バランスの薔薇⑤「幸せとは」
俺と違ってマコちゃんは、いつも器用に世の中を渡り歩いていた。
いつも恋人がいるし、いつも仕事も順調そうで楽しく毎日を過ごしいるイメージだ。
しかし、これからの俺は違う。
ユカリちゃんという可愛い彼女が出来て幸せで、スポーツショップの仕事も良い先輩、スタッフに囲まれて楽しく毎日を過ごしている。
自分の中の壁を俺は自分で壊して、新しい人生を自分で切り開いていけると思っていた。
ユカリちゃんとの交際も順調で時は2年経った。俺は変わらず山口店長の元で働き続け、仕事にやりがいを見つけていた。
「え?マコちゃん結婚すんの??おめでとー!!」
マコちゃんは3年付き合った彼女と結婚するという事だ。そんな話を聞いたのは俺達が26歳になる年だった。
心の底から祝福したくて、喜びを伝えたかった。
Gメンは、マコちゃんの結婚式でBURUNOMARSのMERRY YOUの曲に合わせてサプライズでフラッシュモブでダンスをプレゼントするということになった。
いつも刺激を求めてる俺らにとって、誰かをドッキリさせる事は、とても興奮する事で平凡な日常へのスパイスとして最高に良い調味料だ。
Gメンは平日も週末もダンスの練習を明け暮れた。
記憶の残る最高に楽しい結婚式にする為、何回も練習をした。
いつか、俺もこうやってユカリちゃんとの結婚式を挙げる時に、みんなから盛大に祝われる時が来るのかと、心の中で期待を込めながら・・・。
〜マコちゃん結婚式当日〜
俺らGメンは基本的に時間にルーズだ。まず、結婚式当日にGメンの2人も遅刻してしまった。やばいやばいと思いながら、司会の人は淡々とスケジュール表通りに事を運んでいた。
俺らのフラッシュモブの出番は友人余興のタイミングである。司会者からの案内があり、そこからスタートする。
その時がきた。
司会者「さて、続きまして新郎マコトさんのご友人である輝樹さんから、歌のプレゼントがあります。曲名は長渕剛さんの「乾杯」アカペラでご披露して頂きます」
会場内は、大きな拍手で俺を迎えてくれた。
「堅い絆にぃ〜、想いを乗せて〜、語り尽くせぬ〜青春の日々〜」
俺は全力で歌った。
会場の来場者からも手拍子が起こり始めてきた。
「あれからどれくらい〜、たったのだろう〜」、
歌いながら、いつもGメンのみんなでバカな事をやっていた光景がフラストレーションとなり、映像として脳裏に写し出される
「乾杯〜、今、君は人生のを、大きな大きな舞台に〜たち〜」
会場内の全員が歌い出し、大合唱が巻き起こる。
「長い道のり〜を歩き始めた〜、君に幸あれ〜〜、あっ、ああぁぅゔゔぐぅぁぁあぁぁ〜〜〜!!!」
俺は全力で苦しそうに叫び、地面に倒れた。
何が起こったのか分からない多くの人たち。会場内は、ゾワゾワとした空気に包まれた。
すると、、、
あのMEEY YOUの音楽が流れ始める。
♫
俺は全力で、踊り始めた。MEEY YOUの音楽を全力で踊った。
徐々に、周りからもGメンのメンバー達が、席から立ち上がり踊り出す。
会場内の人たちもフラッシュモブだということに気がつき始め、手拍子が再び鳴り響く。
新婦は、笑ってた。俺らGメンなら、やりそうな事だとすぐ気づいたのかも知れない。
全員が音に合わせて、踊る一体感が会場の、空気を1つにしてとても暖かい会場となった。
そして、MEEY YOUの音楽が終わり、新郎マコちゃんからの、言葉が始まる。
何を言ったかよく分からなかったが、新婦は感動して涙を流していた。
そんな多くの人に見守られた素敵な結婚式となった。
マコちゃんのように俺も、いつか結婚式を挙げたいと心から思ったし、家庭を持ちたいとまで思った。
それとは反対に寂しさもある。
自分の家族とはまた違い、暖かい家庭を作ることに小さな頃から憧れを持っていたからだ。
何事にもオープンで純粋なユカリなら俺と、きっと幸せな家庭が作れるだろうと、マコちゃんの結婚式を見ながら勝手にそうやって想いふけていた。
幸せって、なんなのか?
そんなこと学校の授業では教えてくれない。しかし、、少しだけ分かったような気がした。
※これは実話元にしたフィクションです。実際の登場人物名、場所は関係ありません。
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