「私の失敗」について話そう

私は現在、ライター業務の他に、

●ライターになりたいという人

●既に起業はしているけれど執筆業務にも取り組みたいという人

のご相談に応じる仕事もしている。

私がライター業についたのは、知り合いのライターが家庭の事情で休業せざるを得なくなり、ピンチヒッターを依頼されたことがきっかけ。それまでは、まったくの趣味でしか文章を書いたことがなかった私にとって、たとえば編集用語に関する知識、プロのライターとして必要な文章力などが、圧倒的に不十分なままでのスタートだった。

幸い、良いクライアントにも恵まれ、受講者を募集していたライター養成セミナーにも参加することはできたけれど、ライターとしての土台がしっかりしない間の不安感というのは、非常に強いものだった。

また私自身が抱えていた闘病や身内の介護、といった事情について深く考えず、「在宅仕事なのだから、なんとか時間と体力の融通が利くだろう」と思っていたが、現実はそう甘くない。

介護は介護者ひとりでするものではなく、介護者と被介護者がいて成立する。「仕事をしながらでも、そばにいてくれるだけで安心する」というタイプの被介護者もいれば、「目の前にいるのに、仕事に夢中でこっちを見てくれない」と不満を募らせる被介護者もいる。これは相手が乳幼児、子供であっても同じだろう。

このような点で、家族との気持ちのすれ違いが生じ、仕事に悪影響が出たこともある。

クライアントから報酬が支払われない、あるいは発注後に条件が大きく変わるなどのトラブルを、初期に経験しないで済んだのは、今考えると非常に恵まれていたのだと思う。

逆に言えば、いざトラブルが生じたときになって、どういう形で苦情を言えばいいのか、どのような機関に相談すればいいのか、分からなかった。

トラブルが生じる前の、精神的に余裕がある段階で「こういうトラブルはこの機関に相談する」という心づもりをしておくべきなのだ。地震や火災などに関する備えについても同じことが言える。

文筆業という業務の上では一人前になったつもりだったけれど、経営者としては半人前以下だった自分を振り返ると「こういう失敗を皆さんはしないでくださいね」と伝えたいことがあふれてくる。

そんな頼りない経営者だった私だけれど、今ではライター志望の人、起業を考えている人に「私の失敗」を伝えられることを、けっこう幸せだなぁと思う。

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