ、チャンネルは大好きなアニメ。その間に晩ごはんの用意をしてしまう。

1時間もすれば下の子はアニメに飽きてしまって、晩ごはんの支度をやめ一緒に遊んであげなければいけない。下の子は外に出て遊ぶのが大好きだったから、一緒に外に出て、散歩をしたり自転車に乗ったり、砂場で遊んだりボールで遊んだりした。そんなことをしていると上の子が学校から戻ってくるので、あとは上の子に任せてまた晩ごはんの支度に取り掛かかる。

父子家庭になって10年間、ある一つのルールを決めてそれをかたくなに守っている。

「どんなに忙しくても、どんなに大変でも、食事は手づくり」

お金もなかったし、一人だし、きっと大きくなっていく子供たちに何も残してあげられないだろうと思っていたのだ。だからせめて、父親が毎日一生懸命ご飯を作ってくれたという記憶と、健康な体だけは残してあげたいと、考えていた。レトルトや冷凍食品、インスタントの類は使わない。食材はいつもフレッシュなもので、そして手作り。高校を卒業してからずっとコックだった僕が出来る、勝手に決めた子供たちとのたった一つの約束。

子供たちとの約束を果たすのは、考えている以上に大変だった。小さい子供2人抱えて、そんな悠長にご飯など作っていられない。ちょっと目を離したすきにどこかいなくなっているし、おとなしくしてるなと安心しているとこっそりイタズラをしているなんてこともしばしば。

その都度手を休め、何時間もかけてようやく作る晩御飯を、子供たちは毎日「おいしい」と言って食べてくれた。

「パパのご飯が一番おいしい」と、子供たちは何度も言ってくれた。

僕はそれがうれしくて、大変だったけど毎日毎日手作りのご飯を作っていたけど、誰かのために自分の時間を使わなければならないという生き方は、外で仕事をすればよい男の生き方に比べ、何倍も何十倍も疲れた。

子供たちを風呂に入れ、おやつを食べさせたらようやく子供たちの1日は終わる。一緒に布団に入り寝かしつけるのも僕の仕事。

1日中手を煩わせ続ける2人の子供たちも、寝かしつければ、その寝顔は天使そのものだった。子供たちの寝顔を、寝入ってからしばらくの間眺めている。

それは目まぐるしく過ぎる1日で、唯一といってよい楽しみだった。

自分の時間など全くなくて、やることは次から次へと押し寄せてきて、そのすべてが子供たちのペースに合わせながらこなしていかなければいけないという生活は、今まで味わったことのないほどの苦痛だった。自分のやりたいことなど、何一つできないし、子供たちのやりたいことも叶えてやることが出来ない。

子供たちを施設に入れてしまえばよいのではないかと思ったりもするのだけれども、子供たちに会えなくなる寂しさや、成長を共にできない喪失感、親がいるのに施設に預ける罪悪感を思うと、もう少し頑張ってみようと思いなおすのだった。

そんな僕を10年間、この父子家庭生活を支えてくれたのはほかの何ものでもない。

毎日眺める子供たちの寝顔と、僕の作ったご飯を「おいしい」と言ってうれしそうに食べる笑顔だった。

毎日子供たちの頭をなでながら、寝顔にこう言った。

「ありがとうね、ありがとうね、パパ、今日はもうだめだと思ったけど、あと1日だけ頑張るね、お前たちのために、あと1日だけ頑張るからね」

と。

「あと1日だけ」

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