一流の鈴木さん(仮名)は、プロフェッショナルになった。(1)

一流の鈴木さん(仮名)は、プロフェッショナルになった。(1)



 20年ほど前に、あるシングルマザーの娘さんを指導させてもらった。小学6年生の時から高校卒業まで6年間通ってもらった。最初から、「お医者さんになりたい」と言っていた。

 しかし、年齢があがってくると周囲の状況が分かってくる。シングルマザーの経済力では医者は経済的に厳しいとか、国立大学の医学部はとんでもない偏差値だとか、自分の置かれた状況が分かってくる。

 だから、猛勉強は当たり前だった。中学校では、クラブ活動と勉強を両立したまま四日市高校の「国際科」に合格した。地元では、最高ランクの高校だ。ところが、旧帝の医学部レベルとなると、四日市高校でも上位の1ケタ順位でないと合格できない。

  高校二年の時、アスリートとしても良い成績を残していたそうだがクラブを自主退部した。コーチや同級生からは罵声がとんだと聞いた。同級生からの情報だ。滅多に自分のことを語らない鈴木さんだったが、ある時

「私の母さん、生命保険解約したって・・・」

 と、つぶやいた。

 ちょうど、その頃、私もシングルファーザーになり娘たちの大学進学が控えていたので、その状況が身に染みてよく分かった。 カードローンの審査さえ通らないミジメな思いをしたことがある。
「ボロ部屋」の画像検索結果

 世の中では、「ゆとり教育」とか、偏差値追放、業者テスト追放、輪切り進路指導反対などと、やかましい時代だった。そんな言葉は、鈴木さんの耳には入らない。偏差値を上げ、模試で力試しをし、ランキング上位の医学部に合格する。それ以外は、見えていないのだから

 左翼「日教組」の先生方は、

「みんな仲良く助け合う、格差がない社会が理想だ」

 と、競争を全面的に“悪”と決めつけるが、鈴木さんの目には入らない。そんな緩い生き方をしている子ではなかった。選択の余地などない。勝つしかない。合格するしか、母親を楽にしてやる方法がない。
 たまに、
「私は先生の生き方に賛成できません」
 という子がいる。保護者がいる。みんな違う生き方をしているのだから、当たり前のことだ。塾講師だから、合格するための方法を示しているだけだ。こんな議論をふっかけてくる生徒は、絶対に鈴木さんには勝てない。

  あるオリンピックの選手のコーチが語っていた。
「自分の頭で考えられる選手でないと、一流にはなれません」
 これは、勉強でも同じことだ。「学校で習ってません」「クラブがきつくて勉強時間がありません」「学校では平均点を越えています」「他の塾で中学生の数学はマスターしてきました」。こういう子では、ダメなのだ。
 他人の与えたカリキュラムをこなしました。それだけのことで、勝つためのカリキュラムになっていない。
 私のような無名の田舎の塾講師でも、大学卒業後の30歳で英検1級や通訳ガイドの国家試験に合格し、50代でセンター試験を10回、京大二次を7回受けて、数学講師に転身した。そこにカリキュラムなどあるはずがない。
 受験勉強も同じことで、京大医学部、阪大医学部、名大医学部に合格していったような子は、「宿題は、ちゃんとやりました」タイプの子ではなかった。学校の宿題やカリキュラムなど無視して、自分で計画を立てて勉強を進めていた。
 勝つ子というのは、そういう子なのだ。ゆるい生き方をしている教師や同級生からは、どちらかというと叩かれるタイプ。変人とか「おかしな子」と揶揄されることも多い。
 私程度のスケールでも、蛇蝎の如く嫌われているようだ(笑)。
 鈴木さんが、どういう生活をしていたか。私は数学講師に転身する時に、オリジナル、1対1、チェック&リピート、赤本をそれぞれ2周したが、鈴木さんはそれ以上やった。
 ゆるい生活をしている子は
「私は、そんな青春時代はおくりたくない」
 と言う。それなのに、鈴木さんのような成績をとりたいと言う。できるわけないのに。何十万人に1人の特殊な才能を持つ子を例に出して
「でも、Aさんはクラブと勉強を両立させた」
 と言う。あるいは、地方大会で優勝し、Cランクの私立大学に合格して「両立させた」という子もいる。
 みんな違う生き方をしているのだから、否定する気はないが、そんな緩い基準の子は鈴木さんには勝てない。プロにはなれない。






 

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