第2話:ジャッキーチェンに出会った日の話

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ジャッキーチェンが目の前に!


「ジャ、ジャッキーチェンだ!」

宿で友達になったばかりのフランス人男性に、私は小声で叫んだ。



おもむろに、カバンから、カメラを取り出す。

「ジャッキーチェンなわけないよ。こんなところにいるわけない・・・」と言いつつも、フランス人男性はカメラを取り出し、写真を撮り始めた。


「ほら、サモハンキンポーもいる!」レストランの窓際のテーブルに、とても太った男性が座っていた。


フランス人男性は、やっと本物のジャッキーチェンがいるということを受け入れ始めて、こう言った。

「彼と写真撮ってあげるから、行っておいでよ!」


そうしたいのは山々だったが、私は緊張で立ちすくんでいた。

いつかジャッキーチェンに会いたいな〜という思いはあったが、こんなにも突然叶ってしまうと、混乱してしまっていた。



「いや、無理、無理!行けないよ。私、こんな汚い格好だし」



バックパッカーは、最小限の荷物をバックパックに詰め込んで、何ヶ月も旅行するので、大抵の人は、かなりシンプルな服しか、持っていない。

こんな汚いバックパッカーとして、大好きなジャッキーチェンの前に行くなんて、決してできなかった。


ジャッキーチェンは、一人で、馬の鼻を撫でていた。


おそらく、映画撮影前の空き時間なのだろう。


周りはまだ誰も気づいていない様子。


ちょっと暇をもてあましている風のジャッキーに、話しかける時間は、たっぷりあった。


それでも、私は話しかけることができなかった。




徐々に、周りはジャッキーに気づき始め、警官達がガードに現れた。


あっという間に、ジャッキーの周りには人だかりができた。


もう、話しかけるチャンスは0になってしまった。





その夜、私は、ドミトリーの部屋で、「眠れない〜、眠れない〜」とうめいていた。

どの国かはわからないが欧米出身らしき女性が、話を聞いてくれた。



「ジャッキーと結婚したかったー。でも服も汚くて、何も話しかけられなかったのー。

悔やんでも、悔やんでも、悔やみきれないわー」



「でも、彼は、結構、年いってるでしょ?あなたには年寄りすぎるんじゃないの?


それに、ジャッキーって、もう既婚者じゃなかったっけ?」



優しいその女性は、たまたま今日部屋で会ったばかりの、見ず知らずの日本人の女の子の背に手を置き、必死でなぐさめてくれた。





「人は、これが叶ったらいい、あれが叶ったらいい、と夢を思い描きはするけど、

実は本当に叶うとは、心底思ってないもので、

本当に叶ってしまうと、準備ができてなくて、焦ってしまう。


夢を思い描くときは、それが叶った後のこともイメージしておかなくてはいけない。

誰かにいつか出会いたいなら、出会ったら何を話すとか、これだけは伝えたい、とか、

どんな自分なら自信を持って会えるか、とか。


これからは、夢がいつ叶ってもいいように、準備しておこう。


私は、今回、あまりにもボロボロの旅人ファッションだったから、

自信を持ってジャッキーチェンに話しかけられなかった。


もう、こんなチャンスを逃すことないように、いつ誰に会っても

堂々としていられる格好にしておこう」


次の日、私は、力強い足取りで、洋服を買いにショッピングへと向かった。




その後、6ヶ月のオーストラリアの旅を早めに切り上げ、2ヶ月ほどで、タイへ向かった。


「バックパッカーの聖地、タイに行って、仕切り直しだ。


ここから先、どこへ進んでいくかは、まだわからない。


出会い次第で決めていこう」そう思っての決断だった。



しばらく、タイでバックパッカーたちと遊んだ後、陸路でマレーシアへ。


マレーシア国境を越えるとき、「マレーシアでは、麻薬犯罪をするものは、死刑」という看板が目に入った。


不気味なメッセージを見ながらも、「私には関係ないことだ」と私はスルーした。




ペナン島。



ある安宿で、日本人女性と知り合って、一緒に遊んだ。


「この宿って、なんか、ちょっと怪しい雰囲気するよね」


その女性と私は、そんな話をしていた。


何が怪しいのかハッキリとはわからないが、なんだか雰囲気が、普通ではない感じがしたのだ。




早朝、「別の宿へ行こうか」と二人が言っていた矢先のこと、


10名弱の、フォーマルな服をした男性が、宿に、突如駆け込んできた。




「なんだ、なんだ?この人たちは何だろう?」


私達は、ただならぬ雰囲気に、ビビっていた。




いつも横柄そうに振舞っていた宿の女主人は、なぜか、借りてきた猫のように、小さく大人しくなっていた。



そして、私達の目の前で、その女主人は、手錠をはめられた。



警察だ。



「君たちは、どの国から来た?」



手錠を今かけたばっかりの警官達は、今度は、私達二人に、目を向けた。



私達は、ビビりながら、弱々しく答えた。



「ジャ、ジャパン・・・」



変なことに巻き込まれてしまった。


今さっき、この宿を出ようと言ってたとこだったのに。もっと早く出ていればよかったと後悔していた。



私達は、一体どうなってしまうんだろうーーー!!??



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第3話:マレーシアでの怖い体験

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