【第16話】父子家庭パパが所持金2万円からたった一人で子供2人を育てた10年間だったけど、これで良かったのか今でも分からずに文字にした全記録を、世に問いたい。

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【第16話】父子家庭パパが所持金2万円からたった一人で子供2人を育てた10年間だったけど、これで良かったのか今でも分からずに文字にした全記録を、世に問いたい。
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学生時代の友人は、皆30歳も過ぎるとそれぞれ家庭を持ち、親の援助で家を建て、仕事でもそれなりのポジションを任され、たまの休みは家族サービス、子供の写真を見せあってはこれからの未来に誰もが目を細めていた。

昔の友人たちと会って酒を飲むのは楽しかったし、おしゃべりをして気分転換も出来てストレス発散にもなる。

だけど、僕と友人たちとは一つ切実に異なる点があった。

それは誰もがみな「明日」があるということだった。誰もが疑わずに、明日を待っている。

はじめは懐かしさも手伝って昔の友人たちとの時間を楽しんではいたのだが、ふと一緒にいても寂しくなる時がある。男友達は特になのだが、男一人で子供2人を育てているという現状、その苦労や苦悩や葛藤を、伝えようにもうまく伝わらないのだ。

友人たちはみな、子育てや家事をやっているとは言うのだけれど、それは僕にしてみれば「分担」に過ぎない。

奥さんがいて、自分や自分の両親、奥さんの両親がいて、子供たちがいる。

仕事があって給料をもらい、おじいちゃんおばあちゃんのそれなりの助けも受けながら生活しているわけで、僕みたいな父子家庭生活など、理解するのは難しい。

まともな仕事にもついておらず、満足に生活するだけのお金もない。毎日子供たちの生活に四苦八苦しながら、やりたいこともやれず、自分の人生など考える余裕すらなかった。

友人たちがまぶしかったし、うらやましかったし、その反面、ふざけるなバカ野郎人の気も知らないでと、どうしても一体感を得られない自分もいたのだ。

誰もが社会の一員として、自分の立場やら居場所やらを持っている。

よく考えてみたら、僕にはそんなもの何一つなかった。

家族がいて自分の両親がいて、仕事を持ち社会の一員として存在する人たちでさえ、生きるということはたやすいことではない。やることはたくさんあるだろうし、責任も果たさなければいけない。

分担をしながら、お互いの役目を確認しあいながらでさえ、生きるということは大変なのに、僕はそのすべてを一人でこなさなければいけない。

現実的にそのすべてを一人でこなすことは不可能で、毎日毎日できないことが山積みになっていく。

最低限やらなければいけないことでさえ手が回らずに、追い込まれていく。

自分の人生など考えられるはずもない。

別に自分がどれほど大変かなんてことを言いたいわけではなかったけど、少なくとも両親の助けを受けて家を建て、子供たちを育てている友人たちとは違う。

昔の友人たちとの時間は、いつしか思い描いていたものとはかけ離れていった。

間違っていても間違っていなくても、もう引き返せない人生もある。

友人たちの方がまっとうな社会人であるのは知っているし、自分自身ですら、自分が健全な社会の一員であるのかという疑問さえある。

いつしか友人たちと会うことすら、苦痛になってしまった。

本当は友人たちが眩しくて、うらやましかった。

ごく当たり前の会話もすれ違うほどに、友人たちとの生活環境とは乖離していて、感情を共有することが難しい。友人たちの好意でさえひねくれて受け取ってしまうほどに、父子家庭という生き方に迷っていた。

何をやってもうまくいかない。

たった一人で子供たち2人を育てるという苦労は、筆舌に尽くしがたい。

どんな時でもその時その時の自分自身を信じられなければ、一歩たりとも前へは進めなかった。

それは、正しいとか間違っているとか、いいとか悪いとかではない。どんな時も、頼れるのは自分しかいないのだという、覚悟。

両親が死んで一人の時間を楽しもうと友人たちと会い、それもまた今の生活には適応しないと分かると、また元の殻に閉じこもるようになった。

居場所を探して、さ迷っていた。

これから先、生きていくにはどうしたらよいのだろうか。

外に出て働くことが出来ないのなら、何とかして自宅でお金を稼ぐ方法を考えなければいけない。

慢性的な金欠は、生きる意欲を奪っていく。

誰かとつながりを持とうなどと考えるのはもう止めよう、それがいい。

オークションで不用品を売ってもたかが知れていたし、手っ取り早く一攫千金を目論み何か始めなければ、これ以上子供を育てていくことも出来ない。

情報を売ってお金を儲けるというシステムがあることは知っていた。

離婚して父子家庭になる前にも、お小遣い稼ぎでこの情報販売に手を出していて、ある程度のコツは知っていたし、お金を稼げるという実績も実感もあった。

実体のないものを売るという何となくの罪悪感はあるにはあったのだが、背に腹は代えられぬという切羽詰まった状況も確かだった。

気は進まないけど、これしかない。

商品としての情報は、当時全盛期を誇っていたであろうアンティークの仕入れ。

アメリカンアンティークと呼ばれるジャンルで、ファイヤーキング、パイレックスといった食器が日本のオークションんで高値で売買されていたのだ。

通常はどこからか仕入れてネットで転売する、というのが一般的な考え方。

では、仕入先である「どこから」というのがどこかというと、不思議なことにこれもネットだったりするのだ、それも国内の。

アメリカンアンティークだと言っているにも関わらず、仕入れ先は国内のオークションサイト。

これはあくまでも当時の話であることをご了承いただきたい。

つまり、当時一般的にアメリカンアンティークを最安値で買い求めることができるサイトがヤフオクであり、そこから仕入れて自分のホームページなどで転売するというもの。

アメリカンアンティークでありながら、日本国内で出回っている商品を安く買えるサイトで買い、それぞれの方法で高く転売するというシステム。

もちろん、現地アメリカで買い付けて日本で売っている人たちもいるにはいたのだが、それは海外に渡航できる数少ない人たちの特権であり、現地の蚤の市らしきところで商品を買い付けられる人など、ごくごく限られた人たちに過ぎなかったのだ。

つまり、ここに隙間ができるわけだ。

日本国内で高値で売買される海外の商品があり、それらを現地で安く買い求められる人たちは限られている。

需要と供給のバランスは、圧倒的に需要過多である。

安く仕入れたいが現地までは行けず、趣味でコレクションしたい人たちも高値で手が出せずにいる。あわよくば趣味がお金儲けになればいいと考える、転売目的のオークション予備軍がいる。国内で売買されている商品は常に品薄であり、海外には掘り出し物と呼ばれる商品が五万とある。

そしてなんといっても、仕入れ値の3倍から10倍という圧倒的高値で売買されている商品であるということ。

もし、これらの条件を満たす商品を現地に飛ぶことなく現地価格で仕入れて転売し、お金儲けをすることが出来たなら・・・

この情報は、売れる条件を満たしすぎているはずである。

それがまさに僕の持っていた情報であり、アメリカンアンティークの知られざる仕入れ先だったわけだ。

アメリカンアンティークは、もともとは趣味だった。

国内のオークションサイトでは高くてとても手が出ない。はじめは眺めているだけだったのだが、ある日パソコンの検索サイトに「fire king」と入力してみたところ、海外のサイトにアクサセスされ、現地の商品サイトが見れたのだ。

そもそもはこの経験がきっかけだった。

英語など高校卒業レベル、英会話なんてできないし海外に行ったこともない。外国の友人もいないし、ましてや海外からネットで買い物などしたこともない。

そんな僕が海外のサイトから商品を買って日本で転売しお小遣い稼ぎをしていた経験を文章にし、そのノウハウをまとめた情報をヤフオクで売ってみたわけだ。

海外のサイトも検索を重ねていくと、日本でやたら高値で売買されている商品、アンティークでありながら状態も良く値段も日本国内に比べると圧倒的に安い、ネット上の蚤の市のようなサイトに巡り合ったのだった。そこから片言の英語の文章で買い物をし、ヤフオクで転売したところ利益が出たのだった。

最初のうちは商品を仕入れて転売しその利ザヤを得るという、ごくごく一般的な方法でお金を稼いでいたのだが、そのマニュアル自体を売ってしまった方が手っ取り早いと考えたわけで、今は手っ取り早くお金を稼がなければいけない、まさにそのタイミングであった。

これが当時黎明期、流行り始めの情報販売というもので、情報の内容も値段もそれは販売者が思いのままに設定するのだ。

真偽の不明な怪しい金儲けの情報が、100万円なんてザラの時代。

現在の情報販売の内容は知らないが、当時販売されていた情報はどれもこれもクソのような金儲けの話だった。投資と市場調査のため何個かの情報を買ってみたのだが、実際にお金が稼げるようなものなどなかったのが実情。

「打ち出の小づち」と銘打たれた高額情報が氾濫していて、そろそろ情報を買い求める人たちにも疑心暗鬼が募っていたころだった。

「打ち出の小づち」とは、情報販売のページに商品の内容の説明を書くのだが、その説明というのが、誰でも簡単に金儲けができるという嘘のような夢の話、パソコン1台さえあれば、他に特別なスキルもいらないというもの。この情報を購入しさえすれば、必ずあなたもお金持ちになれるという保証付きの情報だった。

簡単に言ってしまうと、この情報の内容はこのようなもの。

情報販売ページで商品説明欄に、ありとあらゆる言葉で誰でも簡単に金儲けができるという夢のような話を書き連ねる。特に何をするとかどんな方法で金儲けをするとかは書いておらず、誰でも簡単確実をうたい文句にする。それにつられた購入者たちが、誰でも簡単に必ずお金が儲かる方法ならと入札し、オークション形式でどんどん値が吊り上がる。

最後は100万円くらいまでいっていたかもしれない、つまり、その内容も分からぬ金儲けの情報に100万円の値が付く時代だったのだ。

高額で落札された商品の内容を実際確認してみると、実に単純明快。

「ほら、あなたはこの情報をお金を出して買いましたね、私と同じことをしてみてください」

というもの。

なるほど、よく考えたものだ。

これが当時全盛を誇っていた情報の内容で、僕はくだらないと思った。

くだらないけど手っ取り早くお金を稼ぐために、情報販売という手段はもってこいで、働きに出られない僕にとっては何度も言うが背に腹は代えられない。

でも、誰かをだますようなことはしたくないし、そんな勇気も度量もない。

僕は実際に自分がやってみてお金が儲かった方法を情報にし売ることにした。

アンティークショップを経営しているわけでもないし、たまたま知ったこの方法を誰かに教えても特に痛手はなかったからだ。

アメリカンアンティークのネットでの現地仕入れの方法とそのサイト、そして日本で転売する際のコツ、売れ筋の商品、自分の体験談、失敗例など書いた文章を用意し、ネット上に様々な仕掛けを施し、すべて一連の流れを自動化、オートメーション化した。

興味のある人が僕のヤフオクの情報販売ページを見て、さらに興味を持った人がメール送信フォームから空メールを送信すると、詳しい情報の内容が自動で送り返されるというシステム。空メールの自動転送システムなのだから、ほぼページを見たすべての人が詳細な内容を取り寄せる。

そこには購入意欲をそそる詳しい情報内容の説明と、口座番号等の振り込みに必要な内容、質問したい人のための直のメアド、購入者の不信感をぬぐうために携帯の番号まで書き添えておいた。

どうせ携帯など友人の誰からもかかっては来ないし、最終的には番号を変えてしまえばいいだけだ。

もうここまで来て実際にメールや電話での連絡をくれた人たちは、ほぼ100%購入する。

もともと情報の内容の半分以上は明かしていて、アンティークの仕入れ方法と転売の方法なのだ。そもそもアメリカンアンティークに興味がある人しかアクセスしてこないし、知りたいと思っている人にはまさに、喉から手が出るような情報に違いない。

メールやら電話やらで直接連絡してくるというのは、もうすでに購入の意思がほぼほぼ固まっていて、最後の一押しをしてもらいたいに過ぎない。

だから、ダメ押しとばかりに背中を押してやるわけだ。

打ち出の小づちで辟易している情報購入ネットユーザーたちにも、情報内容を半分以上明かし、直アドと電話番号の安心感で心を許し、情報を購入しやすくするという仕掛けなのだ。

この情報を10万円で販売した。

情報の価値など知らなかったけど、当時の情報販売で10万円というのがなんとも本当の情報っぽい微妙な値段設定なのだ。

ほぼ毎日何もしなくても勝手に口座にお金が振り込まれるようになっていき、自分の所有しているパソコンを「自動販売機」と呼んでいた。

このアンティーク必勝マニュアルで、300万円ほど稼いで情報販売から撤退した。

あくまでも当面の生活費、働けるようになるまでのつなぎでのお金が欲しかっただけで、情報販売でお金を稼ぎたいわけではなかった。

保証の無い情報を売って対価を得るという後ろめたさと後味の悪さが、僕にはどうしてもなじめなかった。

実際、30人程度の人にこの情報を売って、多くの人が喜んではくれたのだったが、やはりそこはネットの世界、情報の転売転売も繰り返されたようで、国内でのアメリカンアンティークの値が崩れ、今まで日本人が直接アクセスしてこなかった現地の蚤の市のサイトが日本人客であふれかえり突然のジャパンバブルが起こったため、現地の値が吊り上がるという、なんとも皮肉な結果になったのだった。

僕にとってはそんなことどうでもよかったのだが、購入者は騙されたと思ったかもしれない。

精神的プレッシャーと罪悪感とを引き換えに、当面の生活費を手に入れたのだった。

生きるために、使えるものはすべて使うし、やれることは何でもやる。

ただ、自分を見失わないようにし、常に次のステップにつなげるような生き方をすること。

そう、肝に銘じた。

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