【第17話】父子家庭パパが所持金2万円からたった一人で子供2人を育てた10年間だったけど、これで良かったのか今でも分からずに文字にした全記録を、世に問いたい。

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【第17話】父子家庭パパが所持金2万円からたった一人で子供2人を育てた10年間だったけど、これで良かったのか今でも分からずに文字にした全記録を、世に問いたい。
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この方法で稼いだお金は、ありがたく使わせてもらった。

その後ヤフオクも規制を強化し、これらの方法では情報販売ができなくなった。所有していたヤフオクのIDも抹消され、しばらくの間純粋にオークションも出来なくなってしまうという代償も支払ったのだった。

逆に考えると、タイミングが良かったということになるのではないだろうか。

情報販売で得た300万円と両親のいくばくかの遺産で、その後数年あまりの間生活することになる。

とりあえずの将来に対する不安は依然としてあるものの、当面の資金が調達できたことで、若干の精神的余裕は生まれた。

父子家庭になり子供たちを引き取って引っ越しをし、両親が立て続けになくなってバタバタしながらも1年半の月日が流れて、幼稚園生だった下の子が小学校に入学することになった。

小学校に入学するにあたり、もろもろ用意しなければならないものがたくさんあったのだが、このお金のおかげでなんとかそろえることが出来た。

ランドセルも買ってあげられたし、学校に通うのに必要な道具一式も買いそろえることが出来た。入学式用の1回限りのスーツも購入したし、無事下の子を小学校に入学させられることが出来て、僕は心からホッとした。

こんなこと、普通の家族だったら何にも心配することでなないのだろう。

当たり前のように流れる時の中で、過ぎ行く一時に過ぎない。

晴れて小学1年生となった下の子は、毎日元気に学校に通った。

小学4年生になっていたお兄ちゃんと一緒に学校に通うのが嬉しくて、2人で仲良く登校していた。

小学1年生は、入学してしばらくは午前中授業、そのあとも早くに下校するといったアイドリングの時期があり、入学してしばらくは家の近くの交差点までお迎えに行き、一緒に家まで歩いて帰った。

仕事をしていない僕は、毎日同じ交差点に立ち、下の子の帰りを待った。

母親もいないこの子たちのために、僕がしてやらねばならないことは山ほどある。学校での出来事を嬉しそうに話す下の子と一緒に歩くこの時間は、楽しかった。

下の子が小学生になり、本当ならば家族みんなでお祝いをし、記念写真などを撮って想い出にするところなのなのだろうけど、今の僕にそれほどの余裕はない。

父子家庭になってしばらくは、写真を撮って記録に残すということが出来なかった。

子供たちの成長の記録として写真を撮るという、ただそれだけのことが出来ないのだ。

子供たちの成長記録として写真を撮り、アルバムを作ることは好きだった。父子家庭になる前はよくやっていたものだ。

だけどいつしか、この子たちに未来があるのかどうか分からないのに写真を残すという行為が、できなくなってしまったのだ。

日々の生活がそれどころではないと言ってしまえばそういうことなのだが、子供たちの成長を見守るだけのゆとりが持てなかった。

子供を育てるということ、それは自分ひとりで抱えこむにはあまりにも大きなものだった。

子供たちが小さいころは何かと目が離せない。一人ならなおさらだ。

両親がいて祖父母がいて育てられる多くの人たちは、たくさんの目で子供たちを見ている。

そして感情を共有し、成長を共に見守る。

僕には、共に見守る人も、成長の喜びを分かち合う人も、感情を共有する人もいない。

子供たちの成長の記録である写真やビデオには、裏にそういった共通の感情を持った人たちがいて、初めて成立する。感情を分かち合うことのできぬ子育てで、記録を残すという行為が苦痛だった。

下の子のせっかくの晴れ舞台である小学校入学も、僕は記録に残すことが出来ず、初々しい晴れ姿と生き生きとした表情を決して忘れまいと、目に焼き付けた。

下の子が小学生になったことで、生活的には今までより多くの時間が持てるようになった。

朝起きてご飯を作り、子供たちを送り出してからはある程度自由な時間を持てるようになり、出来ることの幅も広がっていった。

当面の生活資金を手に入れた僕は、子供たちのために今何をすべきか考えた。外に働きに出るのはまだ難しい。

子供たちは二人とも小学生だし、下の子に関しては、まだまだ目の離せないことの方が多かった。

やるべきことは、やはり家事と育児。

母親がいないからいつも家の中が汚くて、洗濯や掃除が行き届かないままの劣悪な環境で生活させてはいけない。

そして、毎日の食事を有意義なものにしなければいけないと思った。

父親がいて母親がいる家庭では、お父さんが外に働きに出て、お母さんが家のことをする。日中に掃除や洗濯をし、夕方から買いものに出かけ晩御飯の支度をしてみんなの帰りを待っている。

これが普通の家庭で子供たちが成長するうえで必要な環境なのだとしたら、たった一人の父子家庭生活、そのどちらもやらなければいけないのだろう。

「あそこの家は母親がいないから子供たちがどうしようもない」

とは、言わせたくなかった。

当時野菜嫌いだった子供たちのために、どうしたら野菜を食べてもらえるようになるか考えた。

スーパーで売っている野菜は、鮮度もそれほどでもないし海外の野菜も多く並べられている。やはりおいしいものという観点から言うと、地元産の朝採れ野菜に勝るものはない。そのフレッシュな食材を料理してこそ本来の野菜のおいしさを知るのではないかと考え、県内の野菜直売所をくまなく回り、おいしい食材や珍しいもの、その土地土地で栽培されている旬で特産のものを買い求めた。車で1時間程度のところなら足を運び、その時期その土地で採れる一番おいしいものを探して歩いた。

父子家庭になる前はコックだったということもあり、状態の良い食材を仕入れることは難しいことではなかった。

茨城県は農産物にあふれていて、直売所も豊富に存在した。

スーパーで買うよりもはるかに新鮮で安く、種類も多くたくさんの野菜や果物を購入することが出来た。それらの食材で腕を振るって、毎日料理を作った。

冷凍食品やレトルトは使わない。

掃除や洗濯ももちろんそうだが、自分が手を抜かなければもっとやれる部分があるのであれば、とことん手を抜かずにやっていた。

晩ごはんの支度をしていると、下の子が家に帰ってくる。

家から外に漏れる晩御飯の匂いをかいで帰宅するのが、子供たちの日課となった。

「今日の晩御飯はハンバーグだな」

と、子供たちもその匂いを嗅いだだけで、今日僕が作っている晩御飯が何なのかを言い当てるまでになった。

父子家庭になり、母親をなくし、お金もない、習い事などさせてあげられないし、たくさん我慢させなければならない。

寂しい思いもこれからたくさしなければいけないだろうし、それよりなにより、もしかしたらこのまま大きくなっていくことすら危ういかもしれない子供たちのために、僕は父親として、そして母親として、今、今日、この子たちに何をしてあげられるのだろう。

そう考えたら、明日どうなるかも分からぬ生活で、やりすぎるほどやらなければ、落ち着いていられなかった。

やれどもやれども満たされることのないハムスターの滑車のように、満足感の得られぬ生活は、いつまでもむなしく回り続ける。

子供たちが小学生の時は、親が学校の行事に参加しなければいけないことが多々ある。

授業参観もそうだし、運動会やその他行事、親子レクリエーションなどもある。2人も小学生がいれば、学校に行かなければいけないこともしばしばだった。

母親としての役目もきちんと果たすと決めた僕は、学校の行事だって休まずに参加した。

お母さんは来なくても、お父さんはちゃんと来る。

それでいいと思った。

下の子が小学校1年生の時に、授業参観に行った時のことだ。

小学校1年生の時はどの子の親も熱心に学校に通ってくる。授業参観などは母親で教室中がいっぱいになるのだ。

父親が来ている子供は少数で、それでも父親一人ではなく、両親が揃ってきているというのが常。父親一人で学校の行事に参加しているのは、僕だけといってもよかった。

それは小学校1年生の下の子のクラスメイトでも、気が付いていたのだ。

ある日、授業参観に行って教室に入り授業を眺めていた。授業も終わり教室の中で友人たちが下の子に近づいてきたと思ったら、こんなことを言ったのだ。

「おい、お前んち、いっつも父ちゃんしか来ないなぁ、母ちゃんいないのかよ」

下の子は何も言わなかった。

そう言ったクラスメイトも、所詮は小学1年生、言い終わるが早いかどこかに消えてしまったのだが、あの時下の子はどんな気持ちでその言葉を聞いたのだろうか。

僕は少なからずショックだった。

これが父子家庭の、父親しかいない家庭の残酷な現実であり、世の中の仕組みなのだ。

多くの理不尽は理解しがたい現実の中で、抜けない棘としていつも僕たちの体に残てしまう。強くならなければ生きてはいけないし、いちいち感傷に浸っていては先には進めない。

僕は心の中で子供たちの詫びるよりも早く、強くなってたくましく生きろと願った。

負けてたまるか。

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明日の タケシ

10年間の父子家庭生活の思い出を綴った30万文字にも及ぶ記録が殿堂入りという快挙を成し遂げました。 これも一重にSTORYSの関係各位、並びに懲りずに読んでくれた全ての読者の方々のおかげであると、感謝せずにはいられません。 コメント、メッセージ、読んでよかった、お気軽にどうぞ!

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