フツーの女子大生だった私の転落の始まりと波乱に満ちた半生の記録 第12話

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疎まれ蔑まれても

《これまでのあらすじ》初めて読む方へ

ごく普通の女子大生篠田桃子はあることをきっかけにショーパブで働くことに。知らず知らず野望を持ち、ここに自分の居場所を見つけようとする桃子。それをはっきりと自覚した桃子は恋人の拓哉に別れを告げる。



「杏さん、前に出てきてください」


場内がざわついた。


私は立ち上がり、厚みのある茶封筒を手に微笑んでいる玲子のそばまで進み出た。


いくつもの驚きと鋭い嫉妬の混ざった視線を浴びながら、私は茶封筒を受け取った。


佐々木のわざとらしい大きな拍手に促され、パテオのラウンジに拍手が響き渡った。


「ベスト10入りおめでとう」


「有難うございます」


そう言って頭を下げ席へ戻る途中

また別の類の視線が自分に向けられていることに気がついた。


ひょっとすると

それは羨望の眼差しだ。



パテオはホステスの入れ替わりが激しい。


週に一回のミーティングには入って間もないホステスも多く参加する。


新しいホステスの顔をいちいち覚えていられないくらいだ。

すでに私の後から入ったホステスは多くいる。


そして当然のことだが彼女らから見れば

5ヶ月前には入った私はすでにベテランの域にいるわけだ。


席について顔を上げると、この前ヘルプについてくれたレミという新人と目が合った。


彼女の目からは私に対する恐れと羨望が読み取れた。


私は恍惚とした気分に浸りながら、天井の無数のシャンデリアやミラーボールを見渡した。



ついにやった


ベスト10入り


これは1日に指名を3本以上取り続けた成果だ



ここ1ヶ月、ラクじゃなかった


毎日何十人もの客にメールと電話をかけ

5ヶ月で培われた営業と接客の全テクニックを駆使して客をもてなした


どんなにクセのある客だろうが、ワキガだろうが何だろうが



脳と感覚器官を麻痺させて

ひたすら顔面に笑みを絶やさずにいた。



その成果がやっとこうやって表れたのだ。

おかげで最近のショーの立ち位置も変わった。


出番も増えたし、1番後ろの隅っこだった私は

曲によっては舞台の中央近くに来るまでになった。



この結果はショーとの相乗効果のおかげかもしれない。




茶封筒を持つ指に力を込めた。





忘れない



この厚みを



この感触を



これはただのお金じゃない


プライド


羞恥心


誇り



そして体裁




そういう、これまでの人生で大切にしてきたものをかなぐり捨てて

手に入れたものだ。



そうだ

ここまできたら


どんな視線だろうが気になどしてなどいられない




ふいに大学での出来事が思い出された。



昨日入学当初から続けてきたサークルをやめた。


うちの大学で1番歴史の古く伝統的な知名度のあるサークルなので

クラスメートも多くが入部した。

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